風の庫

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働き者

 岩波文庫の一茶「七番日記」(下)より、1回めの紹介をする。
 先行する同(上)を読む(7)は、今月10日の記事にアップした。




一茶「七番日記」(下)
  上巻と同じく、2003年・刊、本文ヤケがある。
 今回は前回に続いて、文化11年正月~6月の半年分、11ページ~62ページ、52ページを読んだ。
 前年正月に、遺産分配が成立して、一茶は田畑、山林、屋敷を得た。畠打ち、菜の花、苗代などを吟じた句が現れる。
 同年4月、一茶は52歳にして28歳の妻、(常田)菊を迎えた。当時の女性としては、晩婚だっただろう。菊は働き者で、指導で外泊の多い留守を守り、家事、畑仕事までこなしたという。一茶の俳句には、すぐには現れない。

 以下に5句を引く。
雪とけて村一ぱいの子ども哉
門番が小菜もぱつぱと咲
(さき)にけり
ちる花に鉢をさし出ス羅漢哉
来よ蛍一本草も夜の露
しんぼしたどてらの綿よ隙
(ひま)やるぞ




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 土曜美術社出版販売の新・日本現代詩文庫150「山田清吉詩集」より、4番めの「田んぼ」全篇を読み了える。
 先行する「藁小屋」(抄)は、先の7月22日の記事にアップした。



 詩集「田んぼ」は、2001年11月、町田ジャーナル社・刊。21編を収める。
 「無題」では、風水害に因るのか、冬になっても刈り取られない稲を描いて、農民の悔しさを表す。「足折れて 手ちぎれて 首折れて/初雪に覆われて/野垂れ死んだ稲」と比喩する。
 「貌」では、戦場の息子を想い、一人(稲の禾に悩まされながら)田の草取りをする母の姿が描かれる。
 「はんたいこら」では、「息子の嫁が己の先に死んで/ただでさえ心がてきんなっているのに/孫等もみんなで己を大事にしすぎる」と、老媼の心境を描くに、方言を使う。
 「仕事師
(しごとせ)」では、シベリア抑留から帰って農に励み、鍬の柄は擦り減ってくびれていた、という1つの生き方を示す。
 「春さきに」では、トラクター事故で亡くなる老翁を表す。
 「あんさん」では、「あのあんさんはよう働きなった」と、働き者の老人の死を、詩人・岡崎純へのリスペクトか、「ごえしたのう」と似る方言で結んでいる。
 この詩集「田んぼ」は、亡くなった農の先達と共に、孫にも伝わる農の血を描いた、農の曼荼羅といえる。
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写真ACより、「カーメンテナンス」のイラスト1枚。



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