風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年9月6日で以って、Kindle本「少年詩集 鳶の歌」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリで、「少年詩集 鳶の歌」と検索すれば、すぐに出て来ます。右サイドバーのバナーよりも至れます。僕のペンネームは柴田哲夫です。価格は500円ですが、Kindle Unlimited版を追加金無料で購入できます。多くの方のご購読を願っております。

岩波文庫

 岩波文庫の一茶「七番日記」(上)より、4回めの紹介をする。
 同(3)は、今月13日の記事にアップした。



 今回は、文化9年正月~6月の半年分、219ページ~280ページの62ページである。ただし6月の中に、文化10年10月分11月分が、記されている。紙の貴重な時代、余白を借りたものらしい。
 狂歌の流行のせいか、庶民生活的、俗語の多用、滑稽味の強調、などがある。
 現代俳句に至る流れとは、1筋違っているだろう。

 以下に5句を引く。
(寄)るは年さはさりながら梅の花
鉢の松是
(これ)も因果の一つ哉
(菜)の花のとつぱづれ也ふじの山
いざい
(往)なん江戸は涼みもむつかしき
ちりめんの狙
(さる)を抱く子よ丸雪(あられ)ちる
松の盆栽
写真ACより、「松の盆栽」のイラスト1枚。


 岩波文庫の一茶「七番日記」(上)より、3回めの紹介をする。
 同(2)は、先の8月30日の記事にアップした。



 今回は半年区切りでなく、文化8年正月~12月まで、135ページ~215ページの、81ページを読んだ。旧暦なので、正月に梅の花の句があったりする。
 上段の日記には、社寺の催し、火事の記事が多く、信仰厚く、火事の多かった時代が、偲ばれる。
 一茶は、寺社の住職の知り合いも多かったようだが、俳句を読むと熱心な信者ではなかったようだ。小鳥や虫に親しむ傾向がある。
 年末の項に、「年尾四百七十二句也」とあり、多産である。文化7年は「年尾惣計六百七十九句也」とあるけれども。

 以下に5句を引く。
例の通
(とほり)梅の元日いたしけり
人のいふ法ホケ経や春の雨
名月や門
(かど)から直(すぐ)にしなの山
腹の虫しかと押
(おさ)へてけさの雪
しぐるゝや軒にはぜたる梅もどき
梅の花
写真ACより、「梅の花」のイラスト1枚。




 岩波文庫の一茶「七番日記」(上)より、2回めの紹介をする。
 同(1)は、今月23日の記事にアップした。



 今回は文化7年7月~12月、89ページ~133ページの、45ページ分である。
 文化10年、継母・継弟との和解が成立して、田畑からの収入を得るようになるまで、文筆一本の生活であり、実際上、豪商・寺の住職を頼り、門人等に頼って生活していた。パトロンと門下が頼りだったのである。
 文化7年は、江戸流寓時代と言われる中の1年である。
 夏の涼み、冬の暖房の心配、等が吟じられている。

 以下に5句を引く。
咲たての朝皃
(あさがほ)(値)ぎり給ふ哉
痩蛙まけるな一茶是に有
はつ時雨俳諧流布の世也けり
雪ちるや七十皃の夜そば売
とし暮て薪一把も栄耀
(ええう)

朝顔
写真ACより、「朝顔」のイラスト1枚。


 句集を読むのは、今年6月6日に読了を記事アップした、角川ソフィア文庫「西東三鬼全句集」以来である。


七番日記(上)
 一茶の「七番日記」(上)は、岩波文庫、2003年・初版。長く蔵して来た本で、僕は2008年まで喫煙していた事もあり、本文がかなりヤケている。ただし読むに不都合はない。
 今回は、初めより88ページまで、文化7年正月~6月までを取り上げる。
 体裁は句日記だが、旅行の記録、世事(火事、盗賊、殺人)などの記事を交える。
 毎月100句程を記録しており、別案も混じる。
 一茶の句は、庶民の情景をやや戯画化した所に、特徴がある。継母、継弟との折り合いが悪く、父の没後、ようやく遺産分けをしてもらい、家に寄り付かなくなる。
 朝日古典全書で「一茶句集」を読んだ記憶がある。


 以下に5句を引く。
(おい)が身の直(値)ぶみをさるゝけさの春
朝陰や親ある人のわかなつみ
朔日や一文凧も江戸の空
(かへる)(かり)我をかひなき物とやは
それなりに成仏とげよ蝸牛


 2月27日(第4木曜日)の午前9時半より、メンバー3人が喫茶店に集まり、短歌研究会B第40回を持った。
 先行する同・第39回は、先の1月30日の記事にアップした。




 短歌研究会Bは、岩波文庫「宮柊二歌集」(宮英子・高野公彦・編)の読み込みである。
 今回は、第7歌集「藤棚の下の小室」(1972年・刊)より、193ページ「寒鰤漁」の節からである。
「寒鰤漁」の節より。
 1首めの上句「島のわき漕ぎ過ぐるとき」の「漕ぎ」は手漕ぎではなく、エンジン・スクリューだろうと僕は述べた。鰤漁で、手漕ぎの船はないだろう。
 6首めの「工場群の破棄しゆく水」は、化学物質を含む汚水排出だろうとTさんが述べた。
「土井竹林」の節より。
 「土井」は何だろうとMさんが問うので、地域名だろうと僕は答えた。8首めの4句にに「土井氏の姓の」と出て来る。
 6首めの中句「手桶道」は、よくわからない。手桶を埋めたのか、手桶で運んだのか、と推測した。
「不安なる渚」の章より。
 1首めの上句「不安なる渚のごとし」は、作者の不安の投影だろう。
 196ページに入って1首め「落ちそめぬ」とあるのは、桜ではなく藤を指すのだろう。
「島原・長崎」の節より。
 3首めの「大蓼」は、「犬蓼」の誤植だろうと話し合った。

「旅後」の節より。
 3首めの「身にしむ」は、ありがたい、嬉しいの思いだろうと、Mさんが述べた。

 これで1967年分が過ぎ、まだ10時半過ぎだが、今回はこれまでとした。次回の日程を決め、散会した。
 
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写真ACより、「ケーキ」のイラスト1枚。


 1月29日(第5水曜日)の午前9時半、メンバー3人が喫茶店に集まり、短歌研究会B第39回を持った。
 先行する同・第38回は、昨年11月30日の記事にアップした。



 僕はアイスコーヒーのモーニングセット、Mさんはブレンドコーヒーのモーニングセット、Tさんはアメリカンコーヒーを注文し、歌誌の貸し借り、返却をし、近況を語り合った。

 研究会Bを12月には休んでいるので、2ヶ月ぶりである。短歌研究会Bでは、岩波文庫「宮柊二歌集」(宮英子・高野公彦・編)の読み込みをする。
 今回は、第7歌集「藤棚の下の小室」(1972年・刊)より、186ページ半ば、「手記四百編」の節よりである。
「手記四百編」の節より。
 1首めの2句「かの日復返(をちかへ)り」の「かの日」は敗戦日だろう。3句、4句の描写は、主張より逸れた具体である。
 ルオー展とジャンヌダルク像の歌には、美術や音楽を歌にする困難を、3人とも嘆き合った。
「晩秋一小圏歌」の章より。
 2首めの4句「秋蟬ひとつ」の秋蟬を、お互い電子辞書で調べて、油蝉と知って驚く。
 3首めの2句「蘭の一鉢」は、185ページ「蘭の花」や186ページ「春蘭抱きて」と出て来る、頂き物の春蘭らしい。
 188ページに入り、4首めの中句下句は「新約全書/版の古きは/詞句あざやけし」と危うい句跨りだろう。


 歌集「独石馬」(1975年・刊)に入り、まず独石馬をドクセキバと読むことを確認する。僕がWeblio辞書で、追確認した。
 1966年の歌から。
「銀杏と胡桃」の章より。
 3首めの上句「遠き海ただに鳴りつつ」の海鳴りを、海に遠く住む3人なので、実感がわからなかった。
 4首めの結句「原子力研究所」は発電所ではないので、初期の研究所だろう。
 6首めの「一家族七人」と後に詞書きがある歌は詰め込み過ぎだが、そうしても1首にしたい切迫感がある。
「尾鷲」の章より。
 尾鷲がどこか分からないと僕が言うと、2人は三重県の内だと教えてくれた。後でパソコンで調べると、伊勢と熊野の間だった。
 3首めの結句「顔おだやけき」は強調の連体形止めだが、終止形でも感慨は伝わると話し合った。
 193ページに入って、8首めの2句、「九十九浦の」の読み(「くじふくうら」か、「つくもうら」か)が、3人には分からなかった。

 この章で研究会Bをしまい、次の日程を決め、11時近くに散会した。
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写真ACより、「ケーキ」のイラスト1枚。




 岩波文庫、アストゥリアス「グアテマラ伝説集」(牛島信明・訳)より、4回め、了いの紹介をする。
 同(3)は、昨年12月28日の記事にアップした。



グアテマラ伝説集
 今回に紹介する作品、「ククルカン―羽毛に覆われた蛇」は、文庫本で135ページに渉る、長い幻想劇の脚本の形をとる。なおジャンルは、先行する作品と同じく、小説に入れた。
 全能の神・ククルカン、従者・グワカマーヨ、知者・チンチビリン、他の動物、伝統上の者たちによって織りなされる。
 1部、唯心論と唯物論の議論、戦闘の敗北を挟む。
 ククルカンが1夜の同衾で娘を殺すしきたりの中、娘・茴香(ヤイ)が当てられてククルカンの改心の希望を持たせる。


ひげを生やした亀:アオップ!アオップ!乙女たちが目覚め、蜂鳥に変わる日が、いつか来るであろうか?
ウバラビックス(不寝番の歌の名手):来るかも知れない‥‥来ないかも知れない‥‥

 しかし結末はバッドエンドで、チンチビリンが茴香(ヤイ)の名を呼ぶが返しはなく、亡くなるシーンである。
 アストゥリアスが宗教を、独裁を、あるいは現代社会を批判したのかわからないが、それら総てを含む幻想劇だろう。




 

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