風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 このブログを運営している新サスケは、2017年10月17日付けでのAmazonのKindle本、第4詩集「詩集 日々のソネット」(縦書き)の発行に続き、第5詩集「改訂版 ソネット詩集 光る波」(縦書き)を、2018年5月31日、Kindleストアにて発行しました。著者名は、柴田哲夫(僕のペンネームの1つ)です。
 2011年10月1日・刊の紙本「ソネット詩集 光る波」に、数十ヶ所の加筆をし、編集しました。
 販売ページは、Amazonの「Kindleストア」カテゴリーで、「柴田哲夫 ソネット 光る波」と入力して検索してくだされば、即で見つけられます。右サイドバーのバナーよりも着けます。
 kindle版で540円(税込み)、kindle unlimited版も発行しています。

小説

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 今月12日の記事、「0円で紙本を2冊入手」で報せた内、先の川上未映子の小説「乳と卵(ちちとらん)」を読み了える。
 メルカリで320ポイント(送料込み)で買ったが、帯、カバー、本文ともきれいで、当時のチラシ、栞が残っていた。
概要
 文春文庫、2010年1刷。芥川賞・受賞作「乳と卵」と、短編「あなたたちの恋愛は瀕死」を収める。
 初出は順に、「文学界」2007年12月号、「同」2008年3月号。
 川上未映子(かわかみ・みえこ、1976年~)は、CDアルバム、詩集(受賞歴あり)、小説と多才な人である。
 「乳と卵」は、大阪の母娘連れが、東京の妹を頼って、3日間滞在する話である。
感想
 言葉を発せずノートに書く娘、豊胸手術に執りつかれたホステスの母が、互いに生卵を自分に打ちつけながら本音を言い合い、和解する場面がクライマックスである。
 これだけだと悲喜劇だが、文体が変わっている。「です・ます」調があり、「~した」と叙述体があり、大阪弁があり、娘の書くノートの文面が挟まれる。このような文体は、アマチュアからプロへ脱皮する過程だったのだろう。
「あなたたちの恋愛は瀕死」は、善意と悪意と切羽詰まったストレスの、交錯するストーリーである。
 彼女はこのあと小説のみでも、芸術選奨文部科学大臣新人賞、紫式部賞、谷崎潤一郎賞、渡辺淳一文学賞、と受賞を重ねている。

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 文庫本棚から引き出して、江國香織の小説「きらきらひかる」を読み了える。
 1度読んだ事があるかな、と思ったが、冒頭より細部を覚えていないので、読み進めて行った。最後の大団円で、読んだ事がある、と気づいた。
 前ブログ「サスケの本棚」で調べてみると、違う版ながら、2012年5月27日の記事にアップしていた。
概要
 新潮文庫、1999年・19刷。
 江國香織(えくに・かおり)は、1964年・生。児童文学作家、翻訳家でもある。
 新婚の夫「睦月」はホモで「紺」という恋人あり、妻の「笑子」はアルコール依存症気味で情緒不安定。笑子はセックスレス結婚を認めているが、睦月が気を遣い、笑子の親友や、笑子の両親にバレてしまう。
 笑子が策略して、紺を夫婦のマンションの下階に住まわせ、笑子の思う通りの生活へ入る所で、大団円となる。
感想
 結末で睦月に「お互いの愛情だけで成り立っている世界」と思わせる。
 しかし夫婦は愛情だけでなく、性、経済、できれば子育ても含めて、成り立っていると思う。

 2度目かの読書だが、細部もストーリーも覚えていなかった。自分の読書記憶の曖昧さに驚く一方、読みやすい感じはあった。読書に偏りがあるようで、重厚長大編は、今は遠慮したい。


 

幸田玲 月曜日の夜に
 幸田玲「月曜日の夜に」kindle unlimited版を読み了える。
 先の8月31日の記事「3冊を入手」で報せた内の1冊である。

 2018年1月29日・刊。126ページ。

 11編の恋愛小説を収める、短編小説集である。
 彼女はインディーズ作家として活躍し、他のkindle本もある。
 小説投稿サイトで50万pvを得たというが、冊数に換算すれば多くはない。
 淡い恋の話で、性描写もほとんどない。出会いがあり、高揚があり、すれ違って別れてゆく、失恋ばかりである。ミステリーめかした作品もある。
 インディーズ作家の作品を、メジャーな作家の作品と、同じ目線で見てはいけないと思う。発表場所も、読者層も、収入も違う。彼女も、小説で生活できる程の収入は得ていないだろう。
 機会を掴んで、メジャーへ進出すれば、僕も喜んで祝いたい。



三浦しをん 天上の飲み物
 三浦しをんの短編小説、「天上の飲み物」kindle unlimited版を読み了える。
 タブレットへのダウンロードは、今月25日の記事
「2冊を入手」の初めで報せた。
概要
 三浦しをんは、1976年・生。
 「まほろ駅前多田便利軒」で直木賞を、「船を編む」で本屋大賞を受賞。
 三浦しをんの本は、僕はこれが初めてである。
 「船を編む」が話題になった時、今さら辞書編集者のストーリーなどを・・・電子辞書の開発と向上と進展の裏側を覗きたい、と思ったのは僕だけではない筈である。企業秘密だから公開されないだろうけれども。
 「天上の飲み物」は赤ワインの事で、初出は季刊の「サントリークォータリー」である。納得する。宣伝誌に、意に添うストーリーを発表しても良い。
感想
 400年以上生きるドラキュラが、人間の生活に慣れ、今は大学生・後藤次郎・21歳として、酒屋の2階に下宿し、25歳のOL・宮村有美に恋している。
 しかし主人公は、恋人の血を飲む事も、血を与えてドラキュラ界に引き入れる欲求も、我慢して耐える。短いエピソードとはいえ、何の寓意か。
 ドラキュラは、作家を指すか、自由業を指すか、起業家を指すか。サラリーマンではない世界を指すようである。その世界に引き入れたい欲求がありながら、サラリーマンの世界から、引き剥がせない。
 下世話なようだが、単なるドラキュラと娘さんの恋物語と思えなかった。


 



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 今月10日の記事「入手した4冊」の初めにアップした、青木祐子「これは経費で落ちません!」第4巻を読み了える。
 
同・第3巻の紹介は、今月15日の記事にアップした。
概要
 集英社オレンジ文庫。2018年6月・初刷。
 このシリーズで、公称・35万部(当時)。大ヒット作と称して良いだろう。また作者は、作家としての基盤を築いただろう。
感想
 経理部の新入社員・麻吹美華(あさぶき・みか)は、正義感が強すぎて、レベルダウン的な転職を重ねている。主人公の沙名子やその後輩の真夕が言えなかった事、やむなくしてきた事に、1言と行動を伴い、経理部で次第に和んでくるのは良い。
 しかし経理部の独身ベテラン・勇太郎と広報課の華・織子(年下の夫あり)との不倫、役員秘書のマリナのキャバクラ嬢・アルバイトの発見は、勇み足だろう。
 勢いが余ったのか、題材に苦しんだのか知らないが、幻滅するストーリーだった。
 沙名子と営業部の太陽の恋は少しずつ進んでいる。しかし続巻は難しいように、僕は思う。何かウルトラ的な進行があるかも知れない。



No・3
 先の7月30日の記事で購入を報せた2冊の内、青木祐子「これは経費で落ちません!」シリーズの、第2巻に続き、第3巻を読み了える。
 
第2巻の紹介は、今月5日の記事にアップした。
概要と感想
 4章とエピローグを収める。
 第1章は、28歳の女性非正規社員が、正規社員登用と結婚の瀬戸際だと思い込んで、必死のさまを主に描かれる。僕は非正規ではなかったけれど、中途採用の技能職員で、どんなに頑張っても課長にはなれない立場だったから、焦る気持ちもあっただろうと同情する。
 第2章は、ミスを隠して土壇場で逃げる男性職員を描く。周囲の友人は腹に一物があり、女性職員たちは振り回される。
 第3章は、業務上のミステリーの解明を、主人公・森若沙名子が現場に居ないながら、解明を予言する。ミステリー仕立てが新しい。
 第4章は、社員と出入り業務員との、金銭貸借が問題となる。結末で、貸し手、借り手のどんでん返しがあって、第3章のミステリ仕立てに味を占めたか。
 エピローグは、主人公の後輩の視点で描かれ、「経理部は、今日も平和だ。明日はどうなるかわからないけれど。」と締められる。
 企業には大小のトラブルがあり、業績と共に、社員たちは苦労させられている。


 岩波文庫で室生犀星「或る少女の死まで 他二篇」より、標題作「或る少女の死まで」を読み了える。
 今月3日の記事、
同・「性に目覚める頃」に次ぐ。
概要
 この岩波文庫に収められた、初期3部作は、大正8年の「中央公論」3冊が初出である。
 自伝としては、あまりに美化されたフィクションが多いと、研究家によって明らかにされている。

 「或る少女の死まで」は、4人グループで酒場で酒を飲んでいて、ある男と喧嘩をして仲間が傷つける。示談の費用にも、面談にも引っ込みがちな友人たちと、警察署内の体験に嫌気がし、宿を替える。

 酒場の女の子も死の床に臥し、同宿だった女の子(ボンタンと呼んで親しんだ)も「私」の第1回の帰郷(「都落ち」と記されている)の後に亡くなっている。
感想
 詩作では生活できない状況(今もほとんど変わらない)だった事もあり、成功を願って都会に蠢く青年たちがいて、暗い底辺を成していた。着物を売って「私」の借財返済を助けてくれる友人も描かれる。

 当時は男尊女卑があったから、か弱い女の死でもって、心境描写の結末を付ける事ができた。現在では、受け入れられない手法だろう。

 室生犀星の小説を僕は、この他に「杏っ子」しか読んでいないので、その後の作家を語り得ない。しかし伝記集「我が愛する詩人の伝記」を読んで、深く感服し、繰り返し読んだ経験がある。今もあちこち探して、単行本・版を見つけ得た。
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写真ACより、「ファンタジー」のイラスト1枚。



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