風の庫

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句跨り

惟任将彦「灰色図書館」
 今月23日の記事、歌集2冊をダウンロードで報せた内、惟任將彦「灰色の図書館」をタブレットで読み了える。
概要
 リンクに出版社、各版の出版年次、価格等を記したので、ご参照ください。
 305首、林和清・解説「ハイデルベルゲンシス願望」(ハイデルベルゲンシスは大柄な絶滅人類)、著者・あとがきを収める。
 惟任將彦(これとう・まさひこ)は、1975年・生。近畿大学生時代に、塚本邦雄ゼミに所属。日本語教師となる。歌誌「玲瓏」会員。
感想
 図書館をめぐる連作があり、また野球に関する連作がある。
 若者歌人には珍しく、旧仮名、古典文法での作歌である。塚本邦雄に倣ったか。
 句割れ・句跨りが多いけれども、無意義な使い方だと思う。定型に圧力を掛けて、危機感・違和感を表わす方法だけれども、その必要が無さそうである。
 人生派と言葉派を止揚した歌がある。
引用

 以下に7首を引く。
新幹線満席となり肘触れぬやうに本読む自由席にて
里芋の煮つ転がしに箸を刺す夕べ組み換へられし遺伝子
銀杏よ猫の目となり漆黒の世界を銀に塗り替へてくれ
灰色の図書館内に鮮やかなブックカバーの墓地があるとか
道端にただ佇んでゐるわれに道行く人の不審さうな目
渋滞の高速道路穏やかな顔の車が少なくなつた
異国にて野球の選手名鑑を暗記するまで読みし日もあり




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 今月20日の記事「届いた1冊、頂いた7冊」で紹介した内、結社歌誌「百日紅」2018年10月号を読む。
 月例作品のみを読み、題詠・作品評は読まなかった。
概要
 文章では読んでいないが、聞く所に由ると、おもに県内の歌人を会員とする、結社歌誌である。
 月刊。10月号は21ページ。1首の上下端を俳句のように、すべて揃えている表記は特異である。
 「作品(一)」、「作品(二)」に分かれているが、全員が5首掲載である。選歌があるのか、5首出詠・掲載なのか、判らない。
 窪田空穂(「槻の木」、「まひる野」など主宰)の系統を継承し、故・辻森秀英(県の歌人)が創刊、現在の代表はI・善郎さんである。創刊より70余年。
感想
 全員が5首掲載、特選なし、と掲載に競争がないせいか、のびのびと会員は詠んでいる。
 口語調の歌もあるが、旧かな表記の故か、跳びはねた作品は少ないようだ。
 地方歌誌にとどまらず、会員は全国歌誌に飛躍してほしい。
 綜合歌誌、歌集などを読み、学びも忘れずに。
 月刊を70年続けた情熱に打たれる。
引用

 I・善郎さんの「勝山大仏」5首より。
子ら連れて来しは何十年前か勝山大仏の山門くぐる
 大胆な句跨りがあって、現代短歌の学びが知られる。
 A・敏子さんの「大雨」5首より。
浅草のみやげにもらひし風鈴は友亡き今も軒に鳴りをり
 友への追悼の思いが鮮やかである。


 角川書店「増補 現代俳句大系」第14巻(1981年・刊)より、6番目の句集、広瀬直人「帰路」を読み了える。
 今月14日の記事、
皆吉爽雨・句集「泉声」に次ぐ。
概要
 原著は、1972年、雲母社・刊。飯田龍太・序「真竹のいろ」、445句、著者・後記を収める。
 広瀬直人(ひろせ・なおと、1929年~2018年)は、1948年「雲母」入会、(1992年「雲母」終刊のあと)1993年、俳誌「白露」を創刊・主宰した。
引用と感想
 付箋にメモを残したので、それに従って書いてみる。句集は、昭和35年以前と~昭和46年まで、ほぼ年別に載せられている。
岩を離れて青々と微風の田
 大胆な句跨りの1句。1963年の作。60年安保には全く触れていないが、政治的平和の時代に、新しい手法を取り入れている。「芸術的前衛は政治的後衛である」と語った人もいるから、少数者を除いて正鵠を得ているのは、致し方ないか。
麦を蒔くひとりひとりに茜の田

 2毛作に麦を育てるのだろう。生活の基盤を描く。作者は農家の子で、高校の教師だった。
 季語に凡な所があり、「盆」「秋深む」「晩夏」「秋の山」と、続いたりする。
田を越えて鳥の隠るる枯葎
 1968年の作。句調が整っている。盛んだった学生運動から、目を背けるかの如くである。
白樺の幼き枝に驟雨来る
 同じ1968年の句。季語に深みが出るようだ。
風走らせる眼前の白つつじ
 1970年の句。学生運動が終末に向かう頃、再び句割れ、句跨りの作が見られる。心理の深部に鬱屈があって、句集名等に現れたか。
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写真ACより、「フード&ドリンク」のイラスト1枚。



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