風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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エッセイ集

 和田たんぽぽ読書会の3月読書会の課題図書、佐藤愛子のエッセイ集「九十歳。 何がめでたい」を読み了える。

九十歳。何がめでたい
佐藤愛子
小学館
2016-08-01

 小学館・刊、2017年・24刷、222ページ。
 佐藤愛子(さとう・あいこ)は1923年・生まれ、父は作家の佐藤紅緑、詩人のサトウ・ハチローは兄である。
 僕は残念ながら、佐藤愛子の本を読むのは初めてである。頑張り屋の豪快な女性と、噂は聞いていた。
 あとがきに当たる「おしまいの言葉」を読むと、老人性うつ病を自覚したころ、「女性セブン」の編集者がエッセイ連載の依頼に来て、隔週連載で引き受けたとの事である。連載のおかげで、脳細胞の錆びはいくらか削れてなくなりかけていた力が戻って来たと思うと書く。怒りの種が尽きたのか、闘うべき矢玉が盡きたと休載した。
 自転車がスーと横に現れる危険を若い人に愚痴ると反発される。そこで、ナニが進歩だ、ナニが感動的だ!と怒る。
 次の「来るか?日本人総アホ時代」では、スマホの普及と、馴染めない老人の嘆きを訴える。水道(と洗濯機)の普及はともかく、僕もITの進化はこれくらいで良いと思う。CIlubhouseやTikTokは要らない、IoTに向かってほしい。
 金銭づくの処理、ゆとりのなさを嘆く。「闘争心が人一倍強い」と自覚する作家の、時代に付いていけない事が多い、怒りの言葉である。僕は同意する点と、できない点がある。
ヒヤシンス (2)
写真ACより、「ヒヤシンス」のイラスト1枚。



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 江國香織のエッセイ集「泣かない子供」を読み了える。
 知っているエピソードがある、と調べると、先のブログ「サスケの本棚」の2010年1月27日の記事に、アップしていた。




泣かない子供
 角川文庫、2002年5刷。10年以上隔てていると、忘れた部分も多く、楽しく読めた。
 やはり1番面白いのは、事務処理能力に長けた妹を描く「妹の不在とその影響」である。著者が5社からの締切が迫ってパニックになっていると、妹が冷静にスケジュールを組み立てる、という場面である。
 「世のなかの、善いもの、美しいもの」で称賛している、ヒメネス「プラテーロ」は僕も読んだ事がある。
 第Ⅲ章は、読書日記で、お気に入りの12編を、短く紹介している。
 第Ⅴ章には、「なぜ書くか」という、根本に触れたエッセイがある。リラックスしている時に、「なぜ書くのか、あなたの文学に対する姿勢を問う」などと電話されて、迷惑がりながら、その答えを出している。
 江國香織の小説を読む人は、エッセイ集も読めば、親しみが湧くだろう。


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 三浦哲郎のエッセイ集「おふくろの夜回り」を読み了える。
 入手は、先の11月10日の記事、入手した3冊を紹介する(5)にアップした。



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 「おふくろの夜回り」は、メルカリで見掛けた時、帯に「名文家が最後に遺した言葉」とあるから、注文した。遺稿、あるいは少なくとも単行本未収録の、エッセイを集めた本かと思った。
 届いてみると、文藝春秋「オール読物」に30数年に渉って載せたエッセイ47編と、日経新聞に載せた1編、それも総て単行本収録の作品で、没する直前に刊行された。看板に(この場合は、キャッチコピーだけれども)偽りあり、と言わざるを得ない。その後も、小説、エッセイは刊行されている。ネットで見て、内容を確認できないまま、説明(帯文を含む)だけで買うのだから、紛らわしいことは止めてほしい。


 48編は、ペーソスとユーモアを含んだ、三浦哲郎の得意の短文である。「挨拶」、「酔客」と掌編小説仕立ての作品もある。老い、病気、回想の文章が多く、三浦哲郎の晩年を偲ばせる。
 作家の死が報じられた時、短編小説等の名手として、惜しい人を亡くしたと、詩の仲間と嘆いたものである。
 なお生前に自選全集(新潮社、13巻)を刊行したせいか、2010年に没して今に至るも、全集の刊行されていないことは、恨みがましいことである。


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 最近に入手した3冊の本を紹介する。
 入手した本として、結社歌誌を除き、先の10月29日の記事、入手した2冊を紹介する(7)以来である。



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 永田和宏の回想記「歌に私は泣くだらう」。新潮社、2012年7月20日・刊。定価:1,300円+税。
 ある読書会に新しく参加する予定で、11月の選定図書である。
 メルカリで古本を、所持ポイントと325円で買った。
 文春社の「たとへば君 四十年の恋歌」を単行本と文庫本と2度読んだが、いずれも人に譲ったようだ。

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 三浦哲郎のエッセイ集「おふくろの夜回り」。
 2010年9月10日、2刷。定価:1,619円+税。メルカリで540円。
 帯のコピーに惹かれて購入したが、足掛け30余年の短いエッセイ47編だった。生前版。
 この後にも彼の本は出版されている。

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 先日、車で郊外の書店「KaBoS ワッセ店」へ出掛けて、ネット関係で今1番要りそうなガイド本を買った。
 「できるWindows10 パーフェクトブック 改訂4版」。2018年12月21日・刊。
 定価:1,480円+税。dポイントを1部使った。
 971項目を収めるというが、短い説明(半ページ、4分の1ページ)が多く、解りにくい。同系の改訂2版と共に、参考にしたい。




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 最近に手許に届いた本3冊、6回めの紹介をする。
 先行する同(5)は、先の8月12日の記事にアップした。

 
 その3冊の内、羽生善治「直観力」はまだ枕頭近い本立てにあるが、他の2冊は読み了えて、ここに記事アップした。
 今月15日に、綜合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)11月号が届いた。

歌壇11月号
 これまで値上げを我慢して来たが、消費税増税もあり耐えられなかったのだろう、1冊800円から900円に値上げになった。
 翌日16日、今年12月号~来年5月号の半年分、購読予約の代金を、付属の無料の郵便振替用紙で送った。2,3日後に本阿弥書店より、「前金切のお知らせ」と歌集10%割引の注文葉書が届いた。
 同・10月号の感想は、先の9月25日の記事にアップした。

 
 10月19日に、2冊が届いた。
 まず芥川賞を受賞した、今村夏子「むらさきのスカートの女」である。

むらさきのスカートの女
 彼女の小説は、新興宗教からみの「星の子」で躓いていたが、受賞本作は優れていると、ブロ友の記事に紹介された。メルカリで探して、600円弱(税・送料・込み。定価:1,300円+税)で買った。
 彼女の「こちらあみ子」と「あひる」を既に読んでいる。
 「あひる」の感想をリンクするので、リンクより「こちらあみ子」の感想に遡れる。

 
 もう1冊は、結社歌誌「覇王樹」の同人、渡辺茂子さんが贈ってくださったエッセイ集「落とし文」である。
渡辺茂子 落とし文
 2019年8月17日・刊。221ページ。
 「覇王樹」と「関西覇王樹」に連載したエッセイ、106編を収める。
 受贈した彼女の第2歌集、「湖と青花」の感想は、今月5日の記事にアップした。

 



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 先の5月27日の記事、入手した5冊と1誌で紹介した内、村上春樹のエッセイ集「村上ラヂオ3 サラダ好きのライオン」を読み了える。
 昨年3月16日の記事、「同2 おおきなかぶとむずかしいアボカド」に次ぐ。
概要
 初出は、女性週刊誌「アンアン」の連載である。1年間に発表された52編を集めて、3冊めとなる。
 「同2」と同じく、マガジンハウス社から単行本化された。
 新潮文庫、2016年5月1日・刊。挿し絵(銅版画)大橋歩。
感想

 若い女性が、村上春樹のエッセイを、どのような思いで読んだのだろう。作者も「まえがき」で、「両者のあいだには共通する話題なんてほとんど存在しない(はずだ)」と書いている。
 オジサンが面白く書いているエッセイと読むのか、内容が意外と重いので、大作家が人生を語っていると読むのか。
 語り口の軽さに反して、内容は重い。「愛は消えても」では、遭難救助の順を幾度も譲って自身は亡くなったアメリカ人男性の話題を取り上げて、親切心について考察する。
 「裁判所に行こう」では、裁判員制度で裁判員が量刑(死刑を含め)まで決める事に疑義を呈している。

 流行作家の売れそうな本を、大出版社が占めている事に疑問を持つ。出版社のメジャー度は、売れゆきに関わるだろう。でも、おこぼれや新人の作品・翻訳を中堅出版社が拾い、1本勝負を賭けるのは、出版界として健康的でない。

 1時は騒がれた電子書籍も、旧勢力の抵抗に由るのか、優れた作品を揃えられなく、ノウハウ本かインディーズ作家の本が多くて、隆盛とは呼べない現状は残念である。読書界の再興になると思っていたけれども。


 
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 昨日の記事で到着を報せた2冊の内、村上春樹のエッセイ集「おおきなかぶ、むずかしいアボカド」を読み了える。
 2011年7月7日、マガジンハウス・刊。
 女性週刊誌「あんあん」に連載されたエッセイとイラスト(大橋歩・筆)、「村上ラヂオ 2」に加筆修正した本である。
 村上春樹の本の記事は、昨年4月15日の
「パン屋襲撃」以来である(その記事から、長編小説「騎士団長殺し」の感想へ移れる)。
 連載誌のせいか、読者に話しかける文体で書かれている。「あざらしのくちづけ」の末尾、「でも臭いですよ、ほんとに、冗談抜きで。」のように。
 1つには自信があるのだろう。自分の書く文章は、多くの読者に歓迎されるという。それは彼の本の発行部数で知れる。
 彼にはユニークな所がある。生活でも、結婚→開業→大学卒業という、普通の逆のコースを進んだ。演劇科・卒である事が、文章を劇化しているのだろう。
 彼が何度も書いているエピソードだが、野球場スタンドで「僕にも小説が書けるだろう」という、インスピレーションが降って来なかったらば、世界は「クレオパトラの鼻」ではないが、かなり違っていただろう。


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