砂子屋書房・現代短歌文庫(104)「続 藤原龍一郎歌集」より、未刊歌集「『ノイズ』抄」を読み了える。
 今月5日の記事、
同より「切断」を読む、に次ぐ。
概要
 この短歌文庫・当時、未刊歌集だったが、後に歌集に収められたか、はっきりしない。
 「切断」の後の刊行歌集は「東京式」(1999年、北冬舎・刊)である。検索すると、半年の日録と短歌を収めた本らしいので、違う気もする。ただし「抄」とあるので、日録だけを除いた歌集かとも思ったが、引用歌などからは、違うようだ。
感想
 新刊2冊本を買った楽しみ、ITシステムの全容を誰も知らずに使っている危うさ(今に続く)、下町の実景などを詠む。
 今の天候異変を予見したような歌、当時のセルフサービス食堂(僕は夜勤の頃に利用した)なども詠まれる。
 実景が幻想へ直に繋がるような作風である。
 現代短歌文庫(正)(続)に、初めより連続の6歌集を完本で収録した、彼の優しさに感謝する。また口語調・新仮名の短歌の先駆者として尊敬する。
引用

 以下に7首を引く。
ミステリの新刊上下二巻本購いあゆむ躁の梅雨闇
システムの詳細を知る誰もなくモバイルのその認識の欝
満員のバス通り過ぎそのあとを街宣車ゆくダウンタウンよ
熱波吹き寒波覆うを言祝ぐべし、そう、この街は兇暴につき
秋に咲く花の名前を憶えんと図鑑ひらけば紙魚死にいたり
寒風は突き刺さるとも真夜中の日比谷公園群れなすテント
歩み来てセルフサービス食堂にヌードルを食む救世主のごとく
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写真ACより、「乗り物」のイラスト1枚。