風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

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定型

 昨日の記事、入手した3冊を紹介する(13)のうち、矢部太郎のマンガ「ぼくのお父さん」を読み了える。僕も安易に就くのだろうか。それから登るつもりである。


ぼくのお父さん
矢部太郎
新潮社
2021-06-17

 感想として、「大家さんと僕」シリーズ程には面白くない。「大家さんと僕」シリーズは、今回のようにオールカラーではなく、モノクロだったと記憶するけれども、4コマ・マンガの枠をきっちり守っていた。それが今回は、最大4コマ6連にまでなっている。幼年時代、家族への情が、4コマで収まらないのかも知れない。でも4コマ・マンガは俳歌のように、定型に収めるからこそ面白いのである。
 それと家族の情を大きな題材にした面も、マイナスだったか。家族は、愛憎の果てに愛しいものだからである。少年時代の友人(女の子を含む)と無邪気に遊ぶエピソード群が、僕の回想を呼び出して楽しめた。

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 イラストACより、「自然」の1枚。



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 今日2回めの記事更新です。
 僕の未発表ソネット10編より、(1)をアップします。俳句、短歌に次ぐ、第3の定型大衆詩として、ソネットを薦めています。
 ソネットのアップは、先の5月27日の記事以来です。


  一般解
    新サスケ

二次方程式の一般解は覚えているが
その証明ができない
夜更けのもうろうとした頭で
ノートに書いてみる

解けない
でも手掛かりは掴んだ
翌日の夜も解いてみる
なんとか式を書ける

更に次の日も書いてみる
式が次第に整ってくる
翌朝も書いてみる

式がすっきりしてきた
簡略に証明できる
確信の持てる証明となる

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写真ACより、「建築」のアイコン1枚。



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 4月16日(第3金曜日)午前10時より、橘曙覧記念館の会議室にメンバー3人が集まって、短歌研究会A・4月歌会を持った。曜日は、僕の都合に他のメンバーが、合わせてくれたものである。
 先の3月歌会は、3月19日の記事にアップした。


 歌誌等の貸し借り、返却のあと、3人の詠草の検討に入る。
MKさんの9首より。
 6首めの下句「ふふふと揺れる踊子草の」は倒置を止めて、「踊子草のふふふと揺れる」にするよう、僕が奨めた。
 9首めの結句「駆くるはうれし」は、「自転車を馳す」とするよう、僕が奨めた。
TFさんの9首より。
 6首めの下句「広き心になれただろう」の結句を「なれただろうか」にするよう、僕が奨めた。
 8首めの4句「黄の帯が」は、「黄色の帯が」にするか、僕が提案した。
僕の10首より。
 6首めの上句「咲かなかった福寿草に」は、定型を外れているようだが、違和感は少ないとTFさんは述べた。
 10首めの下句「硝子の窓と紙の戸閉める」は、ガラス窓と障子戸の事だが、さすがに無理があったようだ。

 検討会のあと、僕のここ1ヶ月の100首余りのプリントを二人に読んでもらい、感想をもらった。また歌集KDP原稿の、プリント版と元原稿を渡し、50首ほど追加する検討を依頼した。
 5月歌会は、僕の参加が無理かも知れず(入院のため)、日程を決めず、11時半前に散会した。
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写真ACより、「ガーデニング」のイラスト1枚。




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 角川ソフィア文庫「西東三鬼全句集」より、句集「変身」の後半、2回めの紹介をする。文庫本で、196ページ~272ページである。
 同(1)は、先の5月29日の記事にアップした。




 この句集には、10年間の1,073句が収められており、2回に分けて紹介する理由である。
 刊行は、死没の1ヶ月余りまえで、単行句集の最後となった。
 前衛としての態度を崩さなかった。字余りの句など、言葉の按配では定型に収まりそうな所、伝統俳句に逆らうがに、突っ張っている。
 旅吟に秀句が多いように思われる。また若者に期待する句もある。
 彼は演技がうまく、俳壇の寝業師とも呼ばれたという。人生経験を積んで、33歳で俳句を始めた三鬼にとって、文学少年・少女上がりの俳人は、与しやすかっただろう。

 以下に5句を引く。
秋の夜の海かき回し出帆す
(松山)
膝にあてへし折る枯枝女学生
若者の木の墓ますぐ緑斜面(中村丘の墓)
老いし母怒涛を前に籾平(なら)
象みずから青草かづき人を見る
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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。




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 角川書店「増補 現代俳句大系」第15巻(1981年・刊)より、18番め、最後の句集、斎藤玄「雁道」を読み了える。
 先行する北野民雄・句集「私歴」は、今月16日の記事にアップした。




 原著「雁道(かりみち)」は、1979年、永田書房・刊。1975年~1978年の4年の382句を、年毎に4章にまとめて収め、著者・後書を付す。
 1980年4月8日、蛇笏賞に決まり、1か月後の5月8日に癌で逝いた。

 斎藤玄(さいとう・げん、1918年~1980年)は、戦前に西東三鬼に師事、「京大俳句」に拠った。戦後、俳誌、個人誌を創刊しながら、石田波郷「鶴」に1時参加した。
 「雁道」は第5句集であり、1983年「無畔」、1986年「斎藤玄全句集」(永田書房・刊)がある。
 句割れ、句跨りなどありながら、定型を守っている。4度の開腹手術を受け、死を覚悟したようだが、悟ったような澄んだ句より、死の怖れを表したような句に好感を持つ。


 以下に5句を引く。
なにげなき餅草摘の身拵
はるけきを待つ邯鄲の鳴くを待つ
花山椒みな吹かれみなかたちあり
心痩せては花桐の吹溜
山をもて目を遮りぬ秋の暮
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写真ACより、「アジアンフード&ドリンク」のイラスト1枚。




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CIMG1758
 Twitterを「短歌 ネットプリント」で検索し、2種類を5月5日(日曜日)に近所のローソンで引き出した。短歌のネットプリントの記事は、今年3月25日の「1冊と1枚」以来である。

 まず以下のツイートである。

 1997年、1998年生まれの歌人、3人による「第三滑走路」6号である。A3判・片面。
 各12首と、メンバー紹介(簡単な質問2つと答え)を、収める。
 学生短歌会のA・輝さん「グッドライフ」と、M・洋渡さん「プシュケの結婚式」は難解である。
 句割れ・句跨りが繰り返され、57577の定型が崩れると、歌意も崩れるようだ。
 M・慎太郎さんの「桜、散ってすぐ夏」は、やや大人しいか。以下に1首ずつ引く。
光り続ける僕たちの密室論/世界すべてを映し出すシネマ(A・輝)
世界は一つとは限らない木漏れ日が総量として葉を上回る(M・洋渡)
手続きが煩雑なのがわるい、よね? 桜は散るからうつくしい、よね?(M・慎太郎)

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 次のツイートである。
 K・仁美さんとH・志保さんが、「いちごつみ60」で、交互に歌を詠んで、各30首、計60首を、A4判両面で読める。
 しかもルールがあって、前の歌にあった1語を必ず取り入れて詠むのである。定型にさらに枠をはめている。後半に荒れそうになるが、うまく仕舞っている。
 続く2首を挙げる。
ここへ来て一緒に濡れてほしいのにあなたは傘をたくさんくれる(H・志保)
濡れてもいいものとして買うスニーカーが私の悲しいによく似合う(K・仁美)

 これらの歌の危機は、若者歌人の危機であり、若者の危機であり、時代の危機である。


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 角川書店「増補 現代俳句大系」第14巻(1981年・刊)より、20番目の句集、赤尾兜子「歳華集」を読み了える。
 先の3月28日の記事、中村苑子・句集「水妖詞館」に次ぐ。
概要
 原著は、1975年、角川書店・刊。第3句集。
 司馬遼太郎の序文「焦げたにおい」、500句、大岡信の跋文「赤尾兜子の世界」、著者・後記を収める。塚本邦雄の1文「神茶吟遊」を別刷添付。
 赤尾兜子(あかお・とうし、1925年~1981年)は、戦後に京大入学後、「太陽系」の同人となる。1970年、俳誌「渦」を創刊・主宰した。
 句集「蛇」、「虚像」で、前衛俳句の旗手と見なされる。「歳華集」は、伝統回帰の作風と言われる。
感想

 句集として、司馬遼太郎、大岡信、塚本邦雄の護衛に守られた母艦のようである。
 伝統回帰と言っても、有季、古典文法、新かなながら、575音の定型に収まる句は少ない。
 例えば「霧の屋上庭園 しきりに卵割れあふれ」、「つぶやく小動物のあいさつ消えて水匂う」など、初句が大幅な字余りで、中句7音、結句5音と取ると、読みやすい句が多い。他のどこかで切ろうとすると、無理が生じる。
 「妖しき祭怺う水栓も雪のなか」は、怺えるのが自分なのか、水栓なのか判然しないように、難解な句も多い。定型の「プール秋綿菓子色の水で陥つ」など、いっそう難解である。
引用

 以下に5句を引く。
さびしき鳥と釣りあう雨の野韮群
縫合の国軽外套もほころびて
兎さげし猟夫と暁(あけ)をゆきちがう
花壺におさななじみの雲は散る
木犀の夜雨まじりに匂う方
(かた)
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。



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