風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年9月6日で以って、Kindle本「少年詩集 鳶の歌」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリで、「少年詩集 鳶の歌」と検索すれば、すぐに出て来ます。右サイドバーのバナーよりも至れます。僕のペンネームは柴田哲夫です。価格は500円ですが、Kindle Unlimited版を追加金無料で購入できます。多くの方のご購読を願っております。

短歌

 砂子屋書房「葛原妙子全歌集」(2002年・刊)より、しまいの歌集「をがたま」を読み了える。
 先行する「鷹の井戸」は、先の8月29日の記事にアップした。



 葛原妙子は、1981年(74歳)に季刊歌誌「をがたま」を創刊したが、視力障害のため1983年に終刊。1984年より没年の1985年にかけて、発表がない。
 歌集「をがたま」は、その没後、盟友の森岡貞香が作品を集めて、1集と成したものである。
 このあと「をがたま」補遺、「異本 橙黄」があるが、僕は読み残す。
 これで「葛原妙子全歌集」のしまいである。この本も、僕に出会って不幸だっただろう。前衛短歌に理解ある者(近代短歌に苦しんだ者)、あるいは女性であったなら、もっと理解を得たかも知れない。
 俵万智以降、昭和萬葉集に学んだ僕は、前衛短歌の熱気を知らない。政治的前衛でもあった、岡井隆の歌は好きで、全歌集(生前版、思潮社・刊)を好意的に読んだのだけれども。


 以下に7首を引く。正字を新字に直した箇所がある。
微かなる日灼をたまへ青草と鳥の卵を食ひをる君に
あらはるるすゆに失せゐき ちかぢかと汝はたれ、とつぶやきし者
ビルの影たふれ 墓の影たふれ 明き冬至に人の影たふる
墓祭異形を交へ催せり幽魂らふそくのひかりにあそぶ
眼底にはつか紅をもつれしめ曼珠沙華とふ花の畢りぬ
流竄者なんぢにあらね入りてゆく暗き団地のありといふべく
前頭葉に薄霧かかりおぼつかなわが一対の脚降りてゆく
オガタマの花
写真ACより、「オガタマの花」の写真1枚。


 

 岡山大学短歌会の歌誌「岡大短歌」8号を読み了える。
 入手は、今月10日の記事、入手した4冊を紹介する(9)にアップした。



 また同・7号は、昨年12月23日の記事にアップした。


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 「岡大短歌」8号は、2020年8月15日・刊。45ページ.頒価:400円。
 Twitterのダイレクトメッセージで遣り取りして、指定口座に送料と共に振り込むと、早速送られて来た。上質紙であり、コストパフォーマンスも高いと思う。

 8首連作が10名、20首連作3名、30首連作1名である(重複する作者がいる)。雪舟えま、笹井宏之らの1首評4名(各1ページ)、H・琳の評論「時代の流れと読みの変化」3ページがある。
 月2回の歌会で、熱く、和やかに語り合っていると後記にある。
 若い恋の歌と共に、社会的不安、個人的不安を、ぶちまけたような作品がある。既に仕事をリタイアした者として、若者の健闘を願うばかりである。

 以下に5首を引く。
絵に描いたような約束 わたしたちは小石が成したモザイクアート(N・遠足)
うどん屋のたぬきの置き物さすったらしあわせになっているんだ私(H・琳)
思い出になるね、なんてね!丸ごとのももを流しでならんでかじれば(O・こみち)
必要のない絆とは手を切ってあらゆることに怯えたくない(B・なつ)
気づいたら後ろの人がいないみたいにあらゆる保証がされなくなった(M・航)



 

 所属する結社歌誌「覇王樹」の2020年9月号を、ほぼ読み了える。
 到着は、先の8月28日の記事にアップした。


 なおその記事に、僕の「グーグルに引く」6首・他、同・8月号の紹介、2件のリンクを貼った。
 またホームページ「短歌の会 覇王樹」も9月号仕様である。



覇王樹・9月号
 コロナ禍を詠んだ歌が多い。巻頭8首もほとんどを占める。
 散文ではH・俊明さんの「覇王樹人の歌碑(45)今井芳子の歌碑」が、モノクロ写真を含めて、2ページに渉る。W・茂子さんのエッセイ「落とし文考(68)」、S・素子さんの研究「後水尾院時代の和歌70」も健在である。
 T・次郎さんの「NHK短歌」9月号よりの転載、長崎原爆記念館に永久保存となったA・秀子さんの被爆体験記(2ページ)、受贈歌誌抄2冊、受贈歌集紹介6冊(2ページ)など、内外に手厚い。
 エッセイ欄、題詠欄等、リラックスできるページもある。

 以下に2首を引いて、寸評を付す。
 N・繁子さんの「かをりほのかな」6首より。
梔子のかをりほのかな朝明けを命つむぎて息深くすふ
 「命つむぎて」は比喩だろうけれど、早朝の爽やかさをよく伝えている。
 H・タケ子さんの「花の種」6首より。
庭土の温みを待ちて花の種つねより少し遅れて播けり
 植物に適切な環境を与える、園芸愛好家の歌である。



 総合歌誌「短歌往来」2020年9月号、Kindle Unlimited版を、ほぼ読み了える。
 入手は、今月28日の記事にアップした。



短歌往来9月号
 2020年8月15日、ながらみ書房・刊。
 入手紹介で、捨て身のKindle Unlimited化と書いたのは、紙本の定価が850円なのに対し、Kindle Unlimited本は1ページ0・5円くらいで、全部読んでも1冊100円か200円にしかならないからだ。若い編集人・佐佐木頼綱の決断だろうか。

 特集は「子育て&子供のうた」。「子育て」と「子供」を並立させる志向に異論もあった。
 短歌5首と短文だが、俵万智の「餃子の時間」では、一人息子が高校生になっていて楽しい。子がトラブルを抱えている場合も多いようだ。

 連作、知らない歌人の歌、楽しく読んだ。
 手軽に新しい短歌に接することを望んでいるので、Kindle Unlimitedで短歌を読めるのは嬉しい。


 

 砂子屋書房「葛原妙子全歌集」(2002年・刊)より、歌集「鷹の井戸」を読み了える。
 先行する歌集「朱霊」は、6月25日の記事にアップした。



 歌集「鷹の井戸」は、1977年、白玉書房・刊。
 721首、著者・覚えがきを収める。
 戦争未亡人の森岡貞香、独身を通した元・貴族の富小路禎子と違って、彼女は夫が有能な外科医であっただけである。女権拡張の波の中、歌作りに熱中して、家事はあまりせず家族を困らせたという。
 彼女の浸った豊かさも、現代の僕たちが、ほぼ手に入れたものである。全歌集の口絵写真を見て思うのだが、彼女はただのおばさんだったのではないか。

 以下に7首を引く。正漢字を新漢字に直した所がある。
濃赤に花咲く日ありかのつばき崑崙黒といへるひともと
雪降ると告げたるわれに夫の目の青く光りて応えなかりし
かの廃墟の列柱をみよ人生きて地上にあまたの空間を作りき
おもほえば暗き虚空に人間・花束などの飛ぶ絵を好まず
蔓伸びる斑入りのかづら人々の足もとにくるさまのおもむろ
白夏至の家といふべくひそみゐる猫のゆきかひ人のゆきかひ
差し入れし水中の指仄白しわたくしの手に魚あつまらず
タカ
写真ACより、「タカ」のイラスト1枚。



 穂村弘の新歌集「水中翼船炎上中」を読み了える。
 購入は、今月18日の記事、3冊を買うにアップした。



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 2018年5月21日、講談社・刊。328首、著者・あとがき、別刷・メモを収める。箱入り。
 第4歌集だが、僕はこれまで読んだことがなく、歌誌の掲載作や引用で読んで来たのみである。

 子供時代、思春期に固執して、回想の歌を多く創っている。僕は農家の次男だったので、それらへの執着はない。幾つかの懐かしい思い出はあるけれども。
 母の挽歌や現在の歌では、リアリティのある作品がある。真実味のある作品に惹かれる。
 ニューウェーブの歌は、戦後の前衛短歌の、俵万智・以降版と呼ぶべく、軟弱に見えるけれども、彼らへの時代的要請もあったのだろう。


 以下に7首を引く。
窓ひとつ食べて寝息をたてているグレーテルは母の家を忘れて
助けてと星に囁く最悪のトイレットペーパーと出会った夜に
ナタデココ対タピオカの戦いを止めようとして死んだ蒟蒻
アルコール、カロリー、糖質無しというビールの幽霊飲んでしまった
母のいない桜の季節父のために買う簡単な携帯電話
わはははと手を打ち終えた瞬間にぶごといびきをかいている父
ハミングって何と尋ねてハミングをしてくれたのに気づかなかった


 佐佐木定綱の第1歌集「月を食う」を読み了える。
 購入の次第は、今月18日の記事、3冊を買うにアップした。



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 2019年10月31日、角川書店・刊。330首、著者・あとがきを収める。
 俵万智と皆川博子の帯文、島田修三と小島なおの栞文を得ている。
 歌壇の重鎮・佐佐木幸綱の次男でありながら、その威光に頼ることなく、食堂店員、書店員として働いている。しかし職業は、汚いものであったり、意に染まない本を売らねばならなかったりする。
 失恋に泣いたり、幼い恋をしたり、同居(同棲?結婚?)したりする。厳しい生活をしながら、良家に育った上品さは失わない。
 若さゆえに、父の威光を借りることを嫌ったのだろうが、僕は職に関して、借りれば良いと思う。僕の定年・再任用までの職もそうだった。
 なおこの歌集で、彼は第64回現代歌人協会賞を得た。


 以下に7首を引く。
道端に捨てられている中華鍋日ごと場所替えある日消え去る
口の端の薄きしょっぱさ朝焼けよこりゃあなんだよ誰が泣いてる
二十円引きのエクレア買ってきた君はひと口無料でくれる
日本語のない安すぎる缶詰とアサヒビールのプルタブを引く
友だちの受けしパワハラ聞きながら上手にホッケの骨をとれるかな
本や家具、君の笑った声などを詰め段ボール笑いはじめる
買われずに返品されてゆく本が夏の陽射しに熱持ち始む

 ブクログ記事を、短歌誌「心の花」さんがリツィートしてくださいました。

歌壇の重鎮・佐佐木幸綱の次男でありながら、その威光に頼ることなく、食堂店員、書店員として働いている。し...『歌集 月を食う』佐佐木 定綱 ☆4 https://t.co/OGrvgRnNcp #booklog

— 新サスケ (@terayamaf) August 25, 2020 ="https://parts.blog.livedoor.jp/img/usr/cmn/btn_add_twitter.png">



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