風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年9月6日で以って、Kindle本「少年詩集 鳶の歌」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリで、「少年詩集 鳶の歌」と検索すれば、すぐに出て来ます。右サイドバーのバナーよりも至れます。僕のペンネームは柴田哲夫です。価格は500円ですが、Kindle Unlimited版を追加金無料で購入できます。多くの方のご購読を願っております。

吉野弘

 青土社「吉野弘全詩集 増補新版」(2015年2刷)より、第3詩集「10ワットの太陽」を読みおえる。
 
第2詩集「幻・方法」の感想は、今月10日付け記事にアップした。
 原著は、1964年(詩人38歳)、詩画集として、思潮社・刊。
 巻頭の「火の子」は、1964年に発表され、元始太陽信仰のようである。60年安保を潜っての心境だろうか。
 2編めの「乳房に関する一章」は、西東三鬼の俳句「おそるべき君等の乳房夏来る」(1948年・刊・句集「夜の桃」収載)の敷衍に過ぎない。意識的だったか、無意識だったか、判らない。
 「仕事」は、定年で退職した男性が、次の仕事(小さな町工場)を見つけて若返るが、詩人は不満げである。仕事は単なる悪ではなく、能力に応じて働ければ良い、と僕は考える。
 「研究される」は、「僕らは多分/ひそかに/十分に/研究されている」と結ぶ。市場調査や、最近のビッグデータ・プラチナデータまで、人々の心理・行動様式は研究されている。
 「歌」では、「人間の歌を聞いて/最も慰められるのは無だ/…無は/死を欲しない/…歌の杜絶/それが死だ/…」と、無と死に関わらせて、詩人の意志を表わそうとする。
 詩画集として、全17編を収める。
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写真ACより、チェック柄の1枚。


 青土社「吉野弘全詩集 増補新版」(2015年2刷)より、第2詩集「幻・方法」を読みおえる。
 
第1詩集「消息」は、先の1月31日付け記事にアップした。
 原著は、1959年、飯塚書店・刊、全38編。「消息」からの再録16編と、意に染まぬ1編は、この全詩集版では外された。
 2編めの「何を作った」では、「資本家」「労働者」「商品」と、マルクス主義公式をファンタジック化したに過ぎない。ただし労働組合活動の過労で倒れ、胸部手術を受けた、とあるから机上の空論ではない。
 「幻・方法」「幻・恩恵」は、宗教・国家の原初のイメージのようだ。「幻・方法」では「これは明らかに/幻に対する挑戦の方法をも/教えるものだ」と書きながら、その方法は明らかではない。
 「星」では、「サラリーマンの一人は/職場で/心を/無用な心を/昼の星のようにかくして/一日を耐える」と、組織の中で個人が人間性を保つ型を示している。
 有名な「夕焼け」は、名作である。僕が半世紀前の高校文芸部員時代、ガリ版に刷って読書会の資料にした思い出がある(その文化祭の読書会は、見事な失敗に終わったけれど)。優しさは弱さではなく、怒りを持ち得る事を示した。
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写真ACより、チョコレートの1枚。多くの男性の意を表して。



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 「茨木のり子全詩集」を、今月14日の記事で離れた。まとめの記事を書く手もあるが、詩人の生涯を、全詩作を、10行や20行でまとめるのもおこがましく、そのままである。
 詩集として、替わりに青土社「吉野弘全詩集 増補新版」(2015年2刷)を出して来た。函(写真はその表)、帯、本文1055ページに11詩集、他を収める。「夢焼け」以降の詩画集、写真詩集の作品は、収められていないようだ。
 この本の購入は、前ブログ「サスケの本棚」の管理画面からの検索に拠ると、2015年6月20日の記事で、楽天よりとある。
 第1詩集「消息」は、1957年、谺詩の会・刊。20編を収める。詩人31歳の時。
 「さよなら」の末連の「ききわけのよい/ちょっとした道具だった。/ちょっとした道具だったけれど/黒枠の人は/死ぬ前に/道具と さよなら したかしら」と、サラリーマンの苦しみと哀れをうたった。
 ほとんどがその志向の作品と、生の意義を問う作品だ。今となっては、正論過ぎる(当時は正論でなかったかも知れないが)。「不合理ゆえに吾信ず」(埴谷雄高のアフォリズム)を知る者に、信じがたい。
 自身、「雲と空と」で、「…どこまでも/はてのない青さで/やさしく つきそってゆく/空。//空の/いつわりのやさしさ。」と、偽りの優しさである事を、感づいていたようだ。


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