三浦哲郎・短編小説集「愁月記」(新潮文庫、1993年・刊、7編)より、4番目の「夜話」を読み了える。
 今月3日の記事、
同「からかさ譚」に次ぐ。リンクより、過去記事へ遡り得る。
概要
 16ページの短編ながら、4章(無題)に別れている。
 飼い犬のブルドッグ「ボス」の老いて、死に至り、遺骨を八ヶ岳山荘の近くに埋めての、異変譚までを描く。
 作家の親族、家族への情愛は、飼い犬にまで及び、冷静ながら親しく書かれている。
感想
 詩人・鮎川信夫は「(戦死者の)遺言執行人」を名乗ったが、三浦哲郎もまた1族の成り行きを小説に遺したといえるだろう。もっともその他のフィクション、伝記的な作品もある。僕が読み進められなかったからかも知れないが、「夜の哀しみ」(新潮文庫、上・下巻)など、なぜ不倫のストーリーを描いたのか分からない。
 エピソードの1つに、フィラリア予防は気慰めくらいにしか効かない、というのがある。僕は2代の犬を飼ったが、2匹目はフィラリアで死んだ。知識がなく、外飼いの犬は9割くらいフィラリアに罹ると知らなくて、予防をしなかった。エピソードにわずか、慰められる。しかし医学の発展があるから、20年くらい前の事ながら、あるいは救えた命かも知れない。それ以来、ペットを飼わせてもらえない。
 山荘の犬の墓や写真の異変譚に、霊魂の存在を信じているような所がある。神仏は信じていなかったようだが、神なき信仰というものはあったかも知れない。
 家族に可愛がられて生き死にした、ペットの物語である。
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写真ACより、「キッチングッズ」のイラスト1枚。