風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 このブログを運営している新サスケが、2017年10月17日付けで、AmazonのKindle本、第4詩集「詩集 日々のソネット」(縦書き)を発行しました。著者名は、柴田哲夫(僕のペンネームの1つ)です。
 再任用・リタイア前後の、庶民の日々の悲喜哀歓を綴った4章48編と、巻末に哲学風小連作・2章7編を収めます。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリーで、「柴田哲夫 詩集 日々のソネット」と入力して検索してくだされば、即で見つけられます。
 また、ブログの右サイドバーの上部、アクセスカウンターの下に、Amazonアソシエイトのリンク画像「あなたへ詩集をAmazonで」を貼りましたので、画像をクリックしてくだされば、購入サイトへ飛びます。
 kindle版で540円(税込み)、kindle unlimited版も発行しています。よろしくご購入をお願い致します。

小説

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 集英社オレンジ文庫の、青木祐子の小説「これは経費で落ちません!」を読みおえる。
 購入は、昨年11月3日の記事、
「文庫本2冊」にアップした。
 2016年5月・1刷、同・9月・5刷。他に「風呂ソムリエ」、「ヴィクトリアン・ローズ・テーラー」シリーズ、「幸せ戦争」他がある。
 主人公・森若沙名子は、天天コーポレーション(石鹸や化粧品を作る所から発展し、入浴剤等も作る)に入社5年めの経理部員である。
 周囲で意図的に、天然で、様々策動するのに、「イーブンという言葉が好きである。…差し引きゼロ。すべてにおいてどちらの負担にもならないこと。」を信条とする、仕事にも人間関係にもクールな女性である。
 それなのに1部の人たちから、とても好かれる。営業部の山田太陽に押しきられるように、交際が始まりそうなところで、ほぼ終わる。
 発行された2016年5月、イギリスのEU離脱はないだろう、さらにアメリカ大統領選挙でヒラリー・クリントン氏が圧倒的に優勢と、国の女性首長がリードして、進歩主義が続き得るだろう、という期待の中にあった。
 その成り行きの中で、この小説は書かれ、読まれたのだろう。今、そういう幻想はない。
 一旦お蔵入りさせて本を読むと、このような感興を得る事もある。


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 前川幸雄・鄭建・訳の田恵剛・小説集「孤独なバラ」(朋友書店、2016年3月・刊)より、3回め、最後の紹介をする。
 同・2回めの
記事(←リンクしてあり。おもに後日の読者のため)は、12月1日付けでアップした。
 「生存の権利」は、1986年・発表。
 癌で様々治療を受けて治らない男性と、有力者の息子に妊娠させられて去られた娘が、万里の長城の一画らしい所で、自殺しようとして偶然に出会う。
 その出会いと会話によって、男性は生の最後まで闘う事を、娘は将来を生きる事を、決意して決着となる。非リアルな、観念小説の色合いがある。
 「ハイヒールの靴を履いた若者」は、1987年・発表。本書で2ページの掌編である。
 お揃いのダスト・コート、ラッパズボン、ハイヒールの青年男女が、電車に乗ろうとして、娘は乱暴者に囲まれ、男性は電車からはみ出してしまう1景である。中国の新しい世代の風俗として、前川さんが衝撃を受けた1編である。


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 1昨日の記事(←リンクしてあり。後日の読者のため)で書いた(1)に続き、田恵剛・小説集「孤独なバラ」の2回めの紹介をする。
 今回に僕が読んだのは、「螺旋」と「青い呼び掛け」の2編である。
 「螺旋」は1986年・発表、翻訳は鄭建さんが検討、「青い呼び掛け」は1985年・発表、前川幸雄さんが検討、双方が翻訳文を確認した。
 「螺旋」は、美しい女性建築士が交通事故に遭い、顔と足の怪我、片目失明の状態になり、恋人の男性が、将来と良心の間で苦しんだが(女性とその家族も別離を願う)、現実の障害を持つ娘さんと男性の恋人(もうすぐ結婚する)と出会い、一生を女性建築士と進もうと決心が着く所で終わる。やや長い、男性の心理変化を追う、小説である。
 「青い呼び掛け」は、女性一人、男性二人の、画家の物語である。パリへ留学して帰国しない男性画家と、その帰りを「十年でも待つ」という女性画家、彼女に惹かれるが事情を知って、パリ留学のうちにその男性を帰国させようと約束する、男性画家のストーリーである。「生活を把るか、芸術を把るか」の問題が、世俗的にも観念的にも描かれる。
 この本で残るのは、「生存の権利」と掌編「ハイヒールの靴をはいた若者」のみである。

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 先の11月21日の記事(←リンクしてあり)で紹介した、「2016ふくい詩祭」(11月20日開催)のおり、前川幸雄さんより、このブログで紹介してくれるなら、という事で、彼と鄭建さんの翻訳した田恵剛・小説集「孤独なバラ」を、送って頂く約束をした。
 前川さんは、おもに漢文学を研究し、上越教育大学教授、福井大学教授等を、歴任した。
 また現代詩を創作・発表する傍ら、中国現代詩の邦訳の先駆けとなり、5冊の訳詩集(田恵剛・詩集「大地への恋」を含む)を発行した。現代中国の小説の翻訳・出版は、これが初めてである。
 共訳の鄭建さんは、1953年、上海生まれ、日本語を学んで日本語講師の資格を得、1991年~1993年、前川さんの指導を受けた。
 著者の田恵剛さんは、1944年・生、詩より始め、小説をも書いた。
 前川幸雄さんを中心とする出版が、商業ベースに乗らないで、続けられた事は貴重である。
 この小説集は、短編6編を収めており、今回僕が読んだのは、初めから2編、「除名された新鋭」「鳩笛は青空に響き渡る」である。
 「除名された新鋭」は、有望な女子水泳選手(17歳)が、上層部の不正に反発してチームを辞めさせられるが、希望の持てる結末を迎える。
 「鳩笛は青空に響き渡る」は、軍隊の療養所に配属された娘さん二人が、幹部指導員と対立しながら、やがて理解が始まる。
 内部対立を描きつつ、読者に希望を持たせるのは、公式的な終わらせ方故ではない、と信じたい。

 

 沖積舎「梅崎春生全集」(全8巻)の第2巻(1984年・刊)より、前ブログ「サスケの本棚」と通算して第5回めの紹介をする。
 今回、僕が読んだのは、「麵麭の話」、「蜆」、「虹」の3短篇小説である。
 「麵麭の話」は、ご飯も食べられぬ戦後の貧しい家庭を持つ男が、裕福な知人の家で、白いパンを何個か盗んで、家に帰ろうとする主ストーリーである。ここにあるのは、法的な問題ではなく、倫理的な問題であり、背後に社会的問題がある。
 「蜆」は、蜆の闇屋をする男と、「僕」が外套の遣り取りのあと、男が「浅墓な善意や義侠心を胸から締出して、俺は生きて行こうとその時思ったのだ」と告白する。
 「虹」は、善意の学者の「先生」と、彼から翻訳の下請けを貰っている「私」と、街娼になれない「花子」の、心理的に絡み合うストーリーである。
 いずれも敗戦後すぐの、荒廃した人心を描いている。
 小説は、紹介するより、読んで貰う他ないものだ。
 梅崎春生は、1915年・生、1965年・没、享年わずか50.だった。
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フリー素材サイト「Pixabay」より、りんごの1枚。

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