風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 このブログを運営している新サスケ(ハンドル名)が、この10月17日付けで、AmazonのKindle本、第4詩集「詩集 日々のソネット」(縦書き)を発行しました。著者名は、柴田哲夫(僕のペンネームの1つ)です。
 再任用・リタイア前後の、庶民の日々の悲喜哀歓を綴った4章48編と、巻末に哲学風小連作・2章7編を収めます。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリーで、「柴田哲夫 詩集 日々のソネット」と入力して検索してくだされば、即で見つけられます。
 また、ブログの右サイドバーの上部、アクセスカウンターの下に、Amazonアソシエイトのリンク画像「あなたへ詩集をAmazonで」を貼りましたので、画像をクリックしてくだされば、購入サイトへ飛びます。
 kindle版で540円(税込み)、kindle unlimited版も発行しています。よろしくご購入をお願い致します。

短歌

杉谷麻衣「青を泳ぐ」
 Amazonのkindle unlimitedのお試し(30日?)に、10月24日or25日に加わったので、10月29日に杉谷麻衣・歌集「青を泳ぐ」をタブレットにダウンロードし、先日に読み了えた。書肆侃侃房・発のkindle本・歌集では、駒田晶子「光のひび」を読み了えて以来である。
概要
 杉谷麻衣(すぎたに・まい、1980年~)は、京都府・出身、大阪府・在住。
 「青を泳ぐ」は、書肆侃侃房の新鋭短歌シリーズ30。紙本は2016年9月17日・刊。kindle版は2016年10月16日・刊。
 今、各版の価格を調べると、次のようである。紙版:1,836円。kindle版:800円。kindle unlimited版:無料(月会費980円で読み放題)。
 第1歌集、236首。長文の解説「塩の斑紋」を光森裕樹が書いている。
感想
 あとがきで「現実に目の前にある世界に想像を重ねて、自分にしか見えない新しい世界をつくりだすこと。」と述べて、リアルな世界ではない事を、明らかにしている。
 その世界では、元・体操選手だが今は車椅子に乗る青年との恋を中心に、歌集が進んで行く。また美術の実践があるようで、絵を描く事に拘っている。現代性と土俗性が交差する歌が、稀にある。
 危うげな若い女性像、という新人の流れを批判する人もいるようだが、短歌賞などでその流れを作った先輩たちに責任がある。

引用
 以下に7首を引く。
空の絵を描けといわれて窓という窓を砕いて額縁にする
保健室の南のまどからだけ見える三時間目の海が好きです
みずうみを塗っていた筆あらうときしずかに透けてゆくきみの声
「はじめてのひとり暮し」というキャッチコピーが似合うきみどりのラグ
差し出せるものなにひとつ持たぬ夜の眼下の街にひかるしずけさ
「ごめんね」とあなたはたしかな発音でぼくの世界を歪めていった
ひと息にともる電光掲示板(まばたき)いいえあれは送り火





覇王樹11月号
 10月30日の記事「届いた4冊」で報せた内、1番初め、10月25日に届いた結社歌誌、「覇王樹」2017年11月号を、評論をべつとして読み了える。
概要
 巻頭の「八首抄」、「爽什」10名(各6首)、「霜月10首詠」4名、「力作15首詠」1名がある。
 その他の通常詠は、各6首を載せる。ただし会員の「覇王樹集」と、準同人の「紅玉集」は、8首出詠より6首の選歌がある。同人3クラスは、無選歌6首が載る。
 「購読会員制」があり、3首送付の内2首が採られる。
感想
 創刊者・主宰の橋田東聲の、離婚時のエピソード(男が出来て去って行った妻を憎めなかった)に惹かれて、僕は入会して、この結社で良かったと思う。平等で、運営者も会員を思い遣っている。
 短歌の紙誌に載った、会員の短歌、文章は、「覇王樹」誌に転載される。また毎月の「題詠」「付句」の募集・発表も楽しい。
 ホームページ「短歌の会 覇王樹」の充実と、更新の早さに驚く。。

引用
 3首を引く。
 「爽什」のW・茂子さんの「夕茜空」6首より。
茹でたまごつるりと剝きて刻みつつわがさびしさの果ての飲食
 独居の方だろうか。「さびしさの果ての飲食」が切ない。
 「東聲集」のT・昭子さんの「ぬき足さし足」6首より。
かん高き幼児の声聞こえくるわが住む町に盆のにぎわい
 盂蘭盆会、暮れ正月のみ賑わう町というのは、淋しい事だ。
 「游芸集」のT・香住さんの「螢石」6首より。
甘酒をうましと言へばあくる日に君は十本買ひてもどりぬ
 男の不器用な純情を、よく捉えている。




 


光のひび2
 Amazonのkindle本より、駒田晶子・歌集「光のひび」を読み了える。
 ダウンロード購入については、今月21日の記事、
同・歌集ダウンロードに書いた。
概要
 購入は、メモに拠ると、10月15日。
 その他の概要は、上記記事の「概要」に述べたので、そちらを参照してください。
感想
 宮城県仙台市に在住の彼女は、東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)の時、産科病室で臥せていたという。
 その時の歌が、数は少ないが、声高でなく詠われている。先行する歌集「銀河の水」は2008年・刊なので、それには載っていない。
 「あとがき」で、「<ひび>は、<日々>でも<罅>でも。」と述べているが、僕は<罅>と取りたい。
 3人の子の母として、たゆみなく歩みながら、日々の心の違和感、短歌への小さな違和感が、題材や句割れ・句跨りの多用に、表れているようだ。

 短歌を支えに、寛やかに歩んでもらいたい。
引用
 以下に7首を引用する。
画面には聞きなれぬ声のわれがいる小さな子どもと歌など歌い
六歳はテレビ寄席が好き一歳にちょいとおまいさんなどと呼びかけ
病院のベッドの寒さ 院内の医師召集のアナウンスつづく
雪の舞うほの暗き朝ふりかえり手を振る人にわれの手を振る
薬缶みがきみがき上げたる曲線に夜の疲れた君は浮かびぬ
廊下暗し結局だれが悪かった?呟く声ばかり立っている
子は三人います留守番していますコンソメスープの熱々を飲む






 短歌新聞社「岡部文夫全歌集」(2008年・刊)より、第2歌集「鑿岩夫」を読み了える。
 第1歌集・
「どん底の叫び」は、今月19日の記事にアップした。
概要
 1930年、紅玉堂・刊。「どん底の叫び」と同じく、発禁となる。無産者歌人叢書。
 藤沢清造・序、西川百子・序、自跋を付す。
 この2歌集の間に、二松学舎専門学校・中退、本家・岡部家への婿入り(?)婚がある。なお幼くして母を亡くし、1929年に父を亡くしている。
 このような状況や、プロレタリア運動の自分への疑問から、等で「プロレタリア歌人同盟」を脱退した。
感想
 「解説」で「ただ勢いのおもむくままの叫びというものであるかもしれない。」と書かれるけれども、非定型ながら、レトリック的には、充分に練られた作品である。
 自跋で、「感動性、効果性について今後も深く考究して行くであらう。」と述べている。
 当時の労働者の思いを表現していたか、どうかは、僕は知らない。
 2歌集とも発禁とはいえ、大いに煽って撤退したあとの反動は、大きいものだったろう。
 それを凌いだのも、短歌の力であったか。

引用
 以下に5首を引く。なお(′)のついた語には、アンダーラインを引いた。
カンテラに命を懸けた一銭二銭の涙金、あつたかい仲間から寄せ集めた金が一円、汗でべとべとよごれた一円紙幣(さつ)でセメント樽の棺が出来た
おら、いい年齢(とし)して争議や、やめだ」「ええ!なにいふぞい」なあ製煉夫の辰公や、お前にや亜硫酸瓦斯でただれた声ふり絞って「足手まとひだがおらもまぜてくれ」おお!あの六十のお爺(やつ)さんのことが忘れたつてかい
ぶつつづけに続く業雨(ごふさめ)だ、トンネル長屋はむくれかへり床下まで泥水だ仕事はねい立つてもゐてもおられん嬶あはきんきん声でどなりちらすんだ
がちがち冷飯かつこんだ女工達(おれたち)は金網にへばりついて深呼吸だ、換気扇も廻つとらん工場の中は埃でもうもうだい
拘束(しよつぴ)かれる仲間を、ただれた赤い眼で、じつとにらむ父つあん、父つあんは ぶるぶる、み、み、身もだえするばつかつだ
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写真ACの「童話キャラクター」より、「桃太郎」のイラスト1枚。




 

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 綜合歌誌「歌壇」2017年11月号を、作品中心に読み了える。
 
この本の到着は、細かい経緯と共に、今月18日の記事にアップした。
特集 旅の途次を詠む
 特集の新しいテーマを見つけたようだ。時事、季節を離れて、新しい歌の読みも出る。
 総論を含む3編の評論、「私の旅の途次の歌」(3首と小文)8名では、バイクでの風まかせの歌から、インドでの旅まで、様々なセットがあり、旅をあまりしない僕を喜ばせる。
 巻頭歌はそれぞれ感慨があるのだけれど、ここでは端折る。
インタビュー 尾崎左永子さんに聞く
 尾崎左永子(以下、敬称・略)に、富田睦子がインタビューする。尾崎左永子は、17年間、歌を止めていたという。僕は意識する事はなかったが、復帰のきっかけに岡井隆と馬場あき子がいたというのは、歌壇らしい。
 放送作家としての活躍、染織の探訪など、興味深いエピソードも語られる。僕は彼女の「栄花物語」だったかの、現代語訳に惹かれた思い出がある。
短歌甲子園レポート

 高校生の短歌甲子園対戦が、啄木の岩手、牧水の宮崎県で、2つ開かれた。対戦も年を重ねて、平静に対するようだ。歌壇の隆盛に繋げてほしい。
引用
 一ノ関忠人の「この十年」12首より、1首を引く。
辛うじて病ひくつろぐ時到るこのよろこびの言ひがたきもの
 写実でもなく、ロマン派でもない。生活の思いである。このような歌が在って良い。




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