短歌新聞社「岡部文夫全歌集」(2008年・刊)より、第4歌集「魚紋(ぎよもん)」を読み了える。
 
第3歌集「寒雉集」は、先の11月26日の記事にアップした。
概要
 原著は、「寒雉集」と同じ1946年、3ヶ月をおいて発行された。
 486首と著者「巻末小記」を収める。青垣会・刊。
感想
 結社「青垣」と師の橋本徳寿の主張として、「現実の相に根を張り、自己を強く打ち出す」(三省堂「現代短歌大事典」2004年・刊に拠る)があった。
 写生にも主情にも徹せず、生活詠にも自然詠にも徹せず、読んでいてもどかしい思いを多くした。彼が後年、どのように発展して行ったかは知らないのだが。
 またその半ばする所を詠んだ、「虹鱒養殖場」の連作には、圧倒される。
 専売局の職員だったので、数少ない職場詠の、塩の運び屋を検挙する連作はリアルだった。
引用

 以下に7首を引用する。
闇市に飛魚(とび)青青と並べたり氷見(ひみ)の海よりはこべるらしも
綿を売りけふいくばくの金あれば米を買ひこゑあげてをさなごの食ふ
市役所の暗きにかがむいくたりか抑留者名簿を指によみつつ
二升余の塩をさげたるまづしきは吾がみのがさむゆけと押しやる
涌きかへり播餌を襲ふ虹鱒の激(たぎ)のごときを茫然とみぬ
山なかの寒きひかりに朴の落葉檪の落葉降りつもりたり
しづかなる蛹となりし毛虫ひとつ枳殻(きこく)にみつつかへすあゆみを
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写真ACの「童話キャラクター」より、「白雪姫」の1枚。