角川書店「増補 現代俳句大系」第14巻(1981年・刊)より、20番目の句集、赤尾兜子「歳華集」を読み了える。
 先の3月28日の記事、中村苑子・句集「水妖詞館」に次ぐ。
概要
 原著は、1975年、角川書店・刊。第3句集。
 司馬遼太郎の序文「焦げたにおい」、500句、大岡信の跋文「赤尾兜子の世界」、著者・後記を収める。塚本邦雄の1文「神茶吟遊」を別刷添付。
 赤尾兜子(あかお・とうし、1925年~1981年)は、戦後に京大入学後、「太陽系」の同人となる。1970年、俳誌「渦」を創刊・主宰した。
 句集「蛇」、「虚像」で、前衛俳句の旗手と見なされる。「歳華集」は、伝統回帰の作風と言われる。
感想

 句集として、司馬遼太郎、大岡信、塚本邦雄の護衛に守られた母艦のようである。
 伝統回帰と言っても、有季、古典文法、新かなながら、575音の定型に収まる句は少ない。
 例えば「霧の屋上庭園 しきりに卵割れあふれ」、「つぶやく小動物のあいさつ消えて水匂う」など、初句が大幅な字余りで、中句7音、結句5音と取ると、読みやすい句が多い。他のどこかで切ろうとすると、無理が生じる。
 「妖しき祭怺う水栓も雪のなか」は、怺えるのが自分なのか、水栓なのか判然しないように、難解な句も多い。定型の「プール秋綿菓子色の水で陥つ」など、いっそう難解である。
引用

 以下に5句を引く。
さびしき鳥と釣りあう雨の野韮群
縫合の国軽外套もほころびて
兎さげし猟夫と暁(あけ)をゆきちがう
花壺におさななじみの雲は散る
木犀の夜雨まじりに匂う方
(かた)
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。