風の庫

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安住

 岩波文庫の一茶「七番日記」(下)より、8回めの紹介をする。
 同(7)は、今月6日の記事にアップした。


 今回は、文化14年7月~12月の半年分、330ページ~366ページ、37ページ分を読んだ。
 安住の郷里の四季を吟じ込んで励みがある。人間以外の生き物に呼び掛ける句も健在で、処々に見られる。
 52歳で結婚して3年、長男・千太郎は幼くて亡くなったが、世継ぎの子を欲したらしく、童児の愛らしさを吟じた句が散見する。
 文化14年の末尾に、惣計975句とあるのは、文化14年の句の合計だろう。また他郷252日、在菴95日とあり、指導外泊が変わらず多かった記録が残る。

 以下に5句を引く。
大の字に寝て見たりけり雲の峰
あれ程のいなごも一つ二つ哉
(まるい)露いびつな露よいそがしき
我家
(わがいへ)の一つ手拭(てぬぐひ)氷りけり
ちりめんの狙
(さる)を負ふ子や玉霰
入道雲1
写真ACより、「雲」のイラスト1枚。







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 石川書房「葛原繁全歌集」(1994年・刊)より、歌集「又玄」の後半を読み了える。
 先の1月25日の記事、
同(前)に次ぐ。
 今回は、273ページ「歌びとの墓」より、しまい306ページまでを読む。
概要
 主な概要は、同(前)に記したので、ご参照ください。
 ただ1949年に結婚した宮田鶴は、おそらく師・宮柊二の妹であり、出身地も同じ町である。各年譜には、慎重に明記を避けているけれども。義兄弟となり、宮柊二や「コスモス」への忠誠も納得が行く。
感想
 付箋にメモを書いて貼って行ったので、それに従い7首の感想を述べる。
塵もなき参道の上におのづから散りて色冴ゆ紅葉の幾ひら
 墓所に参ろうとして、静かな観照の歌である。
波形に白泡残る洗はれて寒くひかれる渚の砂に
 悠久の波に向かい、写生の歌と呼ぶ1首だろう。
湧きたぎるこの憤(いきどほ)り赤軍をののしり責めて済まねば昏(くら)
 共産同赤軍派よりの赤軍を指す。政治的立場を明らかにするのは良い。
敗れゆく国を守ると若かりしうら哀しさぞ立ち還り来る
 戦中の立場を、口ごもるのではなく、明らかにするのは良い。

家妻のここは産土(うぶすな)梁落つる水のしぶきを身に浴びて立つ
 妻の実家と、その里の風景は、妙に惹かれるものだ。
薔薇咲ける園ふりかへり去らむとすかくて安らふ妻と我とは
 束の間の小さい安らぎがある。
立ちまじり冬の竹群たもとほる生(いき)に荒(すさ)べる心鎮めと
 葛原繁には内に、心の荒みがあり、写生、観照の境地に安住できていないようだ。家族にわずかに和むようだ。
0-42
写真ACより、「乗り物」のイラスト1枚。



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