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 今村夏子の短編小説集「こちらあみ子」を読み了える。
 入手は、先の5月27日の記事、入手した5冊と1誌で報せた。
概要
 ちくま文庫、2017年7月30日・6刷。
 初めての作家さんである。ブクログか読書メーターでとても誉められていて、同氏の「あひる」(角川文庫)と共に、メルカリで購入した。
 この本には、太宰治賞、三島由紀夫賞をW受賞した「こちらあみ子」と、「ピクニック」、「チズさん」の3短編小説を収める。
「こちらあみ子」
 田中あみ子と孝太の兄妹に継母が来るが、妹を死産した時、あみ子は木札の墓を立ててしまい、それを契機に継母は心の病気に、兄は不良少年となってしまう。
 あみ子が慕い続けた、のり君に殴られて前歯を3本折ってしまうが、差し歯を拒否するのは不自然である。あみ子は兄の威光などで苛められずに済んだが、中学卒業と共に、祖母に預けられてしまう。
 多動症とかADHDという言葉のなかった時代だろうが、子供が純粋であるが故の多難を背負ってしまう。
「ピクニック」
 売り出し中のスターの恋人だと語り行動し続ける七瀬さんと、仲間の少女たちの友情、彼女の嘘がバレての後が描かれる。表立っては描かれないが、家族・恋人のいない女性の、虚構に縋る心情が哀れである。
「チズさん」
 独居のおばあさんチズさんの誕生日祝いに、世話をしている「私」が訪れると、子夫婦と歌手志望の男孫が訪れて、「私」の隠れている間に大騒ぎをする。「私」はチズさんをわが家に引き取ろうとするが、土壇場でチズさんが未練を見せて、頓挫する話である。純粋な思いが、多くは通らない世間を表わすようだ。