筑摩書房の「ウンガレッティ全詩集」(河島英昭・訳、1988年・刊)より、詩集「最後の日々」(1919年)(フランス語詩篇)を読み了える。
 先行する「老人の手帳」の記事は、今月16日にアップした。


 「老人の手帳」は、年代順に最後の詩集であり、その後も亡くなるまで散発的に詩を発表したが、この全詩集には訳出されていない。

 「最後の日々」は初期フランス語詩集であり、フランスに留学(彼はエジプトから来たイタリア人である)後、1915年、第1次大戦に従軍し、塹壕の中で詩を書いた。
 「ギョーム・アポリネールに」以下数編では、青年詩人らしい感傷、ロマンチシズム、哀愁が読み取れる。「夏の夜」には、「花瓶と岩石とが砕けて火矢と火口に群れ飛ぶ/この暴虐に…」と戦闘を歌う。
 「黒の成就」は、シュールレアリスムの詩人、アンドレ・ブルトンに捧げられた。連作「ロマン・シネマ」6編は、エジプト時代の同級生で、パリの大学に共に通った親友、モハメッド・シェアブの自死を深く嘆いた作品である。
 このあとには「散逸詩篇」と、詩論「詩の必要」を収め、訳注・年譜・解説を付す。

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写真ACより、「秋の人物コレクション」のイラスト1枚。