風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

Kindle本の第1歌集「雉子の来る庭」をKDPしました。右サイドバーのアソシエイト・バナーよりか、AmazonのKindleストアで「柴田哲夫 雉子の来る庭」で検索して、購入画面へ行けます。Kindle価格:250円か、Kindle Unlimitedで、お買い求めくださるよう、お願いします。

人生

 県内を中心とした詩誌「水脈」の、69号を読む。
 贈呈の到着は、今月25日の記事、届いた3冊を紹介する(10)にアップした。

 リンクには、同68号の感想へ、リンクを貼ってある。

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 詩では、N・としこさんの「掃く」に惹かれた。庭の落葉掃きの生活詩なのだけれど、4章は起承転結を成し、第3章では人生の感慨が述べられる。
 A・比佐恵さんの「栗を拾う」では、「…廃道の/どん詰まりに/三本の山栗の木がある」と始まって、一人の栗拾いが楽しげである。思いは広がってゆく。
 かつての代表の、I・信夫さんの名前がなく、心配である。

 毎号、小説を載せている、N・えりさんの特集(小説3編、同人の感想エッセイ9編)がある。僕は詩誌の小説が、正道と思えなく、読んで来なかった。
 またもう1つの特集に、「葵直喜さんを偲んで」6編がある。僕とは触れ合いが少なく、ほとんど読まなかった。「読み部」の自称がすたる、と反省した。



 

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 宇野なずき・歌集「透明な砂金」Kindle Unlimited版を読み了える。
 入手は今月5日の記事、入手した4冊を紹介する(11)にアップした。
 

 また2017年・刊の第1歌集「最初からやり直してください」は、2018年6月15日の記事にアップした。


宇野なずき 透明な砂金
 宇野なずきは、1989年・生、ネットを主に活動している。歌集「透明な砂金」は、2020年11月・刊。20首連作×7編。
 歌の言い回しは上手である。人生の実感を重んじる伝統と合わないかも知れない。
 現在の人に刺さる歌が多い。また現在の風物を取り入れている。

 以下に7首を引く。
はじまりの合図に鳴った銃声が頬をかすめて二の足を踏む
降ってきた 誰かのために走れなくなってそれから煮物がうまい
こうやって思い出さない日が増えて普通に暮らす未来がこわい
燃えている川の流れに逆らうと賢い猿に同調される
アルバムに保存されると過去形になるから置いていかないでください
終電で退職届の下書を引き止めてくるソシャゲの通知
きっとこの努力は報われないけれどバーベキューとか楽しかったね




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 9月8日午前10時より和田公民館にて、和田たんぽぽ読書会9月例会が持たれた。
 8月はお休みなので、7月15日の同(7)以来だった。




 今回の課題図書は、三浦しをん「愛なき世界」だった。僕は既に、7月24日の記事に、感想をアップした。


愛なき世界
 まずA・Tさんより連絡があり、県合同読書会の中止等の報告があった。またT・Rさんはやむなく欠席、O・Tさんは1時間遅れるという事で、5名での開始となった。司会は初めての僕だった。

 A・Kさんの感想。良い人ばかりで、食堂の藤丸君がわかりやすい。「動物も植物も人間も光を食べて生きている」のフレーズが印象的だった。
 A・Tさんの感想。藤丸君が献身的である。題名に引っ掛かる。
 I・Yさん。知らない世界を垣間見る。小保方さんの事件を思い出した。
 M・Mさん。作者はまだ若く、人生の見方が深い。感情移入できる。筆力が凄い。
 僕の感想は、先のブログ記事の通りである。皆が松田教授の態度を評価するけれども、僕は人情噺に落ちていると思う。
 0・Tさん登場。忙しすぎて、3分の1くらいしか読んでいない。読みやすいけれども、という感想だった。T・Rさんの文章を僕が預かった。

 秋の文学散歩の件を話し合った。次回の課題本、中脇初枝「神に守られた島」を分け合って、11時半過ぎに散会した。



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 角川書店「増補 現代俳句大系」第15巻(1981年・刊)より、14番めの句集、鷲谷七菜子「花寂び」を読み了える。
 先行する高木晴子・句集「春居」は、今月17日の記事にアップした。



 原著は、1977年、牧羊社・刊。1969年~1976年の394句、著者・あとがきを収める。
 鷲谷七菜子(わしたに・ななこ、1923年~2018年)は、1942年より水原秋桜子「馬酔木」に投句、1946年・山口草堂「南風」に入会した。1984年「南風」主宰、2004年・辞して名誉顧問となる。
 上方舞の楳茂都流3代家元・陸平と宝塚スター・吉野雪子の長女として生まれながら、生後間もなく祖父に引き取られ、人生・恋愛に挫折がありながら(巻末・対談より)、気品ある句を創ったとされる。
 2013年、全句集(角川書店・刊)あり。
 僕はこれまでよく分からなかった、1969年~1976年頃の、社会の心情的風潮に初めて接した気がした。以下の5句には引かなかったけれど、「沙羅の花雲霧は末の散りやすし」(1970年)、「雪の世に火を焚いてゐるうしろかげ」(1976年)等、まさに花寂びの句境と言える。


 以下に5句を引く。
髪の根を解くや夜の雪とめどなし(1970年)
かなかなや夕日を知らぬ谿の村(1971年)
紫雲英田のびつしり村に嫁来る日(1972年)
閉してなほ湖光の障子さくらどき(1973年)
ひかりみな湖にひそみて梅の青(1975年)

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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。



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詩集

 今月1日の記事
「贈られた2冊と届いた1冊」で到着を報せた3冊の内、初めの1冊、黒田不二夫・詩集「キャベツの図柄」を読み了える。
概要
 黒田さんは、福井県に在住、長く教職にある。教員、同・経験者が同人の詩誌、「果実」に参加している。
 第4詩集。2017年9月20日、能登印刷出版部・刊。
 帯、カバー、85ページ。4章(Ⅰ~Ⅳ)に分け29編と、あとがきを収める。
感想
 第Ⅰ章の冒頭「ネコ派 イヌ派」では、「自分の詩はネコ派でありたい」と述べる。
 「キャベツの図柄」では、全5連の第4連で、次のように書く。
たかが野菜と言うなかれ
ぴっちりと葉を巻いて育つキャベツ
このようにぴっちりとした
生き方ができるか
 キャベツの断面に、人生を想う、優れた作品である。
 第Ⅱ章に入って、「箱をつぶす」で、つぶした箱を様々に述べるが、箱とは現役教員のプライドだろうか。
 第1章、第Ⅱ章では、物に寄せて人生を描いているようだ。

 第Ⅲ章は、想像力を用いて世情への批判のようだ。「銀色の鳥」では、小都市の路上に降り立った銀色の鳥、「日野川沿いの田んぼに」では、田んぼに浮かぶ軍艦を、出現させている。
 第Ⅳ章では、家族との関わりを描いて、老いに入る境地を描く。
 「母の箱」より、1部を引用する。
箱に貯めていたものは
母であった証
母であろうとした証
母でありたいために捨てざるをえなかったもの
今 介護施設にいる継母
 「あとがき」で「人生最後の詩集になるかも知れないという思いは強い。」などと言わないで、これからも長く活躍してほしい詩人である。


 

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