風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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嘆く

 小島ゆかり・第14歌集「六六魚」を読み了える。
 古書店よりの到着は、今月5日の記事、入手した4冊を紹介する(11)で報せた。




小島ゆかり 六六魚
 2018年9月1日、本阿弥書店・刊。448首、著者・あとがきを収める。
 僕は彼女の歌集を、ほとんどすべて読んで来た。僕はもう短歌結社「コスモス」を放れ、彼女の歌にケチを付けたかったが、ケチの1つも、作品上は付けられない。

 自分を戒める娘に反発をして強がりを書き、次女のできちゃった婚を受け入れ、「われはもや初孫得たり」と「われはもや安見児得たり」をもじり、基本的に前向きである。人間の貪欲、貧しい政治を嘆くけれども。彼女の初期からある、草木鳥獣との交流感は健在であり、シュールな面を見せる。
 「われのみの歩み」とも詠んで、歌の覚悟を示すようだ。忙しく活動する彼女が「怠けきつたる日」と詠むのは、意外で怖い。彼女の歌には、何でも身に引きつけて詠む点があり、リアルさを保証している。
 華甲(還暦)を越え、過労気味の心身を労り、これからも歌に邁進してほしい。


 以下に8首を引く。
「昔は」と言ふたびわれを戒むる娘はむかしわれが産みたり
水際に立てばすぐさま押し寄せる鯉の貪欲にんげんに似る
下の子はけふ母になり とほざかる風景のなか夏の雨ふる
見つめ合ふうち入れ替はることあるをふたりのみ知り猫と暮らせる
「何者」と問ふ若者に「只者」と応へ立ち去る秋の妄想
老境も佳境に入るかこのごろの母はホントのことばかり言ふ
なにもかも怠けきつたる日の夜は丁寧語にて猫にもの言ふ
みづからをまづいたはれと言ふごとく胸に抱ふるパンあたたかし



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 岩波文庫の一茶「七番日記」(上)より、7回め、しまいの紹介をする。
 同(6)は、今月11日の記事にアップした。




 今回は、文化10年7月~12月(閏11月あり)、387ページ~439ページ、53ページを読んだ。
 年末に、383日・在庵75日、年尾・1123句、と記した。
 定住した北信濃は住み心地が良かったらしく、夏の涼むともなく、山霧の抜ける座敷、冬の炭火などを吟じている。
 51歳での独身を嘆くが、翌年、文化11年には52歳で初めて妻を迎えた。
 以下に5句を引く。
(すずみ)をばし(知)らで仕廻(しまひ)しことし哉
膳先
(ぜんさき)は葎雫(むぐらしづく)や野分吹(ふく)
汁鍋にむしり込(こん)だり菊の花
福豆も福茶も只の一人哉
(ゆく)としや何をいぢむぢ夕千鳥
コチドリ
写真ACより、「コチドリ」の写真1枚。




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