山田詠美の小説集「タイニー ストーリーズ」より、2回めの紹介をする。
 同・1回めは、今月21日の記事にアップした。



 今回は、「宿り木」、「モンブラン、ブルーブラック」、「GIと遊んだ話(二)」、「微分積分」、「ガラスはわれるものです」の、5編を読んだ。
 「宿り木」は、「蝶々の纏足」のような主従関係にあった二人だが、呪いの能力に気づいたらしい従者が、シクラメンの鉢植えで主人を病院に見舞ったりして、呪い殺してしまう。最後の場面が戯画的で気になる。
 「モンブラン、ブルーブラック」は、秘書に雇った娘の身の上話を、繰り返し小説に仕立てる作家の、業を描く。僕もモンブランの万年筆にブルーブラック(あるいはロイヤルブルー)のインクを使っている。
 「GIと遊んだ話(二)」の老兵の、ハノイ・ヒルトン(北ベトナムのホアロー収容所のこと)の経験談を、僕は本物だと思う。
 「ガラスはわれるものです」は、劇的に見せ合うカップルが、裏で保険事項を掛けながら、盛り上がるストーリーである。


 タイニー ストーリーの訳に、小編小説という語を思いついた。検索してみると、前例がある。小品ではなく、短編小説と掌編小説の中間として、このスタイルの小説にふさわしい訳と僕は納得している。
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写真ACより、「ケーキ」のイラスト1枚。