風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年2月20日で以って、Kindle本・短編小説「底流」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
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個人全訳

 谷崎精二・個人全訳「ポオ全集」(春秋社)第2巻(1979年、新装版・7刷)より、4回めの紹介をする。
 同(3)は、今月7日の記事にアップした。



 今回は、「天邪鬼」「ペスト王」「ボンボン」の3編、121ページ~166ページの、46ページ分である。
 「天邪鬼」は、長広説の果てに、天邪鬼な動機によって殺人を告白し、明日の死刑を待つ身である事を告げる。「黒猫」以来の完全犯罪と、殺人者の自滅的行為による発覚、というテーマだろうか。話す事が信用されないので、かえって力説する、前置きが長い。
 「ペスト王」は、14世紀のペストのパンデミック頃の話である。廃墟の葬儀屋での酒盛りに、2人の船乗りが飛び込むが、逃げ出す事を得た。今の新型コロナウイルス感染の対策になる事は、書かれていない。
 「ボンボン」は、料理店主・哲学者のピエル・ボンボンが、エピクロスの果てと自称する悪魔と、魂の売買をしそうになる。ボンボンがあまり酔っているので、悪魔は取り引きを控えるが、ボンボンはランプの落下によって亡くなる。多くの歴史的偉人が、才能と金銭等を代償に、魂を悪魔に売ったと述べる。ポオのアルコール依存の弁明めいている。
シャンデリア
写真ACより、「シャンデリア」の写真1枚。


 

 谷崎精二・個人全訳「ポオ全集」(春秋社)第2巻より、3回めの紹介をする。
 同(2)は、今月2日の記事にアップした。


 リンクより、関連過去記事へ遡れる。

 今回は、「奇態な天使」「使いきった男」「息の紛失」、3編を読んだ。3編で43ページである。
 「奇態な天使」はビヤ樽の胴、小樽の足でできた羽根のない、自称・天使に、酒酔いの「私」が振り回される話である。天使を含め、一切の信仰を僕は持たないので、内容には言及しない。酔っ払いの戯れ言めく(悪い冗談とも書いた)のが残念である。
 「使いきった男」は、蛮族と戦って体のほとんどが、人工品になった(本体は小さな束のみである)、名誉陸軍少将を描く。人工器官の発展、あるいはiPS細胞の発見を予告したような面は認める。
 「息の紛失」は、息を失くした男が不運の果てに、生きたまま埋葬されるが、掘り出される話である。「生きたまま葬られる」というポオの1テーマである。

 短編小説作家は、ポオも、O・ヘンリも、フィッツジェラルド(長編小説もある)も、悲惨な最期を迎えているが、何故だろう。印税の安い短編小説を乱作するからだろうか。短編小説の名手と呼ばれた三浦哲郎は、それでも長編小説も多く手掛けた。バランスを採ったのだろうか。村上春樹は短編、中編、長編、翻訳、エッセイとバランスを採って書き続け、成功している。

樽のイラスト
写真ACより、「樽」のイラスト1枚。


 谷崎精二・個人全訳「ポオ全集」(春秋社)第2巻より、2回めの紹介をする。
 同(1)は、先の6月21日の記事にアップした。



 今回に読んだのは、「ウィリアム・ウィルスン」1編である。51ページ~77ページの、27ページ分とやや長い。
 ウィリアム・ウィルスンが、寄宿舎学校時代より、同姓同名の同じ日生まれの人物から、自分の芳しからぬ手段での成功を妨げられ続け、年を重ねてから決闘で相手を倒す。しかし血塗れで死にそうなのは自分で、もう一人は自分の分身だったというストーリーである。
 谷崎精二は後記で、スチーブンソンの「ジキルとハイド」に比べられるという。しかしこの短編は、別人物に成り代わる二重人格の話ではない。
 ドストエフスキーの「分身」に想を得たのではないかと思われる程(当時のポオが「分身」を読める環境だったかは判らないが)、同姓同名の人物によって主人公が困窮する設定は似ている。



 また日本の戦後作家・梅崎春生もその全集・第2巻の函の帯で、種村季弘に「この作家はたえず分身幻想につきまとわれていた。」と書かれる程、主人公に似る服装・境遇などの人物との、ストーリーを繰り返し描いた。今の僕に記憶はあるが、例に引けるのは「服」のみである。


 ポオの場合、大酒と賭博で学校を追われ、後も酒に苦しんだ生活を、告白ならぬ幻想的小説へ高め得た。
男性二人 2等身男性
写真ACより、イラスト1枚。




 谷崎精二・個人全訳「ポオ全集」(春秋社・版)の第1巻を読み了えたので、第2巻に入り、短編小説3編を読んだ。
 先行する「同 1」を読む(5)は、今月13日の記事にアップした。



ポオ全集 2
 「同 2」は、1969年11月・初刷、1979年12月・7刷。

 訳者が後記で「幻想的、怪奇的な物語を集めた」という第2巻より、初めの3編である。
 「赤き死の仮面」、「メッツェンゲルシュタイン」、「アッシャア家の没落」、共に心理的恐怖小説と呼びたい。
 「アッシャア家の没落」は、「アッシャー家の崩壊」の名が有名だろう。僕の以前に読んだのが、抄訳だったのか、少年版だったのか、心理的いきさつはこの版が描写細やかだった。

 「赤き」「おののかしめ」「ごとくであった」等、古めかしい訳語が多い。訳者が初めてポオを翻訳したのは、1913年(大正2年)と古く、後に手を入れても、致し方なかったのかも知れない。
 現在は新しい翻訳が文庫本で出版されている。



 


 谷崎精二・個人全訳「ポオ全集」(春秋社・版)第1巻より、5回め、了いの紹介をする。
 同(4)は、今月7日の記事にアップした。リンクより、過去記事へ遡れる。



 今回は、「純正科学の一として考察したる詐欺」、「実業家」、2編を読んだ。
 「純正科学の~」は、「詐欺することが人の運命なのだ。」としている。詐欺を綿密、工夫、忍耐、独創など9つの要素で考察した後、9つの詐欺話を挙げている。しまいの話は、保証金を集めてトンズラするストーリーで、現在の日本でも行われている。

 「実業家」は、「私は実業家である。」と称する「私」が、仕立て屋の客引きから始まって、目障りな小屋を建てて、近くの立派な建物の主から立ち退き料をせしめる「目障り業」、当たり屋、偽郵便料をせしめる詐欺、猫取り締まり法令を発布した国に猫の尻尾(再生する事になっている)を売る業まで落ちぶれる。

 訳者のあとがきによると、第1巻は推理小説編であるが、枚数の都合でその他も収めた。末尾の付加された作品は、ポオ自身の落魄を映すかのようである。
社長
写真ACより、「社長」のイラスト1枚。



 谷崎精二・個人全訳「ポオ全集」(春秋社・版)第1巻より、4回めの紹介をする。
 同(3)は、先の5月27日の記事にアップした。



 今回は、「穽と振子」「細長い箱」「タア博士とフェザア教授の治療法」、3編を読んだ。
 「穽と振子」は、宗教裁判で残酷に殺されようとする「私」が、次第に降りて来る振子の刃の下で台に固定される刑から逃れ、次第に狭まる菱形の焼けた鉄板からも、敵軍の侵攻によって救われる、空想的な話である。
 「細長い箱」は、誠実なワイヤットが妻に急死され、郵船でニューヨークへ運ぶべく、木の箱に入れて乗せ、難破した郵船と共に(脱出の機会がありながら)沈む話である。大事にする木の箱の中身への関心で、読者を引っ張る。
 「タア博士とフェザア教授の治療法」は、精神病院の患者たちが看護師らを監房に押し込め、奇妙な盛宴を催す話である。

 ポオの生活困窮、アルコール依存による混乱か、悪い冗談のような内容になって行くのが惜しい。
 記憶の「穽と振子」では恐怖を感じたのに、今回は感じなかったのは、僕の感性・想像力の衰えか。翻訳が悪いのではないだろう。

棺
写真ACより、「棺」のイラスト1枚。


 谷崎精二・個人全訳「ポオ全集」第1巻より、2回めの紹介をする。
 同(1)は、今月19日の記事にアップした。



 今回は、「盗難書類」「「お前が犯人だ」」「黒猫」の3短編を読んだ。

 「盗難書類」では、秘密の書簡を貴婦人から盗んだ詩人・大臣より、デュパンが警視総監より頼まれて、取り戻す話である。パリ警察が大臣邸などをいくら細かく捜しても、書簡は見つからない。しかしデュパンは、ボール紙製の名刺入れに差してある、つまらない物に見せかけた書簡を見つけ、策を労して回収する。大臣と探索者の心理的駆け引きが題目である。職を転々としたポオは、詩人・大臣などに信用を置かなかったようだ。
 次の「マリイ・ロオジェの秘密」は、長編であり飛ばした。


 「「お前が犯人だ」」は、善良そうなグッドフェロオが友人・シャットルワアジイを殺し、罪を被害者の甥に負わせようとして、「私」が事実を暴く。

 「黒猫」は有名で、僕は以前に読んだ事がある。
 酒に溺れた「私」が、2匹の黒猫を殺し、妻も殺害して、煉瓦の壁に塗り込める。警察は、遺体を探し出せなかったが、「私」が壁を杖で叩いて見せた所、猫の声がして、犯罪が暴かれる。
 僕は昔ほどの感慨を持たなかった。感性や想像力が衰えたのか、フィクションへの不信だろうか。
黒猫
 写真ACより、「黒猫」の写真1枚。



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