風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

短歌

 結社歌誌「コスモス」2016年12月号より、「月集」を読みおえる。
 ここで僕が「月集」と呼ぶのは、「12月作品」より、初めの「今月の四人」(「月集スバル」の特選4人×5首)、「月集スバル」(選者・選者経験者×5首)、「月集シリウス 特別作品」(12人×5首)、「月集シリウス」(4首ないし5首)の、4欄を指している。
 「月集スバル」の作品には、助詞の省略が少なく、おおらかな詠みぶりになっているようだ。
 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。「月集シリウス」のN・玉枝さんの4首より。
歩道までバケツ並べる花舗のまへきちかうの躁、りんだうの鬱
 躁鬱の語から、対句の句を成した事は、小さいかもしれないが、歌壇の進歩である。
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フリー素材サイト「Pixabay」より、蜜柑の1枚。



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 総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2016年11月号を、作品中心に読みおえる。
 散文(評論等)では、読まなかったものもある。
 本誌が届いた報せは、10月18日の記事(←リンクしてあり)、「届いた4冊」にアップした。
 巻頭の小島ゆかり(敬称略)「赤子」20首では、初孫が生まれてからの大騒ぎと、それに続く感慨が親しい。
 石橋妙子「叙情ともなふ」7首では、最後の歌の「老いの暮し日日新たなり慎ましくひそかに明日のサプライズ待つ」が、老いながらネットに関わる身に、共感を呼んだ。
 天野匠の「ビール一缶」12首には、優れた諧謔がある。
 栗木京子の高野公彦へのインタビュー「ぼくの細道うたの道」第6回では、宮柊二・逝去の当時の様、他が語られる。
 読者歌壇の、田宮朋子の添削が優しく秀でている。
 「歌壇ニュース・クリップ」他のニュース記事が有用である。

 結社歌誌「コスモス」2016年11月号より、「COSMOS集」を読みおえる。
 先行する
記事(←リンクしてあり)、同・「その一集」特選欄は、10月29日付けでアップした。
 「COSMOS集」は、「その二集」と「あすなろ集」の特選欄である。
 常連の会員がいて、早い昇級が予想される。
 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。A・愛実さん*(←新仮名遣いの印し)の「アンパンマンのシール」5首より。
孫たちを送ってしばしチカチカと体に点る<お疲れランプ>
 特撮テレビドラマ「ウルトラマン」で、ウルトラマンのエネルギーが切れかかり、ベルトのメダルが点滅していた事を思い出す。これもある世代(わりあい広い)の感慨か。特殊な表現の1首である。
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フリー素材サイト「Pixabay」より、菊の1枚。


 結社歌誌「コスモス」2016年11月号より、「その一集」特選欄を読みおえる。
 1昨日の
記事(←リンクしてあり。特に後日の読者の為)、同「月集」に継ぐ。
 この特選は、9選者×各5名×各5首である。
 この特選の一人に、僕たち短歌研究会のメンバーが選ばれて、喜ばしい。正直、妬ましくもある。感覚の鋭い歌人である。
 レトリックと共に、正直に詠むことが必要のようだ。
 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。F・徳子さんの5首より。
百四の母のいのちを思ふ夜半かすかな寝息に安堵してをり
 このあと母親は亡くなられ、あとの3首は挽歌である。
 大往生だっただろうが、結句が「哭きに哭きたり」の歌もある。
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 フリー素材サイト「Pixabay」より、りんごの1枚。




 今月18日の記事(←リンクしてあり)「届いた4冊」で紹介した、結社歌誌「コスモス」2016年11月号より、「月集」を読みおえる。
 「コスモス」は大部だし(会員1900名!)、次の号が来るまでに、どこまで読み進められるか判らないので、少しずつ紹介しようと思う。
 「月集」の歌は、育った歌壇の時代か、余裕か、品格があるなあ、と感じ入る。
 「月集」でも、小島ゆかりさんの孫育て、K・絢さん、S・ちひろさんの子育てなど、乳幼児を詠んだ歌が目立つ。
 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。「月集シリウス」のS・美衣さんの5首より。
飼ひ犬のやうに呼んだら出てこんか過ぎてなくした時のかずかず
 大胆に口語の比喩で詠まれている。
 喜びの時も悔いの時も、還らないと知りながら、惜しむのである。
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フリー素材サイト「Pixabay」より、りんごの1枚。


うずく、まる
 kindle本の中家菜津子・詩歌集「うずく、まる」を、タブレットで読みおえる。
 今月13日の
記事(←リンクしてあり)、「頂いた本と買った本、5冊」で紹介した内、最後の5冊めを読みおえた事になる。
 元版は、2015年6月、書肆侃侃房・刊。
 短歌群と詩群を繋ぎ合わせた詩歌集である。
 短歌に節の題なく、詩に題なく、1冊をもって1作品とするようだ。
 題名の奇妙な切れ方に惑わされそうだが、「うずく」も「うずくまる」も、痛みの表われである。
 写実の作風ではないので、細かな事はわからないが、辛い恋をし、のちに結婚・出産を経たようだが、そのあとはわからない。
 ネットの詩歌梁山泊「詩客」の詩歌トライアスロンに応募し、「現代詩手帖」に掲載された事が出発だったと、「あとがき」で彼女は述べている。
 僕は電子書籍に違和感はなく、むしろ紙本より読みやすいくらいだが、表示の拡大・縮小の仕方を見つけるのに苦労した。
 以下に5首と2節を引く。
あれからの日々を思って鉢に撒く期限の切れたミネラルウォーター
火を飼ったことがあるかとささやかれ片手で胸のボタンをはずす
ストライプシャツの袖口折りかえし右手をつなぐ左手に歌
からだごと君にあずけたゆるやかに右へふくらむカーブにゆれて
気怠さの理由は君にはわからない洋梨ふたつの重さかかえる

かあさん かあさん おかあさん ふりつもるよびごえ
子宮に眠る地球では星が降りしきっているよ

微熱からとけだしてくる哀しみに
  トレモロの点滴をうつ午後
病室の煽り窓から雨だれが
  鳥の見ている夢へと落ちる

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 宮本君子さん(「コスモス」会員)が送ってくださった第二歌集、「梅雨空の沙羅」を読みおえる。
 今月13日の
記事(←リンクしてあり)、「頂いた本と買った本、5冊」で紹介した内、4冊めの本である。
 2016年9月30日、柊書房・刊。437首。
 読み始めて、「あれ、宮本さんの歌はこんなのかな? 森重先生の選はこんなのかな?」と疑いながら進むと、すぐに歌は優れた作品ばかりとなった。
 中年後期から初老に至る齢の、哀歓を描いて、惹かれる作品が多く、10余枚の付箋を貼ったが、前例に倣い、7首を以下に引く。
愛想のよき中年の奥にある哀しさに似て梅雨空の沙羅
老い支度いえ死に支度などと言ひ友は蔵書をつぎつぎ呉れる
人声の絶えて滅びし<夏夜鳥集落>はふかき山に戻りぬ
来た来たと誰か叫(おら)べるまたたく間一位の走者走り抜けたり
癌を病む兄が見舞ひにおとづれて左半身麻痺の夫抱く
秋の夜をひつそり起きて授乳する娘へ熱き生姜湯いれる
三歳の駿太は林檎の皮が好き真赤真赤とうたひつつ食ふ




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