風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年2月20日で以って、Kindle本・短編小説「底流」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリで、「柴田哲夫 底流」と検索すれば、すぐに出て来ます。柴田哲夫は、Kindle版・詩集「詩集 日々のソネット」、「改訂版ソネット詩集 光る波」と同じく、僕のペンネームです。価格は500円ですが、Kindle Unlimited版を追加金無料で購入できます。多くの方のご購読を願っております。

大人

 森絵都の短編小説集「アーモンド入りチョコレートのワルツ」より、先の1月24日に紹介した「子供は眠る」に続く、2編を読み了える。

 リンクより、関連過去記事へ遡り得る。

 今回読んだのは、「彼女のアリア」と、「アーモンド入りチョコレートのワルツ」である。
 「彼女のアリア」には、J・S・バッハ<ゴルトベルグ変奏曲>より、の副題が付く。
 使われない旧校舎の音楽室でピアノを弾く中三の少女と、同級の男子が出会う物語である。えり子は、「僕」の1ヶ月不眠の悩みを聞いてくれ、自分も不眠症だと慰めてくれ、様々に話し合うようになる。
 boy meets girlの物語である。
 ただし、えり子は虚言症であり、他の男子にも優しいと知り、「僕」は無視するようになる。しかし、卒業式のあと、二人は旧音楽室で和解する。

 「アーモンド入りチョコレートのワルツ」には、エリック・サティ<童話音楽の献立表(メニュー)>より、の副題が付く。
 ピアノ教師の絹子先生、生徒の君絵、奈緒(語り手)の間に、フランスから「サティのおじさん」が現れ、愉快に引っ掻き回して去っていく。「アーモンド入りチョコレートのように生きなさい」がサティのおじさんの教えであった。アーモンド入りチョコレートは僕の好物で、惜しんで食べたものだが、ずいぶん昔である。小説では、数年前、との設定になっている。単行本・発行の1996年の数年前なら、僕の好んだ頃と合っているだろう。


 ワルツは3拍子だから、3編を収めたのだと、途中で気づく僕の迂闊さである。3編とも、美しく終わる。それは別荘での夏の終わり、卒業、帰国など、強制的な終わりのあるストーリーだからでもある。
 夫婦、親子など死ぬまでの関わり、そうでなくとも数十年の職場関係の、悲喜は語られない。後に彼女は、大人の小説を描き、人の一生を感じさせる作品を書くようになる。
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写真ACより、「ケーキ」のイラスト1枚。


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 昨日に紹介した2冊の内、A・幸代さんの個人詩誌、「野ゆき」vol.8を読み了える。
 
同・vol.7は、昨年10月21日の記事にアップした。
概要
 自身が年1回くらいの発行、と話していた。他に福井県詩人懇話会・刊の年刊アンソロジー「詩集ふくい」に発表の場がある。
 この詩誌は、2017年冬・と記されて発行されている。
 「ありがとう」、「ひっくり返る」、「雀」、「落ち葉」、「遠い約束」の短い詩5編が、横長1ページに1編ずつ収められている。
感想
 彼女は僕より少し年上な、芯のしっかりした、誠実な方である。僕のように、いつまでもあちこち跳び回ってはいない。誠実さを表わそうとすると、自分の中の歪みを意識して、ためらったり、疑念を持ったりしてしまう。
 それを表わせるのは、彼女が大人なのだろう。その誠実さは、娘さんにも継がれて、詩「ありがとう」になっている。
 時事を思わせる「雀」、生を思う「落ち葉」、艶のある「遠い約束」、いずれも佳品である。
引用

 ユーモラスで、幸せそうな、「ひっくり返る」全編を引く。

  ひっくり返る

やんちゃなくせに
むくれてひっくり返る
取扱説明書が欲しいものだと
娘と話していた
敵もさるものひっかくもの
予約までして借りた本を
珍しく熱心に読んでいた
「かあちゃんトリセツ」
ひっくり返るのはこちらの方だ




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