風の庫

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俳句

 福井県俳句作家協会「年刊句集 福井県 第57集」より、6回めの紹介をする。
 今月8日の記事、同・(5)に次ぐ。
概要
 僕はこのアンソロジーとの出会いを、幸運だったと思う。身近な、短詩型との出会いである。同じ県内で、信仰があるも無いも、真宗王国の風土であり、山・田畑・海に豊かである(原発銀座を問題視する人もいる)。また昨年1年間の作品であり、世調を映している。
 毎年3月後半、協会の事務局長方へ葉書を出すと、郵便振替の伝票を付して、1冊を送ってくださる。
感想
 今回は、鯖丹地区(鯖江市、越前町、池田町)の13ページ、26名の260句を読んだ事になる。
 新しい句材を求める事は重要だ。プラス面だけでなく、マイナス面(過疎化・等)を含めて。高齢化を映す吟に感慨がある。
 また古くからの句材を、新しく吟じ直す法もある。
 僕は旧かな・古典文法の短歌を24年間続けた(今は新かな、現代文法で詠んでいる)ので、分かるのだけれども、稀に用字・文法に誤りがあって、避けられなかったかと少し残念である。
引用

 以下に5句を引く。
星流る遠き父母姉弟(T・晶子)
天仰ぎ地を這ふ仕種獅子頭(O・真由美)
直播きの植田のそよぎまだ疎ら(K・節子)
夏草の怒涛や誰も住まぬ家(H・幸美)
父になき齢を生きて年の酒(K・和典)

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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。




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 福井県俳句作家協会「年刊句集 福井県 第57集」より、5回目の紹介をする。
 同・(4)は、今月4日の記事にアップした。
概要
 僕はこの年刊アンソロジーを、平成26年版・第53集より読んできており、今年で5冊めである。毎年3月、事務局長方へ葉書を送り、1冊を送って頂いている。事務局長が代わると、きちんと引継ぎをしてもらえる。
 身近な大衆詩を読んで、僕は短歌、詩の創作だけでなく、心に大きな滋養を得ている。
感想
 今回は、奥越地区(勝山市、大野市)を読んだ。122ページ~143ページの22ページ、43名の430句を読んだ事になる。
 句境も進むべく、語彙(ボキャブラリー)・句材の新しさ、口語体(会話調)の試み、切実な心情、寸時の心理、壮大な景・心情、などを吟じている。
引用

 以下に5句を引く。
扇風機に進路変更そうじロボ(I・ひで子)
悠然と大樹の冬よ風は友(I・治代)
啓蟄や寝相の悪い児どつこいしよ(M・政治)
ひと雨が雪嵩くずす昼下がり(I・泰子)
春昼の手提げをさぐる鍵ひとつ(T・喜美子)
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。



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 福井県俳句作家協会「年刊句集 福井県 第57集」より、4回目の紹介をする。
 同・(3)は、先の4月24日の記事にアップした。
概要
 1年に1集ずつ発行されて来たとすると、創刊は1962年になる。俳人協会から伝統俳句協会が分離した年である。危機感を持つ県内の俳人が多かったのか、現代俳句協会を含めて、3派が合同して県組織を創立し、年刊句集を発行し、現在に至るようだ。
感想
 今回は、坂井地区(坂井市、あわら市)の13ページ(108ページ~120ページ)の26名、260句を読んだ事になる。
 同・(3)の41ページ、810句に比べて、かなり少ない。人口数の違いであり、文化への関心度の違いではないと信じたい。
 「世情は変わっても自然は変わらない」という考え方があったが、自然開発が進み、災害・異常気象が進むと、「自然は変わっても人情は変わらない」とも考え得る。
 年刊句集の句が、多く有季定型であり、季節の詩として俳句は貴重である。
引用

 以下に5句を引く。
初旅や三か所の子に餅配る(A・昭三)
人影も見えぬ野面の極暑かな(S・潤子)
日捲りも薄くなりけり涼新た(W・千加江)
スマホで見る天気予報や稲刈り日(T・政三)
着崩れし踊り浴衣や水を飲む(I・房枝)
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。



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 福井県俳句作家協会「年刊句集 福井県 第57集」より、3回目の紹介をする。
 同・(2)は、今月16日の記事にアップした。リンク記事より、関連過去記事へ遡れる。
概要
 「作品集」の「会員順」は、大きく8地区に分けられる。地区内の市町ごとに、おもに所属する会の内より、氏名のあいうえお順に作品が並ぶ。
 つまり長短はあっても、ほぼ同じ会の会員の作品が並び、作風がまとまっている感がある。
感想
 今回は、66ページ~106ページ(福井地区のしまい)まで、41ページ、81名の810句を読んだ事になる。前回で、半分ずつと書いたが、計算違いがあったようだ。
 短い詩型で、新しさを打ち出すのは難しい。生活実感の中で、これは、という句材を見つけて書き留めるのだろう。
 ぎすぎすした、不安な時代に、豊かな情感は救いである。以下の引用には、情感があって新しい句を選んだ。
引用

 以下に5句を引く。
頼りなき孫の歩みに蝶一羽(K・洋治)
七草や犬の餌に足す一しやもじ(U・恭子)
ふる里が口に広がるまくわうり(T・富美子)
石垣の揃はぬところ野菊かな(U・君枝)
草笛を吹くあの頃に戻れねど(M・桃翠)
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。


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 福井県俳句作家協会「年刊句集 福井県 第57集」より、2回目の紹介をする。
 同・(1)は、今月10日の記事にアップした。
 2019年3月20日・刊。2018年中の句より成る。
概要
 年刊句集の中心の「作品集」は、会長以下の役員順、名誉会員・参与、会員順、となっている。
 会員順は、福井地区、坂井地区、奥越地区、鯖丹地区、南越地区、敦賀地区、若狭東地区、若狭西地区の、大きく8地区に分かれている。各地区内の市・郡・町については、各地区の紹介内で述べたい。

感想
 今回は、会員順の初め「福井地区」(福井市、吉田郡)の前半である。会員数が多いので、約半分を読んだ。
 35ページ~65ページの31ページ、620句を読んだ事になる。
 短い詩型だから、手練の腕が要るようになる。「焼鯖の手際を褒めて半夏生」(F・照子)、「田植機とたつた二人の田植謡」(N・明徳)等の、土俗性も、題材として感慨深い。
 一方で、新しい語彙(ボキャブラリィ)を取り入れる方法も、俳句を新しくする手法である。時代は移るから、俳人年齢が上がっているようでも、時代に付いて行く必要はある。
 以下に引用の5句は、新しい語を取り入れた作品のみ、引いてみた。
引用

 以下に5句を引く。
山吹の花にママ友ベビーカー(T・京子)
母子してパソコン論議盆の月(S・和雄)
啓蟄や踵に測る骨密度(H・一枝)
自撮棒かざしてポーズ風光る(K・敏子)
参道に積もる落葉はミルフィーユ(I・貴夫)
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。




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年刊句集「福井県 第57集」
 「年刊句集 福井県 第57集」に読み入る。
 本の受領は、先の3月31日の記事にアップした。
 リンクより、昨年・刊「同 第56集」、1昨年・刊「同 55集」の感想記事へ遡り得る。
概要
 福井県俳句作家協会・発行、2019年3月20日・刊。
 1ページ2段組み、1段1名10句を、新年・四季順に掲載する。
 会長のY・世詩明氏の序文「先師に続け」のあと、作品集、俳句の各種大会の入賞句、各支部の報告等、索引、編集後記へ続く。
 作品集は、2018年(平成30年)に吟じられた句をもって成る。
感想

 今回は初めの1ページ~32ページ、役員、名誉会員・参与の61名、610句を読んだ事になる。
 大家の作品であって、初心者の乱れはない。
 おもに宗教信仰に近く、土俗性も残されている。
 農林漁業に働く老いを吟じた句があって、目を惹かれる。
 技法的に、比喩は少なく、短い詩型ながら対句を取り入れた作品が、散見される。
引用
 以下に5句を引く。
地に木遣天に見得切る梯子乗り(I・道夫)
小鳥来る庭に水琴窟ありて(F・フジ子)
春浅し焦げつき癖のフライパン(I・千恵子)
湧き水に浮かぶ西瓜の自転して(S・健吉)
鮎を焼く簗場小町と呼ばれゐて(I・野武男)



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 角川書店「増補 現代俳句大系」第14巻(1981年・刊)より、20番目の句集、赤尾兜子「歳華集」を読み了える。
 先の3月28日の記事、中村苑子・句集「水妖詞館」に次ぐ。
概要
 原著は、1975年、角川書店・刊。第3句集。
 司馬遼太郎の序文「焦げたにおい」、500句、大岡信の跋文「赤尾兜子の世界」、著者・後記を収める。塚本邦雄の1文「神茶吟遊」を別刷添付。
 赤尾兜子(あかお・とうし、1925年~1981年)は、戦後に京大入学後、「太陽系」の同人となる。1970年、俳誌「渦」を創刊・主宰した。
 句集「蛇」、「虚像」で、前衛俳句の旗手と見なされる。「歳華集」は、伝統回帰の作風と言われる。
感想

 句集として、司馬遼太郎、大岡信、塚本邦雄の護衛に守られた母艦のようである。
 伝統回帰と言っても、有季、古典文法、新かなながら、575音の定型に収まる句は少ない。
 例えば「霧の屋上庭園 しきりに卵割れあふれ」、「つぶやく小動物のあいさつ消えて水匂う」など、初句が大幅な字余りで、中句7音、結句5音と取ると、読みやすい句が多い。他のどこかで切ろうとすると、無理が生じる。
 「妖しき祭怺う水栓も雪のなか」は、怺えるのが自分なのか、水栓なのか判然しないように、難解な句も多い。定型の「プール秋綿菓子色の水で陥つ」など、いっそう難解である。
引用

 以下に5句を引く。
さびしき鳥と釣りあう雨の野韮群
縫合の国軽外套もほころびて
兎さげし猟夫と暁(あけ)をゆきちがう
花壺におさななじみの雲は散る
木犀の夜雨まじりに匂う方
(かた)
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。



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