風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

亡夫恋

 先の9月29日の記事、入手した5冊(4)で紹介した内、結社歌誌「覇王樹」2019年10月号をほぼ読み了える。
 9月号の感想、結社のホームページ、10月号の僕の歌、3つにリンクを張ったので、是非ご覧ください。

 

 引用8首に寸感を付して、感想としたい。
ボランティア呼ばるる会に入会す わたし暇です 必要ですか?
 K・悦子さんの「必要ですか?」より。必要とされれば、ボランティア活動もする、積極さ。
何処へ行く当てなどないがふらふらり気の向くままのネット散歩は
 Y・美加代さんの「夏の妖精」より。先の歌と対照的に、ネット散歩に興じている。籠もりはしない。
日光彫り飾り絵皿は飾られずお盆になってコーヒーが来る
 K・いつもさんの「はまぐり楼閣」より。現代生活の、豊かなある場面を詠む。
停電に部屋を手探りする吾はまなこ退化の深海魚めく
 K・恵美さんの「熊野川」より。「~めく」という、短歌の比喩に僕は気付いた。
梅雨寒に君のジャージを羽織りたりあの日の会話も蘇りきぬ
 S・公子さんの「納戸の異界」より。亡夫恋の歌として、具体的である。

うずくまるように従きいる夏至の影目だけを晒し若き女(ひと)過ぐ
 T・律子さんの「夏への助走」より。短い影を比喩で表し、ミステリアスな1首。
土耕し今年も植えた野菜苗 母に似てきたわたしがみえる
 N・悦子さんの「ここほれわんわん」より。他より安易に窺い得ぬ、苦労と楽しみがある。
風になりし君がひそかに窓叩き元気かと問う昼の幻覚
 N・ま寿子さんの「森林浴」より。親しかった亡き人への思いが、幻覚を呼ぶ。
0-73
写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。




「覇王樹」8月号
 所属する結社歌誌「覇王樹」2019年8月号を、作品中心に読み了える。
 到着は先の7月29日の記事、同・8月号が届くで報せた。7月号の感想、覇王樹社のホームページ、僕の作品、3つのリンクを張ってあるので、ご覧ください。
概要
 2019年8月1日付け・刊。40ページ。編集人・佐田公子。
 今年の覇王樹賞20首と、花薔薇賞1首が、決定・発表された。
感想

 覇王樹賞は、K・恵美さんの「廃校」20首。彼女は結社「林間短歌会」で研鑽を重ねた方で、実力はある。また連作のまとめ方も上手で、賞を狙える方だ。
 次席以降の方も、読んでみれば力作である。
 T・美香子さんの「日本歌人クラブ会報「風」203号」より「記憶のかけら」5首、「短歌往来」5月号より「波照間島」8首が、転載された。
引用
 2首に寸感を添えたい。共に同人の特選欄?にあたる「爽什」10名からである。
 N・ま寿子さんの「ピリオド」6首より。
ピリオドをいまだ打てない空間に君と紡ぎし歳月浮かぶ
 口語調も取り入れて、優れた亡夫恋と読んだ。間違えていたら、済みません。
 K・恵美さんの「夢二の絵」6首より。
団らんを支えし鍋も大皿も終活の名に次つぎと消ゆ
 老夫婦のみ、あるいは独居老人となった者の切なさが、具体的に迫ってくる。




 昨日に続き、花神社「茨木のり子全詩集」より遺稿詩集「歳月」の、2回めの紹介をする。
 遺稿の内、第2章までは、詩の順番(目次)のメモが残されたが、詩稿の箱には小さく「Y」(夫のイニシャル)とだけ書かれており、詩集名は編集した甥の宮崎さんが付したという。
 第2章は、16編。回想の詩が多くなって、亡き夫を身近に感じる詩はすくない。
 しかし、ここに引けないエロチックな作品「獣めく」もある。
 「殺し文句」より。「「これはたった一回しか言わないからよく聞けよ」/…/こちらは照れてへらへらし/「そういうことは囁くものよ」とか言いながら/実はしっかり受け止めた/今にして思えば あの殺し文句はよく利いた//…そう言えば わたしも伝えてあった/悩殺の利き台詞  二つ三つ/…」。本心の愛を生前に伝え合った、夫婦の姿がある。
 「町角」より。「…/待合せのときには/なぜあんなにもいそいそと/うれしそうに歩いてきたのか//…あちらこちらの町角に/ちらばって/まだ咲いている/あなたの笑顔//…いえ/いま咲きそめの薔薇のように/わたくし一人にむかって尚も/あらたに ほぐれくる花々」と、夫の笑顔を幻に視ている。
 「急がなくては」では、「あなたのもとへ/急がなくてはなりません」と語り、「梅酒」では没後10年を経てようやく、生前に仕込んだ梅酒を飲む心境になっている。
 亡夫恋の最上の詩が、ここにある。
菊3
フリー素材サイト「Pixabay」より、菊の1枚。




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