風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

ヒロイン

 先の6月29日の記事、届いた2冊を紹介する(13)で報せた内、青木祐子の小説「これは経費で落ちません! 7」を読み了える。リンクより、過去巻の感想へ遡れる。


これは経費で落ちません 7
 集英社オレンジ文庫、2020年5月25日・刊。244ページ。このシリーズも巻を重ねて、7冊めとなった。
 経理部員・森若沙名子をヒロインとする、サラリーマン(ウーマン)小説に、恋を絡める。
 4話にエピローグの構成で、1話は総務部の平松由香利が、ゾンビのコスプレパーティで出会ったバツイチ男性と意気投合し、結婚する事になる。相手はアルバイトの他、主夫となるが優しく、総務課長になる平松由香利は納得し幸せそうである。経理部主任となる森若沙名子の、複雑な心境も描かれる。
 2話は、主人公の勤める天天コーポレーションと合併する、トナカイ化粧品の経理担当・槙野徹の疑惑を巡る話である。槙野徹は不相応な腕時計をしていたり怪しまれたが、3年前に経理担当になってより、会社の不正経理を正して来た、正義漢だった。しかし彼は疲れて、合併が済んだら、退職を願っている。沙名子は慰留するのだが。

 3話は、不倫関係にある勇太郎(独身)と織子(若い夫あり)の二人に、沙名子が解決へ手を出すストーリーである。ショールーム担当だった千晶が、契約社員より正社員の総務部員へ登用となるけれども、苦労も増える挿話を交える。
 4話は、沙名子の恋人・太陽が東京本社より大阪営業所へ転勤となり、交際が遠去かってしまう話である。おいおい、ヒロインがアンハッピィな仕舞い方かよ、と読者の期待を裏切る。続巻でどうするのか、読みたい事である。
 エピローグは経理部の若手・真夕の視点で描かれる、しばし後の経理部の状況である。続巻が出るとして、何冊まで行くのだろう。心配であり、楽しみである。



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 服部真里子・第2歌集「遠くの敵や硝子を」を読み了える。
 なお表紙写真は、トリミングの都合で、上下端が少し切れている。
 今月7日の記事
「入手した4冊(2)」の初めで、入手を報せた。
 (なお同・記事の幸田玲「再会」は、既に読んだ小説だった)。
概要
 上のリンク記事で、前ブログ「サスケの本棚」に載せた、第1歌集「行け広野へと」の感想のリンクを挙げないと書いたけれども、名前を訂正の上、ここに引いて置く。購入記事へのリンクもある。2015年4月6日の記事、
服部真里子「行け広野へと」である。
 4年ぶりの第2歌集は、2018年10月17日、書肆侃侃房・刊。
 普通より縦長の本で、171ページ、291首を収める(1ページ2首)。
感想
 論争の発端となったという、「水仙と盗聴」の歌など、よくわかると思う。
「歌壇」2017年5月号の感想の冒頭部で、僕の理解を述べた。むしろ男性に少し媚びていると思う。
 若者にとって厳しい社会で、歌壇のヒロインとして、彼女は生き抜く決意をしたようだ。
 芸術を取るか生活を取るかの岐路で、彼女は若くして芸術を取ったようだ。
 彼女が将来、不幸に成らない事と、新しい歌を生み続ける事を、今の僕は願うばかりだ。
 なお彼女は、今年10月10日のツイートで、治療に入る旨を告げている。

引用

 以下に7首を引く。
夕顔が輪唱のようにひらいても声を合わせるのはいやだった
見る者をみな剝製にするような真冬の星を君と見ていつ
水仙と盗聴、わたしが傾くとわたしを巡るわずかなる水
父を殺し声を殺してわたくしは一生(ひとよ)言葉の穂として戦ぐ
言葉は数かぎりない旗だからあなたの内にはためかせておいて
地下鉄のホームに風を浴びながら遠くの敵や硝子を愛す
もう行くよ 弔旗とキリン愛しあう昼の光に君を残して



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