風の庫

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増補

 角川書店「増補 現代俳句大系」第13巻(1980年・刊)より、5番目の句集、山田みづえ「忘」を読み了える。
 先行する
草間時彦「中年」は、今月12日の記事にアップした。
概要
 原著は、1966年、竹頭社・刊。石田波郷・序、498句、石塚友二・跋、著者あとがきを収める。
 山田みづえ(やまだ・みづえ、1926年~2013年)は、1957年に石田波郷「鶴」に入会、1979年に俳誌「木語」を創刊・主宰した。
感想
 山田みづえは、1944年に大学を中退し結婚、1955年に2男子を婚家に残し、離婚した。
 家庭で最も悲劇なのは、幼い子の死去であり、離婚はそれに次ぐだろう。彼女も戦争の犠牲者であったか。
 父を亡くし(「露霜に暁紅顕ちて父は逝けり」)、母とは遠く(「栗食むや母は遠きに在りてよし」)一人暮らしをし、句風は鋭い。
 ややぎこちない所があるが、解説では第2句集「木語」(1975年)以降巧みになり、名人芸とさえ言われるようになったという。
引用

 以下に5句を引く。
春火桶妻失格のなみだ煮ゆ(別るゝと決む)
花虻や追憶ばかり相続す(相続放棄す)
空砲にも惑ひ翔つ鴨茜冷ゆ
白桃や弱音を吐かば寧からむ
晩涼や窓鈴なりの少女工
(注:今回より、文字の大きさの区分けが異なるようになったので、表記に違和があります)。
0-10
写真ACより、「ファンタジー」のイラスト1枚。


 
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 角川書店「増補 現代俳句大系」第12巻(1982年・刊)より、8番目の句集、小杉余子「余子句抄」を読み了える。
 今月7日の記事、
西東三鬼「変身」に次ぐ。
概要
 小杉余子(こすぎ・よし、1888年~1961年)は、1935年、松根東洋城・主宰の「渋柿」を離れ、「あら野」に拠る。戦後、復刊するが長続きせず、俳壇と没交渉となった。
 原著は、1962年、ヒゲタ・なぎさ句会・刊。ヒゲタ・なぎさ句会は、ヒゲタ醤油の社員の句会で、彼が指導していた。
 尾崎迷堂・序、1025句、川越蒼生・跋を収める。
 先行する「余子句集」、「余子句選」がある。
感想
 1025句は多い。先行する萩原麦草「麦嵐」の千に余るらしい句集、西東三鬼「変身」の1073句と、俳壇の風潮であったか、読む者の身になってもらいたい。
 内面には強靭な精神の緊張を持しつつ、その表現においては平明を守ろうとした、とされる。
 「ホトトギス」より戦後の社会性俳句、根源俳句への流れから、逸れた句境にあった。
 没後の「余子句抄」を含め、3句集をもって、生涯の句業を俯瞰できる事は、いたく優れた事である。

引用
 以下に5句を引用する。季節立てより1句ずつ。
門松の片寄り立つやビルの前
早春やまだ立つ波の斧に似て
返り梅雨して灯台の霧笛かな
月光をわたしはじめぬ波の皺
小十戸を海辺に並めて冬野かな
0-88
写真ACの「童話キャラクター」より、「一寸法師」のイラスト1枚。





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