妊娠
山田詠美「風味絶佳」を読む
山田詠美の短編小説集「風味絶佳」を読み了える。
今月12日の記事、届いた3冊(5)で到着を報せた。
概要
単行本:2005年5月、文芸春秋社・刊。
文春文庫:2008年5月・初刷。
6編の短編小説を収める。「4U」の9編に比べて、1編が長めである。
感想
「4U」などと共に、名短編集とWikipediaにあったから、取り寄せて読んだ。
「4U」に比べて、暗いアンハッピーエンドな小説が多いようだ。
「アトリエ」では、ゆんちゃん(裕二)あーちゃん(麻子)と睦み合う夫婦が、妊娠と共に妻の神経症に夫も巻き込まれてゆく。
「風味絶佳」では、アメリカかぶれの祖母に見守られながら、青年が見事に恋人に振られる。
「間食」では、年上の加代に世話される雄太が、恋人の花の妊娠を知った途端、花との連絡を切る、後味の悪さが残る。
「春眠」では、想いを寄せた女性を実父に奪われる。
男性主人公は、肉体労働者からみばかりだ。現場出身の僕として、本質を衝いていると言えない。
作家は2006年に離婚していて、家庭の危機の反映と読むのは、あまりに俗だろうか。
今月12日の記事、届いた3冊(5)で到着を報せた。
概要
単行本:2005年5月、文芸春秋社・刊。
文春文庫:2008年5月・初刷。
6編の短編小説を収める。「4U」の9編に比べて、1編が長めである。
感想
「4U」などと共に、名短編集とWikipediaにあったから、取り寄せて読んだ。
「4U」に比べて、暗いアンハッピーエンドな小説が多いようだ。
「アトリエ」では、ゆんちゃん(裕二)あーちゃん(麻子)と睦み合う夫婦が、妊娠と共に妻の神経症に夫も巻き込まれてゆく。
「風味絶佳」では、アメリカかぶれの祖母に見守られながら、青年が見事に恋人に振られる。
「間食」では、年上の加代に世話される雄太が、恋人の花の妊娠を知った途端、花との連絡を切る、後味の悪さが残る。
「春眠」では、想いを寄せた女性を実父に奪われる。
男性主人公は、肉体労働者からみばかりだ。現場出身の僕として、本質を衝いていると言えない。
作家は2006年に離婚していて、家庭の危機の反映と読むのは、あまりに俗だろうか。
川上未映子・エッセイ本「きみは赤ちゃん」を読む
川上未映子のエッセイ本「きみは赤ちゃん」を読み了える。
メルカリからの購入は、先の4月28日の記事、歌誌と歌集とエッセイ本にアップした。リンクより、川上未映子の関連の記事を遡れる。
概要
初出は、「出産編」が「本の話Web」2013年7月~11月・連載、「産後編」が書き下ろし。
単行本は、2014年7月、文藝春秋・刊。
文春文庫は、2017年5月10日・第1刷。
感想
35歳になった女性作家が、妊活をして妊娠し、出産を経て、息子が1歳になるまでの育児も語られる。基本、望み通りで、ハッピィな語り口である。
世の中には結婚しない人、結婚しても子供が出来ない夫婦、別れてしまう夫婦もいる。川上未映子は、再婚であるが故にか、乗り切って育児に至っている。
妊娠を産婦人科で夫(作家、あべちゃんと書かれている)と確認した時の喜び、つわりの苦しみ、突然のつわりの解消、マタニティブルーの苛立ちも、率直にユーモアのある口語調で書かれている。
そして無痛分娩の筈が、難産で帝王切開となるいきさつが描かれる。子が生まれての、号泣など、ここでも率直である。
産後は母乳授乳を選んだので、2時間ごとの授乳等でほとんど眠れない日が続く。夫が睡眠、執筆を続けるので、産後クライシスにもなるが、2人は徹底的に話し合って、危機を回避する。
自然に卒乳し、お気に入りのベビーカーで(それにも救われ)散歩し、息子の1歳の誕生日祝いの場面でおわる。初めての経験尽くしの妊娠、出産、育児を、ごくたいへんな事も、関西弁交じりの明るい文体で述べられて、幸せ感が伝わって来る。
米川千嘉子・歌集「一夏」を読む
砂子屋書房・現代短歌文庫91「米川千嘉子歌集」(2011年・刊)より、第2歌集「一夏」を読み了える。
今月18日の記事、同「夏空の櫂」を読む、に次ぐ。
概要
原著は、1993年、河出書房新社・刊。
第4回・河野愛子賞・受賞。
短歌編に、エッセイ風のあとがき「郭公」を付す。
「一夏」は、「ひとなつ」ではなく、IMEにはないけれど、「いちげ」と読む(三省堂「現代短歌大事典」2004年・刊に拠る)。
感想
何といっても、妊娠、出産、子育ての歌が主である。
「わが子可愛い」だけの歌ではないけれど、やはり喜びの歌に目が行く。
父よりの血脈、青年期を脱する夫、夫のボストン留学への同伴、掉尾には転んでも立ち上がる子への励ましが、詠まれる。
この文庫には、歌集はこれまでの2冊を収め、あと歌論・エッセイと解説を付す。
彼女はこのあとも、創作旺盛で、続々と歌集を刊行している。
引用
貼った付箋は18枚、内より7首に絞るに苦労した。
迷ひをるわれをしづかに消すやうに身籠りしものを誰も祝福す
愛ふかく負けてゆく生万葉集に萩のくれなゐのごと零れをり
魂のふかくともればみどり子は胸さすこゑをたてて笑ひぬ
わがいのちただに見つめて生くべしと母を覚えて日々濃き微笑
母と呼びしはじめてのこゑ胸抜けて夏の燕の消えたる彼方
こゑに競ひて子らは遊べりかうかうと母の匂ひを放ち遊べり
母の手をふとほどきたる幼子に入道雲はしづかなる餐
写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。
今月18日の記事、同「夏空の櫂」を読む、に次ぐ。
概要
原著は、1993年、河出書房新社・刊。
第4回・河野愛子賞・受賞。
短歌編に、エッセイ風のあとがき「郭公」を付す。
「一夏」は、「ひとなつ」ではなく、IMEにはないけれど、「いちげ」と読む(三省堂「現代短歌大事典」2004年・刊に拠る)。
感想
何といっても、妊娠、出産、子育ての歌が主である。
「わが子可愛い」だけの歌ではないけれど、やはり喜びの歌に目が行く。
父よりの血脈、青年期を脱する夫、夫のボストン留学への同伴、掉尾には転んでも立ち上がる子への励ましが、詠まれる。
この文庫には、歌集はこれまでの2冊を収め、あと歌論・エッセイと解説を付す。
彼女はこのあとも、創作旺盛で、続々と歌集を刊行している。
引用
貼った付箋は18枚、内より7首に絞るに苦労した。
迷ひをるわれをしづかに消すやうに身籠りしものを誰も祝福す
愛ふかく負けてゆく生万葉集に萩のくれなゐのごと零れをり
魂のふかくともればみどり子は胸さすこゑをたてて笑ひぬ
わがいのちただに見つめて生くべしと母を覚えて日々濃き微笑
母と呼びしはじめてのこゑ胸抜けて夏の燕の消えたる彼方
こゑに競ひて子らは遊べりかうかうと母の匂ひを放ち遊べり
母の手をふとほどきたる幼子に入道雲はしづかなる餐
写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。