風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年2月20日で以って、Kindle本・短編小説「底流」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリで、「柴田哲夫 底流」と検索すれば、すぐに出て来ます。柴田哲夫は、Kindle版・詩集「詩集 日々のソネット」、「改訂版ソネット詩集 光る波」と同じく、僕のペンネームです。価格は500円ですが、Kindle Unlimited版を追加金無料で購入できます。Kindle版の無料キャンペーンも随時行ないます。多くの方のご購読を願っております。

反発

 思潮社・現代詩文庫242「続続 荒川洋治詩集」より、作品論・詩人論、4編を読み了える。
 今月9日の記事、同「散文」を読むに次ぐ。



 4編は、作家・辻原登、詩人の蜂飼耳と森本考徳、詩人・映画人の福間健二による、短い評論である。アンソロジー詩集に付した論だから、批判はほとんどない。
 蜂飼耳の「見たことのない谷間のかたち」に次ぎの1節がある。「いったん見えた方法に、収まって絞り込んでいくのではなく、ときには壊し、放棄しながら、新たな方向を試していく。」状況の変化に依る外的要因もありながら、現代詩作家は「詩は、たとえ遊びと言われようと、新しさを追求しなければいけない」(ある贈賞式での発言)と進化を続ける。僕が「ソネットをライフワークとする」と粘っているのと、大きな差である。また第8回鮎川信夫賞の「受賞の言葉」で「詩ではなく、詩の形をした文学作品をつくりたい」と書いたと、引用している。彼は意外と、創作の秘密を明かす時がある。
 福間健二の「荒川洋治と社会」にも、「詩による小説をめざす。とくに詩集『針原』(一九八二)以来、荒川洋治の作品史にはその流れがある。」と書かれる。
 なお詩集「針原」を批判した人もいたが、ここで擁護したい。「針原」は、彼が高校3年間、三国町から福井市へ毎日、片道1時間かけて通った電車、三国線(今は1両or2両編成で走っている)の途中の駅名である。外国の地名などを取り込んだ彼が、故郷の親しい美しい地名の回帰へ進んだ心情が、僕にはわかった。
 これで現代詩文庫「続続 荒川洋治詩集」の了いである。

 荒川洋治氏は、高校文芸部の1年先輩であり、文学だけでなく、詩集発行や同人詩誌発行で、手間や金銭の面倒までかけた。今でも会った時には、親しく接してくれる。令名高い現代詩作家に、敬愛と反発の2重の念を持っている。
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。


 今月7日の記事、届いた4冊(4)で報せた本から昨日に続き、関章人さんより受贈した詩集、「在所」を読み了える。

 

詩集2
 リンク記事で、関章人さんの過去の詩集の記録がない、と書いた。県立図書館の蔵書にもなく(県内の詩人は詩集を出版すると、ほとんど必ず寄贈する。この「在所」も蔵書検索に浮かぶ)、第1詩集のようだ。
 年刊アンソロジー「詩集ふくい」への寄稿が先か、同人誌誌「角」への寄稿が先か(代表・金田久璋さんに誘われて)、今はわからない。

 第Ⅰ章は、東北大震災をちょうど3ヶ月後に詠った「白煙がゆれている」から始まり、比較しつつ福井震災を描く「 わが福井震災の記憶と」が続く。福井空襲と原発禍を対比する「いのちの在所」の編もある。

 第Ⅱ章には、言葉を問う「ことばの翳り」、「とどかないことば」がある。
 「耳鳴り」の「透明になった過去と/崩れて行く明日と/幻像は水面に揺らいでいる」とあいまいながら、焼け跡世代の現在の思いを伝える。
 第Ⅲ章の「鯨塚」は、天明4年(1784年)と文政3年(1820年)の史実を物語って、郷土史研究家の面目を見せている。
 「囲い込み幻想」は、国の領海・領空を囲い込み、「ひとり歩きする」コトバで国民を囲い込もうとする、権力に反発する。
 第Ⅳ章では、生活をリアルに切り取って優れる。「廃品回収」の「次には僕が廃品回収やなァ」「いやいや まだまだ使える貴重な資源です」の会話は、庶民の機知と知恵と優しさである。
 第Ⅴ章の3編は古く、ベトナム戦争などを詠っている。

 総じて問題意識に貫かれた詩集である。


タルト・タタンと炭酸水
 竹内亮・歌集「タルト・タタンと炭酸水」kindle unlimited版を、タブレットで読み了える。
 入手は、10月16日の記事、
入手した3冊(3)の初めにアップした。
概要
 各版の発刊日と価格は、上のリンクに記載したので、ご覧ください。
 竹内亮(たけうち・りょう)は1973年・生。東大法科大学院・修了。弁護士。
 223首、東直子・解説「命の色彩」、著者「あとがき」を収める。
感想
 静謐で透明な歌境は、今に珍しく、優れた特色である。
 明らかにフィクションとわかる歌がある。嘘を書くなら、嘘を現実っぽく思わせるか、現実を嘘っぽく思わせるかだが、この歌集では中途半端である。
 特色は翻って、生活と創作への反発・嫌悪が足りない感じがする。どのグループ(結社、同人誌)にも属さないからだろうか。
 今も健全に生活し、健詠している事を願う。
引用

 以下に7首を引く。
カーディガンの少女の横で少年は片足立ちで靴はき直す
雲が白い夏の初めの風の朝きみ柔かな瞼を開く
キッチンで知らない歌を口ずさみ君は螺旋のパスタを茹でる
長考の将棋のような間があって「それ、私も聞いたことある」
ひまわりの種を千粒買いました近所の道にそっとまきます
玄関のインターホンを押した後はにかみながら視線を下げる
絵の裏の最初のページ箴言は雲の小さい空に溶けゆく




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