谷崎精二・個人全訳「ポオ全集」全6巻(春秋社・版)第1巻より、小説「黄金虫」「モルグ街の殺人」を読み了える。
ポオ全集 1
 写真は、第1巻の箱の表である。1969年・第1刷、1981年・第8刷。1941年に初版の出た全集より、1969年~70年にかけて出た、改訳・新版らしい。僕は全6巻揃いを所有している。
 谷崎精二は、文豪・谷崎潤一郎の弟である。

 「黄金虫」は、ポオのデビュー作ではないが、暗号小説の草分けとされる。海賊・キッドの遺宝の在り処を示す羊皮紙を入手したルグランが、乱数表的暗号を読み解き、実地探査に依って場所を特定し、財宝を見つけるまでを描く。暗号の8が最も頻出することからeと解き、更に進める方法と、髑髏の左目を老召使が対面左側と間違う所が鍵である。

 「モルグ街の殺人」は、凶悪な密室殺人を、単なる読書家のデュパンが解く。人殺しが人でなくて、大猩々であった所は、救いのようで(殺された母娘にとって)救いになっていない。推理ものの嚆矢とされ、多くの推理作家が展開パターンを(リスペクトでか)踏襲している。