風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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アストゥリアス

 岩波文庫、アストゥリアス「グアテマラ伝説集」(牛島信明・訳)より、4回め、了いの紹介をする。
 同(3)は、昨年12月28日の記事にアップした。



グアテマラ伝説集
 今回に紹介する作品、「ククルカン―羽毛に覆われた蛇」は、文庫本で135ページに渉る、長い幻想劇の脚本の形をとる。なおジャンルは、先行する作品と同じく、小説に入れた。
 全能の神・ククルカン、従者・グワカマーヨ、知者・チンチビリン、他の動物、伝統上の者たちによって織りなされる。
 1部、唯心論と唯物論の議論、戦闘の敗北を挟む。
 ククルカンが1夜の同衾で娘を殺すしきたりの中、娘・茴香(ヤイ)が当てられてククルカンの改心の希望を持たせる。


ひげを生やした亀:アオップ!アオップ!乙女たちが目覚め、蜂鳥に変わる日が、いつか来るであろうか?
ウバラビックス(不寝番の歌の名手):来るかも知れない‥‥来ないかも知れない‥‥

 しかし結末はバッドエンドで、チンチビリンが茴香(ヤイ)の名を呼ぶが返しはなく、亡くなるシーンである。
 アストゥリアスが宗教を、独裁を、あるいは現代社会を批判したのかわからないが、それら総てを含む幻想劇だろう。




 

 岩波文庫のアストゥリアス「グアテマラ伝説集」(牛島信明・訳)より、3回めの紹介をする。
 同(2)は、今月17日の記事にアップした。リンクより、過去記事へ遡り得る。


 今回は、「「花咲く地」の財宝の伝説」と「春嵐の妖術師たち」、2編を読んだ。

 「「花咲く地」の財宝の伝説」は、部族間の争いなどをしていた先住民が、白人の侵略に遭い、金銀宝石の財宝を山裾に隠そうとする。白人の銃撃で、先住民は財宝を放り出して逃げてしまうが、火山噴火によって財宝は隠されるという伝説である。実際は征服者の本国・スペインへ送られたのだろうが、現代のグアテマラ人として、アストゥリアスはスペイン人を全否定できないのだろう。

 「春嵐の妖術師たち」では、古代の幾つもの文化が、地震、噴火、洪水によって壊滅しながら、再生する様を描くようだ。様々な描写が試みられるが、ロートレアモン、アンドレ・ブルトン式(共に僕は嫌いである。)のシュールリアリズム(戦後に実存主義と合体するまでは、つまらない)ではなく、金銀宝石や刺青、化粧、花鳥など、南国らしい古代文化の妖しい美しさの再現を読むべきなのだろう。
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラストのラスト1枚。


 岩波文庫のアストゥリアス「グアテマラ伝説集」(牛島信明・訳)より、2回めの紹介をする。
 同(1)は、先の11月23日の記事にアップした。

 

 今回は、「「火山」の伝説」、「「長角獣」の伝説」、「「刺青女」の伝説」、「「大帽子の男」の伝説」、4編を読み了えた。

 「「火山」の伝説」は、楽園が火山噴火によって滅び、英雄ニドに依る国始めの物語のように受け取れる。
 「「長角獣」の伝説」と「「大帽子の男」の伝説」は、征服者による虐殺と略奪と信仰強制のあと、征服が安定期に入った頃の、尼僧修道院の尼僧と、修道院の僧の物語である。信仰の試練の物語と言える。心理描写と外形描写は、マジック・リアリズムらしく、シュールな場面を交える。
 「「刺青女」の伝説」は、インディオの神官、アルメンドロ博士が、4つに分け与えた自分の魂を、買い戻そうとして果たさず、ある奴隷女を救って枯れ枝として死ぬ。迫害されたインディオの魂を描くのだろうか。
 シュールな幻想を含む、民族の根底的な物語である。
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。



グアテマラ伝説集
 文庫本棚より、岩波文庫のアストゥリアス「グアテマラ伝説集」を取り出して、読み始める。
 ミゲル・アンヘル・アストゥリアス(1899年~1974年)は、グアテマラ生まれ、インディオの血を引く混血児である。1967年、ノーベル文学賞受賞。
 世界的にラテンアメリカ文学が流行した時代があり、日本でも翻訳され、何種類かのラテンアメリカ文学全集が出版された。それらは古書界でも高価で、僕は買えなかった。
 ガルシア・マルケスの「百年の孤独」を始めとする新潮社・刊の何冊か、集英社版「世界の文学」でコルタサル「石蹴り遊び」など何編か、を読んだ記憶があるだけである。
 アストゥリアスの作品は初めてである。マジック・リアリズムの創始者の1人とされる。
 この岩波文庫は、2009年、第1刷。定価:720円+税。
 9編を収め、僕は初めの「グアテマラ」、「「金の皮膚」の回想」を読み了えた。
 「グアテマラ」は、インディオ文明、スペインの征服時代、現代のグアテマラ、と積み重ねられた都市と文明を語る。
 「「金の皮膚」の回想」は、古代文明の伝説を基とする幻想譚と言って良いだろうか。フランスへ亡命して、マヤ族の創世神話、年代記を、仏訳からスペイン語に翻訳するなど、古代メソアメリカの研究の上に、書かれた。
 このあと、7編の伝説集が続く。


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