風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年9月6日で以って、Kindle本「少年詩集 鳶の歌」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリで、「少年詩集 鳶の歌」と検索すれば、すぐに出て来ます。右サイドバーのバナーよりも至れます。僕のペンネームは柴田哲夫です。価格は500円ですが、Kindle Unlimited版を追加金無料で購入できます。多くの方のご購読を願っております。

タイニー・ストーリーズ

 山田詠美の小説集「タイニー ストーリーズ」より、2回めの紹介をする。
 同・1回めは、今月21日の記事にアップした。



 今回は、「宿り木」、「モンブラン、ブルーブラック」、「GIと遊んだ話(二)」、「微分積分」、「ガラスはわれるものです」の、5編を読んだ。
 「宿り木」は、「蝶々の纏足」のような主従関係にあった二人だが、呪いの能力に気づいたらしい従者が、シクラメンの鉢植えで主人を病院に見舞ったりして、呪い殺してしまう。最後の場面が戯画的で気になる。
 「モンブラン、ブルーブラック」は、秘書に雇った娘の身の上話を、繰り返し小説に仕立てる作家の、業を描く。僕もモンブランの万年筆にブルーブラック(あるいはロイヤルブルー)のインクを使っている。
 「GIと遊んだ話(二)」の老兵の、ハノイ・ヒルトン(北ベトナムのホアロー収容所のこと)の経験談を、僕は本物だと思う。
 「ガラスはわれるものです」は、劇的に見せ合うカップルが、裏で保険事項を掛けながら、盛り上がるストーリーである。


 タイニー ストーリーの訳に、小編小説という語を思いついた。検索してみると、前例がある。小品ではなく、短編小説と掌編小説の中間として、このスタイルの小説にふさわしい訳と僕は納得している。
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写真ACより、「ケーキ」のイラスト1枚。



 山田詠美の短編小説集「タイニー ストーリーズ」より、初めの5編を読み了える。
 購入は、昨年12月25日の記事、メルカリより4冊を買う、で報せた。



 題名のtinyは、とても小さい、という意味である。tiny storiesは英和辞典にないけれども、その語でググると、それを副題とした原書の写真が何冊か出て来るので、通用している語である。
 短編小説は、little storyとされているようで、tiny storyはそれよりも短く、日本語で原稿用紙数枚くらいの掌編小説よりも長いようである。

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 文春文庫、2013年・刊。帯の「アソート」は、組み合わせ、品揃え、の意味である。
 初めの「マービン・ゲイが死んだ日」は、若くして胃癌で亡くなった母親の遺品のメモに不可解な数行があり、それが解かれる話である。
 「電信柱さん」は、動けないが五感を持つ電信柱の独白と言う、奇妙な展開である。かつて森瑶子は、「何でも小説の主題になる」と宣って商品券を主題とする短編小説を書かされた。山田詠美の小説も熟達して、何でも主題にできる域に入ったのかも知れない。
 「催涙雨」では、アルコール中毒で入院した夫を見舞う妻が、入院患者たちと親しくなり、不能だという患者に口淫するまでになる。

 「GIと遊んだ話(一)」では、土曜日のラブホテルがどこも満杯で、不思議な古い旅館(元は遊女屋?)に明日出航するGIと、多美子が泊る。その後、多美子は捜しても捜してもその宿を見つけられない。
 「百年生になったなら」は、息子と娘、夫と姑にないがしろにされる、パート勤めの主婦が主人公である。老女の万引き事件を目撃して目覚め、100歳になったら犯罪を重ねようと決め、準備を始めたところ、異変に気付いた家族に大事にされ、翻意するに至る。素直な性格の主人公の、心の移り変わりが面白い。
 ユーモアあり、深刻あり、サスペンス風ありと、彼女のペンは自在である。




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