角川ソフィア文庫「西東三鬼全句集」より、「『変身』以後」を読み了える。
 先行する「変身」(2)は、今月3日の記事にアップした。



 1961年秋より、1962年4月に没するまでの、句である。わずか54句に過ぎない。
 自身が1952年に創刊・主宰した俳誌「断崖」のように、癌による死を見つめる、断崖に至った。
 しかし句境は澄んで、清明である。突っ張って来た、詰屈が失せている。

 今回で、角川ソフィア文庫「西東三鬼全句集」の紹介の、仕舞いとしたい。
 まだ拾遺句集があるが、自身が採らなかった句である。
 また自句自解も2集を収め、興味深いが、屋上屋の感じがするので、紹介しない。

 以下に5句を引く。
父と兄癌もて呼ぶか彼岸花
這い出でて夜露舐めたや魔の病
ばら植えて手の泥まみれ病み上り
ついばむや胃なし男と寒雀
木瓜の朱へ這いつつ寄れば家人泣く
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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。