風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

Kindle本の第1歌集「雉子の来る庭」をKDPしました。右サイドバーのアソシエイト・バナーよりか、AmazonのKindleストアで「柴田哲夫 雉子の来る庭」で検索して、購入画面へ行けます。Kindle価格:250円か、Kindle Unlimitedで、お買い求めくださるよう、お願いします。

小説

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 加藤元の短編小説集「四百三十円の神様」を読み了える。
 到着は4月17日の記事、届いた2冊(6)で報せた。
 集英社文庫、2019年2月25日・刊。定価:640円+税。
 僕はメルカリの400ポイントで購入した。
概要
 加藤元(かとう・げん)は、1973年生まれの女性作家。
 「四百三十円の神様」には、「四百三十円の神様」、「あの川のほとりで」、「いれずみお断り」、「ヒロイン」、「九月一日」、「鍵は開いた」の、6編を収める。
感想

 「四百三十円の神様」。元・プロ野球の名ショートだったが落ちぶれた男。同棲する女の財布を攫った男。働かずにいて離婚した父親。故障があり見込みがあまりないが学生野球に戻ろうとする話者・岩田。
 「いれずみお断り」。元・テキヤだが、妻子には逃げられていて、侘しい老人の死。
 「ヒロイン」。映画のスターだった女優の裏表。憧れる女性の、同棲相手は、2年前から働いていない。母親はだらしない。
 「鍵は開いた」。掌編連作。妻子ある男との不倫を解消する娘。合鍵を妻に捨てさせられる男。母は怒り父親から「失敗作だ」と言われる少年。泥棒の前科3犯だったが更生した中年女性。

 ダメな男女を描いてばかりだ。読んでいると、読者のダメぶりを炙り出すようで、自分も忸怩たる思いをする。
 しかし人のダメぶりは、人に誰にでも、部分的に、時期的にあるもので、特殊な場合ではないように思える。羽目を外さないよう、時に良い事もして、生活して行こうと思う。



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パヴェーゼ「流刑」
 パヴェーゼ(イタリアの作家、1908年~1950年)の小説、「流刑」(岩波文庫、2012年2月16日・刊)を読み了える。
 旧ブログ「サスケの本棚」で調べると(管理画面でのみ検索可能)、2012年2月22日の記事に購入を挙げてある。
 他に岩波文庫「故郷」(2003年6月13日・刊)と、集英社版・世界の文学14「パヴェーゼ」(1976年5月20日・刊、「流刑地」を含め、「美しい夏」、「月とかがり火」、他を収める)を持っている。
 2012年・当時、岩波書店書店より「パヴェーゼ文学集成」(全6巻)が刊行されていた。
 パヴェーゼの作品を読むのは、今回が初めてである。
概要
 「流刑」は、パヴェーゼの第1長編小説である。
 反ファシズム運動に関わり、イタリア南部の海岸の村に流刑(流謫)となった、現実には7ヶ月ほどの小屋暮らしを描いている。
 村人は警戒しつつ優しく、恋人を得る幸運もあった。
 戦後、パヴェーゼは詩人・作家として活躍したが、1950年、42歳の若さで自殺してしまった。僕は原因を知らない。
感想

 1970年前後、パヴェーゼは学生の間に人気があった。
 ある先輩は、「僕たちもパヴェーゼやポール・ニザンを読むようになるのか」と、嘆くように語ったものだ。
 訳者・河島英昭は、イタリア文学の名翻訳者で、「ウンガレッティ全詩集」、「クァジーモド全詩集」(いずれも筑摩書房・刊、未読)等の翻訳もある。
 関係詞につながる長文、詩的な表現もそのまま、翻訳されている。
 「流刑」を読み了えて、今の自分が流刑に遭っているような気がする。次男ながら、出身地の町に住み、軟禁されてはいない。しかし40年の囚役(ほとんど肉体労働だった)からは解放されたが、日中は一人でいる事が多く、毎日のように文学を語り合う友はいない。応接室を訪れる友も今はいない。
 会合で文学の友と語り、ネットで交流を続けるのみである。
 この流刑のような生活にも、職をリタイアした身は、慣れてきたようだ。




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堀江貴文 拝金
 堀江貴文の小説デビュー作、「拝金」kindle unlimited版を、タブレットで読み了える。
 今月7日の記事、同「成金」の先行作にあたる。
 「成金」の主人公・堀井健史が、今作の主人公・藤田優作のパトロン役らしいが、その繋がりはあまり意識しないで読んだ。
概要
 紙本版:2010年6月30日、徳間書店・刊。1,500円。159ページ。
 電子版:2013年6月1日・刊。463円。
感想

 フリーターの青年、藤田優作が、チーフディレクターこと堀井健史の指導によって、ゲーム制作から巨大IT企業、ネクサスドアの社長にまで登り詰める。隠れ家の銘店の味や、ヒルズ族のパーティーなども描かれる。
 しかしプロ野球球団のオーナーになろうとして失敗、ラジオ局を買収しようとして失敗。
 東京地検特捜部の強制捜査が会社に入って、主人公は入獄する羽目になる。
 この小説を作者は、「欲の世界を突き抜ける」感覚を共感してほしくて、書いたとする。
 作者が著作料で得るお金は、企業経営に比べてわずかだろう。
 投資した宇宙産業のロケット打ち上げも、2度失敗している。堀江貴文がライブドア時代のように、再び活躍できるかは不明だ。
 僕のような無名歌人兼詩人は、「清貧」とうそぶいている方が良さそうだ。




1昨日のブログ記事にアップした、ムスカリの花をInstagramにアップしました。
パソコンよりアップできました。





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パソコンよりの再投稿です。

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堀江貴文 成金
 今月2日に、Amazonよりタブレットにダウンロードした、堀江貴文の小説「成金」kindle unlimited版を読み了える。実は先行する小説「拝金」もダウンロードしたのだが、名前に気が引けた。
概要
 堀江貴文の本は、初めてである。たまたま小説がkindle unlimited版で出ていたので、読んでみた。
 紙本版:2011年2月28日、徳間書店・刊。1,210円。
 kindle unlimited版:2013年6月1日・刊。
 245ページと長編の小説である。
感想

 堀井健史が仲間と共にガレージ企業グループ「AKKA」を有望IT企業に育てるが、大企業LIGHT通信に乗っ取られる。その復讐として、堀井たちはLIGHT通信の影山を引退寸前にまで追い詰める。ハードバンクの朴が間に入り、3者和解が成立する。
 数百億円の資金を動かすとか、数兆円の資産とか、僕には驚く世界である。また富を集めるための、駆け引きも面白い。悪と憎悪にまみれる世界である。
 堀江貴文は小説においても才能を見せている。
 僕には才も年もなく、関わる世界ではない。
 僕はこれまで、生活ができて、アマチュア文学(ネットを含めて)を続けられれば、それ以上の富は要らない、と書いて来た。これまでの世界に籠っていたい。


 4回目のInstagramである。

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サザンカの赤花も咲いています。

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杉村奈緒子 片恋未満
 昨年12月13日に、タブレットにダウンロードしたままだった、村杉奈緒子の中編小説「片恋未満」kindle unlimited版を読み了える。(注記:杉村奈緒子と誤記していました。ご迷惑をかけました)。
 インディーズ作家のkindle unlimited版・小説として、昨年9月4日の記事、幸田玲「月曜日の夜に」以来である。
概要
 2017年9月4日・刊。73ページ。
 kindle版:480円。kindle unlimited版:追加金無料。
 彼女には今の所、他のkindle版・小説はないようでる。
感想

 主婦の弓子がフラメンコ教室に通い出し、フラメンコ・ギタリストの喬木と親しくなり、彼の部屋を訪ねるまでになるが、恋は成就せずに別れる。喬木の以前の、若栄、礼子との恋のいきさつが、フラッシュバック的に挟まれる。
 主婦とギタリストが真剣に想い合うが、それ故に成らない恋を描く。
 最近の若い人の、セックス・レスな関係が、取り込まれているようだ。村上春樹のように、しつこく描く世代ではない。
 スペインの地名と、フラメンコの技法の名が頻出して、フラメンコを格好良いとは思うが熱中はしない僕には、少し煩わしかった。
 小説の第1作は、誰にも書ける(僕も昔、短編小説を書いた)が、長く続ける事が大事だと思う。


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 三浦哲郎の短編小説集「愁月記」(新潮文庫、1993年・刊)より、しまいの7編目、「病舎まで」を読み了える。
 先の2月22日の記事、
同「海峡」を読む、に次ぐ。

 足掛け4年めに入る、月刊誌連載の小説(「白夜を旅する人々」らしい)の途中で、身体異常を感じ、掛かりつけの医師に診てもらうと、血圧の上が218、下が130で、すぐ他のK病院へ入院する事になる。そのK病院の野崎医師の測定では、血圧計の上限、260を振り切れてしまい、原因調べの検査を続ける事になる。初めての入院である。
 結果は、とくべつ悪い所はなく、本態性高血圧症と診断される。
 作家が1番気にする事は、心情というか心の調子というか、自分が変わって、途中のままの小説を続けられない、あるいは小説を書けなくなる事である。
 救いは、付き添う夫人が気遣いつつ明るく、前向きな考えであり、また見舞う娘さんたちも純情な事である。感謝の言葉と、慈しむ眼がある。
 この小説の中でも、不遇だった兄姉のことは、書き込まれている。

 「あとがき」では、後に吐血にも見舞われたが、回復したと述べている。
 2010年、79歳で亡くなった。短編小説など、もっと読みたかったと、当時の文学仲間と惜しんだことである。
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。


 Instagramデビューしました。よろしくお願い致します。




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 三浦哲郎・短編小説集「愁月記」(1993年、新潮文庫。7編)より、6編目の「海峡」を読み了える。
 今月14日の記事、
同「居酒屋にて」に次ぐ。リンクより、前の短編へ遡り得る。

 この短編も、読んだ事がある筈だが、記憶にない。2年続けての佐井(青森県)訪問の話である。
 1度目は、遭難船の船員の資料を手に入れに行った墓地で、偶然、無縁仏の供養碑を見つける。今は小屋ようになっている。
 作家と公民館長の会話に、「海峡から流れてきた無縁仏たちが引き取り手を待っているわけですか」。「そうです。はっきり言えば、全員が連絡船から身投げした人たちでしょうな」とある。
 作家の次姉が、1937年、青函連絡船より投身自殺をしているのである。海峡の漂流物が、佐井の浜に流れ着きやすい事、他の浜にも供養碑がある事を確かめる。
 翌年、次姉の50回忌を修した作家は、佐井の浜と、他に供養碑のある事がわかった、尻屋岬を回り、恐山を訪ねる。尻屋岬の供養碑は、土台だけが残り、他へ移されたが、その先はわからない。
 大祭の恐山に回り、簡略にイタコの口寄せをしてもらう。イタコの言葉はわからないが、口調から少なくとも次姉が不機嫌ではないらしいと、作家は喜ぶようだ。
 海のものばかりの肴で、宿に精進落としをする所で、1編は終わる。

 不遇だった1家の語り部として、語り続けねばいられなかったのだろう。
 神なき信仰、という心はあっただろう。神仏の存在を信じたなら、むしろ1家の運命を詰問したかも知れない。
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。



 
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