風の庫

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マジック・リアリズム

 江國香織の小説、「なつのひかり」を読み了える。
 彼女の小説は、先の6月14日の記事、「間宮兄弟」を読む、以来である。



なつのひかり
 「なつのひかり」は、集英社文庫、1999年1刷、2000年8刷。本文326ページの長編小説である。
 バーの歌手とウェイトレスの2つのアルバイトをしている「私」を、隣(マンションらしい)の薫平君が、逃げたヤドカリを探して現れる。
 「私」栞には幸裕という兄があり、兄にはパトロンの順子、妻の遙子と娘の陶子とベビーシッターのなつみ、愛人のめぐみがいる。遙子は自身にもわからない探し物に家出し、フランスにいたりする。
 ヤドカリのナポレオンは神出鬼没で人々をかき回し、兄も失踪する。
 結局「私」は、ヤドカリの呪いを解き、兄と遙子を見つけて、順子・めぐみとの関係を解消させる。
 ヤドカリが人を導いたり、モーテルの部屋からフランスの海岸へ瞬間移動したり、荒唐無稽なストーリーながら、描写は細密で、不気味さを感じさせる。
 僕はマルケスの「百年の孤独」など数冊を読んだが、「なつのひかり」は、マジック・リアリズムという呼び方がぴったりだ。ほぼ同時期に出た、大江健三郎「燃えあがる緑の木」3部作より、うまいくらいだ。ファンタジー出身も強味となっただろう。このマジック・リアリズムが江國香織に、どれだけ根づいたかは別として。


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グアテマラ伝説集
 文庫本棚より、岩波文庫のアストゥリアス「グアテマラ伝説集」を取り出して、読み始める。
 ミゲル・アンヘル・アストゥリアス(1899年~1974年)は、グアテマラ生まれ、インディオの血を引く混血児である。1967年、ノーベル文学賞受賞。
 世界的にラテンアメリカ文学が流行した時代があり、日本でも翻訳され、何種類かのラテンアメリカ文学全集が出版された。それらは古書界でも高価で、僕は買えなかった。
 ガルシア・マルケスの「百年の孤独」を始めとする新潮社・刊の何冊か、集英社版「世界の文学」でコルタサル「石蹴り遊び」など何編か、を読んだ記憶があるだけである。
 アストゥリアスの作品は初めてである。マジック・リアリズムの創始者の1人とされる。
 この岩波文庫は、2009年、第1刷。定価:720円+税。
 9編を収め、僕は初めの「グアテマラ」、「「金の皮膚」の回想」を読み了えた。
 「グアテマラ」は、インディオ文明、スペインの征服時代、現代のグアテマラ、と積み重ねられた都市と文明を語る。
 「「金の皮膚」の回想」は、古代文明の伝説を基とする幻想譚と言って良いだろうか。フランスへ亡命して、マヤ族の創世神話、年代記を、仏訳からスペイン語に翻訳するなど、古代メソアメリカの研究の上に、書かれた。
 このあと、7編の伝説集が続く。


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