思潮社の現代詩文庫181「続続・辻征夫詩集」を読み始める。
 到着は今年3月20日の記事、「届いた3冊を紹介する(11)」で報せた。


 また先行する「続・辻征夫詩集」のしまいの記事は、先の5月28日にアップした。



 「続続・辻征夫詩集」は、2006年・刊。辻征夫の没した2000年より、6年後である。2003年には、書肆山田より「辻征夫詩集成」が刊行されており、それに対抗するためにも、また現代詩文庫で締めるためにも、「続続・同」は必要だったのだろう。
 「続続・同」の冒頭は、これまで現代詩文庫の抄出で、除かれていた作品である。当時の編集者には考えがあったのだろうし、詩人も納得していたのだろう。それが没後、全詩集に対抗するためにも、拾い上げるのは忸怩たる思いがあっただろう。ばらばらではあるけれど、現代詩文庫3冊で、散文を1部含め、全集をまとめた事は、晴れがましいだろう。

 「続続・同」の冒頭は、現代詩文庫で5詩集から漏れた作品を集める。
 「天使・蝶・白い雲などいくつかの瞑想」からでは、「むらさきの蝶」で「酒に依存し  酒に夢を/つむぎながら」と告白する。
 詩集「かぜのひきかた」の「アルバムの余白に」では、「ぼく 依然として/六年B組の/あの/ぼくです」と締める。大学を卒業するに至っても転向せず、少年少女のまま、成年とならない人が僅かにいると聞く。辻征夫も、稀なその1人なののだろう。「続・同」の詩集「鶯」より表題作「鶯」に現れる10歳に成ろうかという女の子は、敗戦革命を乗り越えられず、成年とならなかった女性(あるいは詩人)の内心のようだ。
 詩集「ボートを漕ぐおばさんの肖像」からでは、詩人の胸に住む優しいおばさんを巡って、縷々と語る。「ぼくにはまだ会ったことのない/不思議なおばさんがいて/いつもぼくの脳細胞の暗闇で/優しく呟いてくれるのだが」。

ホワイトサウンド
「ゆりの里公園」から、「ホワイトサウンド」の1枚。