思潮社・現代詩文庫242「続続 荒川洋治詩集」より、2回めの紹介をする。
 「『坑夫トッチルは電気をつけた』から」を読む。
 先の8月27日の記事、同「『一時間の犬』から」を読むに次ぐ。

 「かわら」から。彼は容貌にコンプレックスがあるのだろうか。「醜怪な顔」と、ぼんやりと言っている。彼は醜怪ではなく、理解されること少なく、苦労した文学者の顔だ。
 「林家」から。次の2行がある。「ぼくもまた政治家なので/文学も出世の手段としか考えない」。反語だろうか。本音だろうか。俳歌ではボスなど、権力を振るう人もいたようだ。詩と小説では聞かない。自己表現の芸術に対して、畏れがない。
 「デパートの声」では、東京上流の人のデパートでの言葉に、上京した頃の彼が、コンプレックスを持ったらしい事を描いている。
 「坑夫トッチルは電気をつけた」より。方言ではないけれども、田舎言葉を使っている。電気器具に通電する事を「電気をつけた」と言う。「球」を「たま」と読ませて電灯球を指すのも、「球が切れた」で電球のフィラメントが切れた事を指すのも、田舎風であり、違和感があって理解を妨げる1因となる。
 彼は戦無派の詩の荒野を、どこまで行くのだろう。
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。