風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

Kindle本の第1歌集「雉子の来る庭」をKDPしました。右サイドバーのアソシエイト・バナーよりか、AmazonのKindleストアで「柴田哲夫 雉子の来る庭」で検索して、購入画面へ行けます。Kindle価格:250円か、Kindle Unlimitedで、お買い求めくださるよう、お願いします。

年譜

 思潮社の現代詩文庫181「続続・辻征夫詩集」より、辻征夫論である作品論・詩人論と、辻征夫・自筆の年譜(補遺・八木幹夫)を読む。


 没後のシリーズ最後の作品論・詩人論として、清岡卓行(詩人)「詩的自画像の楽しさ」、高橋源一郎(作家)「萌えいづる言葉に対峙して」、岡井隆(歌人)「巧まざる技巧の冴え」、藤井貞和(詩人)「自由な定型と定型の自由」を載せている。僕が名を知る文人であり、生前のように揶揄することもない。
 現代詩と定型の問題について、僕はアマチュア文学として短歌(現在は口語・新かな)と、ソネットの詩(俳句、短歌に次ぐ第3の大衆定型詩として)を書いており、矛盾は感じていない。僕にソネットを止めるよう勧める先輩詩人がいるけれども、ソネットを詩のライフワークとする、と公言した者に余計なお世話である。
 自筆年譜は、詩に個人的背景を背負った作品があり、作品の感受のために重要である。

 僕が辻征夫の作品と出会ったのは、昨年8月18日の記事の通り、振興商品券で現代詩文庫「辻征夫詩集」を含む3冊をまとめ買いしたからである。

 現代詩文庫は他にもあったが、僕にわからないようだった。辻征夫の名前は、その時まで知らなかった。数々の賞を受賞し、ある世代の詩人の仲間には、評価されたようだ。没後、人口に膾炙する詩人としては、残らないようだ。
 でも僕は、3冊の現代詩文庫を処分しないだろう。3冊で全詩と散文の1部を収めている。僕は没後の全集に弱いのだ。



友誼紅
 南越前町・花はす公園より、「友誼紅」の1枚。





このエントリーをはてなブックマークに追加

 土曜美術社・日本現代詩文庫27「関根弘詩集」より、巻末の詩論2編、解説1編を読み了える。
 今月14日の記事、同・詩集「奇態な一歩」を読む、に次ぐ。リンクより、以前の関根弘の詩集の記事へ遡り得る。
詩論「リルケからカフカへ」
 戦前にリルケ(特に「マルテの手記」)を好んだ関根弘が、戦後、カフカに傾いた事情について、以下のように書いている。「戦争を通過したあとで、わたしは、当然のことのようにカフカ党になっていた。リルケがたてこもった社会的無関心の塔からいやでもひきずり出されて、カフカ的にいえば、孤立無援のたたかいを余儀なくされたからであろう」。安部公房にもカフカを勧めたという。
講演「小熊秀雄」
 詩賞「小熊秀雄賞」授賞式での講演である。年次はわからない。たった1度、少年時代に小熊秀雄に会っただけ、という関根弘が、外郭から中心に攻め入るように、13ページに渉って描いている。
 小熊秀雄の絶筆の詩「刺身」、堀田昇一の小説「自由ヶ丘パルテノン」、小野蓮司の詩「苔」から引きながら、戦前プロレタリア文学運動の末期に出発して、抵抗詩「刺身」を書くに至ったさまを描き尽くす。
 室生犀星の「我が愛する詩人の伝記」に匹敵する描きぶりである。

「関根弘詩集解説」中川敏
 「今時アヴァンギャルドは演劇を除いてはアウト・オブ・デイトである」と、やんわりと関根弘の「リアリズムとアヴァンギャルドの統一」を批判している。

 最後に年譜について。関根弘は、東京に生まれ、小学校卒業後、勤めに入り、住み込み店員も経験している。従軍を免れて、戦後、職を転々とし、文筆家として立った。40歳で結婚、息子、娘を得る。
 詩誌「列島」で、手八丁口八丁と言われる大活躍(「解説」より)をしながら、没後、全集どころか全詩集さえ発行されていないようだ。以て悼むべきである。
0-17
写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。


このエントリーをはてなブックマークに追加

↑このページのトップヘ