思潮社・現代詩文庫242「続続 荒川洋治詩集」より、「詩集<北山十八間戸>全篇」を読み了える。
 先行する、「詩集<実視連星>から」を読む、は先の10月20日に記事アップした。



 実は僕は、詩集「北山十八間戸」が鮎川信夫賞を受賞した時、書店より取り寄せて読んでおり、2017年4月5日の記事にアップした。


 それより、どれだけ読解が進んだかわからない。彼は技術の威嚇論によって戦後詩を切り捨て、IQ高官論によって同輩詩人を切り捨て、詩集「あたらしいぞわたしは」や「ボーセンカ」シリーズで、孤独な道を進んだ。詩「かわら」で「僕もまた政治家なので/文学も出世の手段としか考えない」と語るに至る。
 「北山十八間戸」の冒頭「エンジンについて。/表現の構成要素について。」は、彼の表現意欲の発動点と、二重性格的な面を(「グラムの道」には「性格はひとつになりたい」の1行がある)、表したのだろう。「どこにでも小さな商店のある日本」と一人の僧による「中世の救済院」、ともに人の世のあわれだろう。
 「外地」では竹島や色丹島を、政治論ではなく詩化しようとする。末尾「和傘をひらく」と古い日本寄りを暗示するようだ。
 「赤江川原」は中世の、「近畿」は戦時中の占領地の、日本的心情を、現代の自分が感じているようだ。
 境地は1種清しいらしく、「錫」などに社会的に向日的な行もある。
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。