風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年2月20日で以って、Kindle本・短編小説「底流」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリで、「柴田哲夫 底流」と検索すれば、すぐに出て来ます。柴田哲夫は、Kindle版・詩集「詩集 日々のソネット」、「改訂版ソネット詩集 光る波」と同じく、僕のペンネームです。価格は500円ですが、Kindle Unlimited版を追加金無料で購入できます。Kindle版の無料キャンペーンも随時行ないます。多くの方のご購読を願っております。

句集

 角川ソフィア文庫「西東三鬼全句集」より、第4句集「今日」を読み了える。
 第3句集「夜の桃」は、今月20日の記事にアップした。



 「今日」は、1952年、天狼俳句会・刊。平畑静塔・序(文庫には不掲載)、著者・後記と共に収める。
 当時、関西に居を転々とした。「天狼」同人の平畑静塔、秋元不死男、橋本多佳子、高屋窓秋、他に沢木欣一、角川源義ら、俳人との交流は広く深かったようである。
 1948年以降、戦後の荒廃を残しつつ、1951年まで復興に向かう日本の景と情が吟じられる。家庭では、妻と別居、後の妻、愛人と、家庭的ではなかったようである(小林恭二・解説より)。芸術的前衛かつ政治的前衛たらんとすると、家庭が壊れるというのは、歌人の岡井隆と同じであると思う。

 以下に5句を引く。
春山を削りトロッコもて搬ぶ
麦熟れてあたたかき闇充満す
孤児孤老手を打ち遊ぶ柿の種
冬雲と電柱の他なきも罰
歩く蟻飛ぶ蟻われは食事待つ
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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。


 角川書店「増補 現代俳句大系」第15巻(1981年・刊)より、18番め、最後の句集、斎藤玄「雁道」を読み了える。
 先行する北野民雄・句集「私歴」は、今月16日の記事にアップした。




 原著「雁道(かりみち)」は、1979年、永田書房・刊。1975年~1978年の4年の382句を、年毎に4章にまとめて収め、著者・後書を付す。
 1980年4月8日、蛇笏賞に決まり、1か月後の5月8日に癌で逝いた。

 斎藤玄(さいとう・げん、1918年~1980年)は、戦前に西東三鬼に師事、「京大俳句」に拠った。戦後、俳誌、個人誌を創刊しながら、石田波郷「鶴」に1時参加した。
 「雁道」は第5句集であり、1983年「無畔」、1986年「斎藤玄全句集」(永田書房・刊)がある。
 句割れ、句跨りなどありながら、定型を守っている。4度の開腹手術を受け、死を覚悟したようだが、悟ったような澄んだ句より、死の怖れを表したような句に好感を持つ。


 以下に5句を引く。
なにげなき餅草摘の身拵
はるけきを待つ邯鄲の鳴くを待つ
花山椒みな吹かれみなかたちあり
心痩せては花桐の吹溜
山をもて目を遮りぬ秋の暮
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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。




 角川書店「増補 現代俳句大系」第15巻(1981年・刊)より、17番めの句集、北野民雄「私歴」を読み了える。
 先行する森澄雄・句集「鯉素」は、今月7日の記事にアップした。



 原著は、1978年、牧羊社・刊。中村草田男・序句1句、506句、著者・あとがきを収める。
 1948年~1967年までの句を、4つの年代に分けて収めた、第1句集。
 北野民雄(きたの・たみお、1913年~1988年)は、1946年の草田男「萬緑」創刊とともに参加、長く功績を積んだ。
 敗戦直後は貧しかったが、後に成功し、旭倉庫、みすず書房の各社長となる。
 含羞ある家族吟、旅吟に、味わいがあるとされる。
 後に句集「夢殿」(1986年、俳人協会・刊)がある。還暦後、充実ぶりを示す、と自ら述べている。

 以下に5句を引く。
寝て一畳流離極まる餅うまし
文化の日枯れれば薪も割りやすし
万緑や水もて子らの四肢潔む
枯萱の果ての工場ストの旗
晩夏の旅家鴨のごとく妻子率て

 なお「増補 現代俳句体系」全15巻を読み来たって、残るは斎藤玄・句集「雁道」1冊のみである。
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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。


 

 近澤有孝・句集「踝(くるぶし)」を読み了える。
 僕の親しむ彼のブログに、刊行が公開され、Amazonより880円(税込み)で取り寄せた。

句集「踝」
 2020年3月31日・刊。制作印刷・喜怒哀楽書房。ここ3年の273句、著者・あとがきを収める第1句集。帯文は辻村麻之(「篠」主宰)。94ページ。

 近澤有孝(ちかざわ・ゆうこう、1960年・生)は、俳句の他に、語学に堪能で、ランボーの詩や「マザー・グース」の新訳を、ブログにアップしている。
 俳歴は長いのだろう。俳誌「篠」同人。

 収録された句のレベルの高さを認めた上で、忠告したい事がある。旧かな古典文法で句作したりすると、習熟に連れて、レトリック、用語、言葉の運び方などに、俳壇らしい臭みが出る場合がある。生活にアンテナを張って、いつまでも新鮮な句を吟じてほしい。
 季語とともに、自然との機微を掴んだようだ。「踏青やいずれ故郷を忘れたる」は、反語だろうか。


 以下に5句を引く。
文を書く東風の吹くころ封をする
西行忌落雁ひとつ齧りたる
艦船を眼下に花は杏かな
去りゆける守宮つもりがあるらしく
茶の花や触れてはならぬと云はれたる






 角川書店「増補 現代俳句系」第15巻(1981年・刊)より、16番めの句集、森澄雄「鯉素」を詠み了える。
 先行する阿部みどり女・句集「月下美人」は、今月3日の記事にアップした。



 原著は、1976年、永田書房・刊。381句、著者・あとがきを収める。
 森澄雄(もり・すみお、1919年~2010年)は、1940年の加藤楸邨「寒雷」創刊に参加、1970年に「杉」を創刊。飯田龍太と共に、伝統俳句の代表作家と呼ばれた。
 その後も句集を刊行し、1997年に恩賜賞・日本芸術院賞を受け、芸術院会員となる。

 「鯉素」は、漢詩に依り、「手紙」の意である。4年間の句は、旅に得た作品が多い。旦那俳人が、地方の旦那衆俳人を巡って指導するようで、嫌味である。地元で吟じられた句は、嬉しいようにも思うけれども。社会性俳句、前衛俳句に、背を向けた果てだろう。


 以下に5句を引く。
をさなくてめをとはよけれ二つ雛
青涼の葦と暮らして葦長者
甘橿の国見に雲雀羽ふるふ
吾亦紅すこしいこへば空の冷
青紫蘇を嗅いで力に峠越

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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。


 3月27日に手許へ届いた2冊を紹介する。

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 まず所属する結社の歌誌、「覇王樹」の2020年4月号である。4月1日付け、覇王樹社・刊、34ページ。

 同・3月号の感想は、今月2日の記事にアップした。リンクより、関連過去記事へ遡れる。



 4月号の僕の「弥生10首詠」は、もう1つのブログ「新サスケと短歌と詩」の、3月29日の記事より2回に分けてアップするので、横書きながらご覧ください。



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 福井県俳句作家教会の事務局長さんにお願いしていた、「年刊句集 福井県 第58集」が、同じ日に届いた。2020年3月20日・刊、293ページの大冊である。

 なお同・第57集の紹介の仕舞いの記事は、昨年6月1日にアップした。8回に分けた感想、さらに古い記事へ遡れる。








 角川書店「増補 現代俳句大系」第15巻(1981年・刊)より、14番めの句集、鷲谷七菜子「花寂び」を読み了える。
 先行する高木晴子・句集「春居」は、今月17日の記事にアップした。



 原著は、1977年、牧羊社・刊。1969年~1976年の394句、著者・あとがきを収める。
 鷲谷七菜子(わしたに・ななこ、1923年~2018年)は、1942年より水原秋桜子「馬酔木」に投句、1946年・山口草堂「南風」に入会した。1984年「南風」主宰、2004年・辞して名誉顧問となる。
 上方舞の楳茂都流3代家元・陸平と宝塚スター・吉野雪子の長女として生まれながら、生後間もなく祖父に引き取られ、人生・恋愛に挫折がありながら(巻末・対談より)、気品ある句を創ったとされる。
 2013年、全句集(角川書店・刊)あり。
 僕はこれまでよく分からなかった、1969年~1976年頃の、社会の心情的風潮に初めて接した気がした。以下の5句には引かなかったけれど、「沙羅の花雲霧は末の散りやすし」(1970年)、「雪の世に火を焚いてゐるうしろかげ」(1976年)等、まさに花寂びの句境と言える。


 以下に5句を引く。
髪の根を解くや夜の雪とめどなし(1970年)
かなかなや夕日を知らぬ谿の村(1971年)
紫雲英田のびつしり村に嫁来る日(1972年)
閉してなほ湖光の障子さくらどき(1973年)
ひかりみな湖にひそみて梅の青(1975年)

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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。



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