風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 このブログを運営している新サスケは、2017年10月17日付けでのAmazonのKindle本、第4詩集「詩集 日々のソネット」(縦書き)の発行に続き、第5詩集「改訂版 ソネット詩集 光る波」(縦書き)を、2018年5月31日、Kindleストアにて発行しました。著者名は、柴田哲夫(僕のペンネームの1つ)です。
 2011年10月1日・刊の紙本「ソネット詩集 光る波」に、数十ヶ所の加筆をし、編集しました。
 販売ページは、Amazonの「Kindleストア」カテゴリーで、「柴田哲夫 ソネット 光る波」と入力して検索してくだされば、即で見つけられます。右サイドバーのバナーよりも着けます。
 kindle版で540円(税込み)、kindle unlimited版も発行しています。

小説

 河出書房「ドストエーフスキイ全集」(米川正夫・全訳)第2巻(1956年・刊)より、中編小説「いやな話」を読み了える。
 先の6月24日の記事、
同・中編「初恋」に次ぐ。
概要
 初出は、「ヴレーミャ」の1862年12月号である。
 訳者・解説では、「開き直って論ずるほどの重要性を有していない」と書かれた。
 知識人と大衆の対比という、基本問題が現われ始めていると、僕は感じるけれども。
感想
 役所で五等官のイヴァン・イリッチ(43歳、独身)が、酔いのあげく人道主義の想いに駆られ、十二等官・プセルドニーモフの結婚式に入り込み、式と結婚を目茶目茶にし、プセルドニーモフの転任に至る(本人は高官のため、外見上はお咎めなし)物語である。
 頭の中で人道主義を掲げても、現実には迷惑がられる人物を、戯画的に描いている。
 農奴解放直後の自由主義・進歩主義の流行への警告、民衆(ナロード)との接触という思想の幻滅性を、語ったとされる。

0-74
写真ACより、「ファンタジー」のイラスト1枚。



IMG_20180629_0001
 石田衣良の小説「東京DOLL」を読み了える。
 彼の小説の記事アップは、昨年4月13日の
「少年計数機」以来である。
 表紙写真の鮮明度の差は、台形補正カメラより、多機能プリンタのスキャンに替えたからだ。
概要
 石田衣良(いしだ・いら)は、1960年、東京・生まれ。
 1997年、「池袋ウエストゲートパーク」でデビュー。エッジの効いた文体とストーリーで知られる。
 10冊以上の「IWGP(池袋ウエストゲートパーク)」シリーズ、他がある。

 僕の読んだ「東京DOLL」は、講談社文庫、2007年8月10日・刊。279ページ。定価:495円(税別)。
感想
 MG(マスター・オブ・ゲーム)と呼ばれるゲームソフト制作者・相良と婚約者・裕香、新作ゲームのモデル・ヨリと恋人・ヨシトシの物語である。
 大都会の、暴力、性、サクセスの物語でもある。
 MGとヨリが惹かれ合い、裕香とヨシトシは捨てられる。庶民的な愛情を捨てながら、成功に向かう2人と、大企業の工作が描かれる。
 もう僕は、大都会にもサクセス・ストーリーにも、殆んど惹かれないけれども。


 河出書房「ドストエーフスキイ全集」第2巻(1956年・刊)より、中編小説「初恋」を読み了える。
 先の5月21日の記事、
同・「白夜」に次ぐ。
概要
 創作されたのは、ペトラシェフスキー事件で監禁中の1849年で、1857年の「祖国雑誌」に匿名で掲載された。
結婚の挙式費用に窮したためとされる。
感想
 旧題は「小さい英雄」で、主人公は11歳の少年である。上流社会に紛れ込み(親、兄弟への言及はない)、暴れ馬を乗りこなして金髪美人の貴婦人と親しくなり、ひそかに慕うM夫人の窮地を救う。
 しかし題名は「小さい英雄」のままが良かった。
 M夫人への思慕も、初恋というより、15歳で母を(17歳で父を)亡くしたドストエフスキーの、幼年時代の豊かな生活と母への親しみを、失くしたことへの追慕であろう。
 ドストエフスキーの小説には、どうしてこう激情型の人物が現われるのだろう。
 父親が課したという、厳しい躾(のちには規律)への、反動だろうか。
0-45
写真ACより、「ファンタジー」のイラスト1枚。


IMG_20180611_0001
 村松友視の小説、「時代屋の女房 怪談篇」を読み了える。
 先の5月17日の記事、
同・「海猫屋の客」を読む、に次ぐ。その記事の内に、「怪談篇」が文庫棚にある、と明記した。
 その事もあって、昭和の、大長編ではない、この小説を選んだ。
概要
 角川文庫、1989年・刊。
 初出は、「野性時代」1986年7月号。単行本は、1986年10月、角川書店・刊。
感想
 「時代屋」店主の安さんと事実婚の真弓が、島根県の出雲へ行くと告げて何度目かの家出をする。安さんと、喫茶店のマスターと、クリーニング屋の今井さんと3人で、真弓を追って出雲へ出掛け、ついには安さんと真弓が出会う。
 それまでに真弓が、正体不明の「男」(出て来るたびに「寂しさが…」云々と描かれる)と出会い、しばらく付き添う。
 安さんたち3人と、真弓たち2人が、出雲各地を巡るストーリーが続くのだが、観光地案内風な場面もある。観光地案内の文章を、そのまま引いた所もある。
 安さんと真弓が再会する所、「男」が実は真弓と出会う以前の日付で亡くなっていた事、ドラマ仕立ての定番的大団円である。
 村松友視も、編集者から、(好評だった)「時代屋の女房」シリーズの、続編を書くよう頼まれて、渋々書いたような気もする。
 僕が特に感心したのは、会話の中に、気象変化、原子炉火災、テロ続発、が取り上げられている部分である。30年以上前に、現在を予測したかのようだ。


 河出書房「ドストエーフスキイ全集」(米川正夫・全訳)第2巻(1956年・刊)より、中編「白夜」を読み了える。
 今月8日の記事、同・短編「クリスマスと結婚式」に次ぐ。
概要
 初出は、1848年の「祖国雑誌」である。
 副題は「感傷的ロマン―空想家の追憶より―」である。
 孤独で空想家で優しい「私」が、橋の上で泣いていた娘に声をかけ、話を交すようになる。
 娘は、かつての青年が1年間だけペテルブルグよりモスクワへ行く必要が出来、1年後にはその橋の上で再会する約束があったのに、青年が戻って来ても橋の上に現れないので、嘆いていたのである。
 「私」は彼女を慰め、真情を語り、愛するようになる。しかし元の二人の為に協力し、娘が相手を諦めようかとする瞬間に青年が橋上に現われ、娘は青年と抱擁し去ってしまう。
感想
 初期のドストエフスキーには、底抜けに優しく、貧しく、破滅的な人物を描く小説と、空想家を叙情的に描く「白夜」(読みきれなかったが、中編「主婦」もそうらしい)のような作品がある。
 ペトラシェフスキー事件後、流刑と兵役のあと、2つは宗教信仰と合わさり、「罪と罰」のラスコーリニコフ、ソーニャに至るのだろう。
 中編「主婦」は読みきれなかったが、「白夜」を読み了えられたので、次の中編「初恋」も読みおおせる気持ちになった。
0-60
写真ACより、「ファンタジー」のイラスト1枚。


IMG_20180516_0001
 村松友視(むらまつ・ともみ、1940年~)の小説、「海猫屋の客」を読み了える。
 前のブログ「サスケの本棚」の2011年4月13日の記事
「帰ってきたアブサン」に拠ると、彼の「アブサン」シリーズ、「時代屋の女房」シリーズ(1、2、のみ。「怪談篇」は文庫本棚にある)を読んでいた事がわかる。
概要
 村松友視は、村松梢風の孫。
 「海猫屋の客」は、朝日文庫、1989年・刊。単行本は、1986年、朝日新聞社・刊。
 「文庫のためのあとがき」で作者は、小樽の街に奇妙な懐かしさをおぼおえ、当然の筋道みたいに週刊朝日に「海猫屋の客」を連載したと書く。
感想
 昭和の読みやすい小説、という事で、前記作の著者とはわからず、文庫本棚より抜き出した。
 小樽の喫茶店「海猫屋」とその近辺を舞台に、マスター、前衛舞踏家、自称・女優、興信所員、監視人、などの感情が入り組むストーリーである。
 その行動と描写が芝居がかって、映画を観ているような気分になる。映画化は、されなかったようだが。
 難しい決着の付け方も、作家の手腕だろう。
 昭和風のおおらかな(ミステリー仕立てだが)小説だった。



 河出書房「ドストエーフスキイ全集」(米川正夫・全訳)第2巻(1956年・刊)より、短編小説「クリスマスと結婚式」を読み了える。
 今月6日の記事、
同・「正直な泥棒」に次ぐ。
概要
 初出は「正直な泥棒」と同じく、1848年の「祖国雑誌」である。副題は「無名氏の手記」。
 「私」の手記という形である。5年前の大晦日の、子供の舞踏会へ場違いながら呼ばれるが、知名の実業家の手蔓たちに疲れ、小さい客間へ引っ込む。実業家の幼い娘と、恵まれない少年が睦んでいる所へ、主賓のユリアン・マスターコヴィッチが現われ、娘の持参金・30万ルーブリが結婚できる5年後には50万ルーブリになるだろうと算段して、「私」に気づかず、娘にお愛想を使う。主人夫妻も、その結婚に賛成の様である。
 5年後「私」は、16歳になったその娘と、ユリアンの結婚式の場を見掛けるが、娘の眼は泣き腫らしている。
感想
 実業家が名士と手蔓がほしくて娘を結婚させ、名士は持参金ほしさに女性の気持ちを汲まずに結婚する。
 妻に嫌われて、大金があっても、豊かに暮らせるものだろうか。
 また本当に強欲な者は、弱者に愛想もせず、自分が正しいと信じて強奪する、というのが僕の感想である。
 ドストエフスキーが本当に批判しているにしては、描写が客観的で、「私」に「それにしても胸算用が鮮やかに行ったもんだな!」との感慨を持たせた。発表時の検閲を恐れたのだろうか。

0-18
写真ACより、「ゲームキャラクター」のイラスト1枚。



↑このページのトップヘ