河出書房「ドストエーフスキイ全集」(米川正夫・全訳)第2巻(1956年・刊)より、同巻・最後の作品、短編小説「鰐」を読み了える。
 今月8日の記事、
同・中編「いやな話」に次ぐ。
概要
 初出は、ドストエフスキーの主宰していた雑誌、「エポーハ」の1865年2月号(終刊号)だった。
 この全集では、収録ページ数の関係か、掲載順と発表順が違っている。
 1865年は、流刑・兵役よりドストエフスキーがペテルブルクへ1858年に戻った後であり、「死の家の記録」、「地下室の手記」の発表後である。また翌年には「罪と罰」を発表している。
感想
 「私」の友人、イヴァン・マトヴェーイチが見世物の鰐に呑み込まれて、腹中で元気に生き続け、見物人の多さに自惚れる、というストーリーである。「新しい経済関係の独創的な新理論を発明して」「人類の運命を逆転させ得る人間だ」という具合に。
 作者は「ただ読者を笑わすための純文学的な戯作」と述べたようだ。
 あまりにばかばかしいストーリーなので、何か深い寓意が込められているかと、僕は勘繰りたくなる。実際、憶測が世間一般に広がり、本人は後に唖然としたという。
 軽い冗談にも意味はある。この作品は、未完である。
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写真ACより、「ファンタジー」のイラスト1枚。