風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

ユーモラス

 福井県詩人懇話会・発行のアンソロジー「年刊 詩集ふくい 2019 第35集」を読み了える。
 入手は、先の10月29日の記事、入手した2冊を紹介する(7)にアップした。



 「同 2018」を読む、は昨年11月6日の記事にアップした。リンクより、過去号へ遡り得る。


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 このアンソロジーには、53名61編の詩と、執筆者名簿、「’18 ふくい詩祭 記録」、あとがきを収める。詩の執筆者は、漸減傾向である。ただし高校生3名が3編を寄せている。
 同・2018の感想で述べたが、観念的な作品が多いようだ。リアリズムで詩を書くには、社会はあまりに悲惨である。
 とぼけるか、家庭内のトリヴィアルな事を描くしか、観念化の道を逃れる方法はないのだろうか。
 A・幸代さんの「手をのべて」が内省的である。
 U・千枝美さんの「新しい波」は自身の目の老化をユーモラスな筆致でえがく。

 51ページに渉る「’18 ふくい詩祭 記録」では、基調講演、シンポジウム共に、人物・発言が高度だった。
 挿入の写真は、1枚を除いて総て、カメラマン役の僕が撮ったものである。




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 今月28日の記事「届いた2冊(2)」で報せた内、詩誌「水脈」62号をほぼ読み了える。
 ある政治的背景を持っており、同人詩誌とは名乗っていない。
概要
 15名23編の詩、俳句同好会の11句、N・えりさんの小説「青山さんのこと」、随筆2編、通知報告欄・等がある。
 生活詩が多く、先の豪雪が多く歌われている。宗教色のある作品もある。
感想
 Y・知一郎さんの「“きだらいの”おばさん」は旧作らしいが、幼くより親しんだおばさんが、老いて亡くなり、偲ばれるに至る細部が重ねられ、しみじみとする作品である。
 M・祐子さんの「春の芽吹き」は、大雪との闘いを描いた末に、「雪で身体をきたえたばあさん/また長生きするかと深いため生き」とユーモラスに厭世的である。
 M・あき子さんの「くまバチ」は、「私の畑には/くまバチが一匹います」と始まり、「この春もスモモの花に来ました/私が来たねと言うと/夫はうんと言いました」と締め括って、自然と共生する穏やかさを表わす。
 N・としこさんの散文詩「クローバの・・・・・」は、幼馴染みだった「えいちゃん」との交流とその後、自分が四歳の時に出征し亡くなった父への思いを交えて、転変する生を抒情した1編である。


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 昨日に紹介した2冊の内、A・幸代さんの個人詩誌、「野ゆき」vol.8を読み了える。
 
同・vol.7は、昨年10月21日の記事にアップした。
概要
 自身が年1回くらいの発行、と話していた。他に福井県詩人懇話会・刊の年刊アンソロジー「詩集ふくい」に発表の場がある。
 この詩誌は、2017年冬・と記されて発行されている。
 「ありがとう」、「ひっくり返る」、「雀」、「落ち葉」、「遠い約束」の短い詩5編が、横長1ページに1編ずつ収められている。
感想
 彼女は僕より少し年上な、芯のしっかりした、誠実な方である。僕のように、いつまでもあちこち跳び回ってはいない。誠実さを表わそうとすると、自分の中の歪みを意識して、ためらったり、疑念を持ったりしてしまう。
 それを表わせるのは、彼女が大人なのだろう。その誠実さは、娘さんにも継がれて、詩「ありがとう」になっている。
 時事を思わせる「雀」、生を思う「落ち葉」、艶のある「遠い約束」、いずれも佳品である。
引用

 ユーモラスで、幸せそうな、「ひっくり返る」全編を引く。

  ひっくり返る

やんちゃなくせに
むくれてひっくり返る
取扱説明書が欲しいものだと
娘と話していた
敵もさるものひっかくもの
予約までして借りた本を
珍しく熱心に読んでいた
「かあちゃんトリセツ」
ひっくり返るのはこちらの方だ




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