風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年9月6日で以って、Kindle本「少年詩集 鳶の歌」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリで、「少年詩集 鳶の歌」と検索すれば、すぐに出て来ます。右サイドバーのバナーよりも至れます。僕のペンネームは柴田哲夫です。価格は500円ですが、Kindle Unlimited版を追加金無料で購入できます。多くの方のご購読を願っております。

ストライクゾーン

 堀江敏幸の小説「めぐらし屋」を読み了える。
 彼の小説は以前、「雪沼とその周辺」「いつか王子駅で」「おぱらばん」「河岸忘日抄」と読んでおり、さいごの「河岸忘日抄」は、以前のブログ「サスケの本棚」の2009年11月7日の記事にアップした。



めぐらし屋
 「めぐらし屋」は、新潮文庫、2010年7月1日・刊。
 せせこましい世に、これはのんびり感傷的で、まどろっこしいくらいだった。購入当時は、仕事が現役で、僕は読み進められなかった。7年前にリタイアして、無職の日々を送っており、ようやく読み了えられた。僕の広いストライクゾーンに、入ったのだろうか。
 堀江敏幸は、三島由紀夫賞、芥川賞、他の文学賞を総なめし、各賞の選考委員も務めている(Wikipediaに拠る)。
 「めぐらし屋」というのは、主人公・蕗子さんの独居して亡くなったばかりの父の、職業ではないなりわいで、「ホテルや旅館ではなくて、何日か寝起きできるようなところを紹介する」という内容である。離婚して若く亡くなった母、未完の百科事典を訪問販売するなどした父、の秘密を蕗子さんは知るようになる。蕗子さんが「めぐらし屋」を継承する場面で、小説は決着する。
 この本を、ふと文庫本棚から取り出して読んだのだが、本にはいつか読まれる巡り合わせの時が来るものである。



 角川書店「増補 現代俳句大系」第14巻(1981年・刊)より、19番目の句集、中村苑子「水妖詞館」を読み了える。
 今月21日の記事、細見綾子・句集「技藝天」に次ぐ。
概要
 原著は、1975年、俳句評論社・刊。高屋窓秋・序、139句、著者・あとがきを収める。第1句集。
 中村苑子(なかむら・そのこ、1913年~2001年)は、結核病により大学国文科・中退、1932年に結婚した夫が、1944年に戦死した。その後、作句を始め、石田波郷の「鶴」、水原秋桜子の「馬酔木」、日野草城の「青玄」、久保田万太郎の「春燈」と移った。
 1957年、高柳重信(細見綾子・句集「技藝天」で、読まずに飛ばしたと書いた俳人)の招請によって「俳句評論」の創刊に参加、高柳重信・死去(1983年)後に終刊、以後・無所属。
感想

 「水妖詞館」は、無季ながら定型を守ろうとしている。旧かな、古典文法であり、「や」「かな」の切れ字も使う。
 どんなに写生や直叙から離れても、定型を守る1行詩である。語の組み立てが外れていない。僕の読書のストライクゾーン内である。女性の心情も読み取れるようだ。
 非定型、分かち書きの俳句に、僕はトラウマがあるようだ。高校文芸部員の時、短期留学のアメリカ人高校生が部室に来て、作った俳句を読んでくれと言った。半世紀以上、前の事である。3行詩だったと記憶する。その中の1語が難しく、英和辞典にもなくて、とうとうその句を読み解けなかったのだ。
引用
 以下に5句を引く。
跫音や水底は鐘鳴りひびき
撃たれても愛のかたちに翅ひらく
逢へばいま口中の棘疼き出す
若き蛇芦叢を往き誰か泣く
山に立つ誰彼の忌や黒き馬
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。




 このブログを読んでもらって、わかるだろうか、僕の読書のストライクゾーンはかなり広い。
 「ストライクゾーン」とは、あるサイトの「好き嫌いの『許容範囲』のことを、近年ではストライクゾーンと呼びます」の言葉が、適切である。
 文学の最短の俳句では、芭蕉、一茶、蕪村から虚子、現代俳句まで読んでいる。前衛的な俳句には、良さのわからない句もある。短歌では、「万葉集」から八代集、戦後短歌グループ、岡井隆、佐佐木幸綱、さらに塚本邦雄の1部、まで読んでおり、最近の新鋭歌人にも関心がある。
 詩では、古代ギリシャ詩(ホメロスは未だだが)、「詩経」(海音寺潮五郎の訳注で)、唐詩の一部、新体詩、朔太郎から戦後詩まで。戦後詩の「荒地」「櫂」グループくらいまではわかるが、僕が戦無詩と呼んでいるそれ以後はわかりにくい。
 小説も文庫本を主にして、たくさん読んできた。20年くらい前か、家の文庫本(既読)を売り払った際、ブック・オフは400冊を引き取ったが、引き取られなかった本も同数くらいあった。自然主義からプルースト(「失われた時を求めて」完読)の心理主義、マルケスのマジック・リアリズムまで。ただしシュールリアリズムは、小説と合わない。ボール判定の本もある。
 ストライクゾーンが広いという事は、ある意味、ブレるという事である。芯が通って、一本道を貫く事が好きな人には、好まれないだろう。あれも良い、これも良い、という傾向になる。落語で、饅頭を2つに割ってどちらが美味しいか、と問うた子供のように、どれも文学は美味しいのだ。
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母の日の妻のために、大輪カーネーション5本を買って飾った。


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