風の庫

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思潮社

 思潮社の現代詩文庫78「辻征夫詩集」より、「隅田川まで」を読む。
 初めの「学校の思い出」「今は吟遊詩人」の感想は、先の12月29日の記事にアップした。
 

 「隅田川まで」の原著は、1977年、思潮社・刊。 
 彼の抒情詩には異質さがある。現実的論理を離れて、異世界の深くへ届く。
 想像というより、空想の軽さがある。詩情を脅かす現実が深みを与える。
 しかし異世界への参入の仕方は「アルコールの雨」、宿酔の力ではないだろうか。萩原朔太郎が「独自で日本のシュールリアリズムを創り上げた」と言われても、僕はアルコール依存の幻覚ではないかと疑っている。
 戦後詩の田村隆一は酒好きな詩人だったが、彼は深く病んでいた。

 「魚・爆弾・その他のプラン」の第2章より引いてみる。「夕陽を小型の爆弾となす/呪文を発見し 任意の/場所に落としてみる…」。
 辻征夫の詩は、賭ける深さに抜きん出ていたのだろう。しかし、生命と生活を保障した世界へ移ったのだろう。現代詩文庫には、「続 同」「続々 同」がある。
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写真ACより、「ウィンターアイコン」の1枚。




 



 思潮社・現代詩文庫78「辻征夫詩集」より、「学校の思い出」から、と「今は吟遊詩人」を読み了える。
 同・文庫の購入は、今年8月18日の記事、3冊を買う、にアップした。


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 現代詩文庫78「辻征夫詩集」は、1982年第1刷、2000年6刷。第1詩集抄出と、完本詩集3冊、未刊詩篇を収める。
 辻征夫(つじ・ゆきお)は、1939年・生、2000年・没。

 今回は、「学校の思い出」抄(2編)と「今は吟遊詩人」を読む。
 僕は自称・詩人が苦手だ。僕は「詩を書く人」として、詩を書いて来た。「人の心を最もわからない者が詩人になる」という言葉がある。自分の心を最も知る詩人かもしれないが、中っているようだ。他人を気遣う人でありたい。

 これらの初期詩編は繊細で美しい。しかし詩は美しければ良いものではない。僕ははじめ、エモーションの強さと、うねり(音楽性。クラシックはほとんど知らなかったが)と思っていた。吉本隆明の「言語にとって美とは何か」は画期的論考だが、僕は題名に違和感を持った。文学に美が至高とは思えなかったからだ。

 辻征夫は、ランボーの高さ、リルケの深さに至らない、と苦しんだという。彼は後に、ライトヴァースと呼ばれた。俳句も吟じ、日本的な軽みの境地だろうか。後年、彼は数々の詩賞を受賞した。






 KIndle版「山之口貘全詩集 14篇併録」より、全詩集を読み了える。
 入手は、先の10月19日の記事にアップした。



山之口獏全詩集
 沖縄県出身の山之口貘(1903年~1963年)は、生涯に197編の詩を書いた。
 上京したが貧しく、借金を重ね、公園に寝泊まりしたり、汲み取り屋をしたりした。
 職業安定所に勤め、安定した時期もあった。
 貧困や欲求を描いたが、素直で1種の明るさがある。全詩集、選集、アンソロジー入集など数多い。
 思潮社より1975年~76年、4巻の全集が刊行された。また山之口貘賞が創設され、現在に至っている。





 8月17日の猛暑日、午後1時半頃、最も暑い時間帯に向けて、書店・KaBoS二の宮へ向かった。もっとも暑さは、車でほぼdoor to doorなので、心配要らない。
 二の宮店では、迷ったあげく、3冊を買った。


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 穂村弘の最新歌集「水中翼船炎上中」。2018年5月21日、講談社・刊。
 価格:2,530円(税込み)。箱入り、202ページ。


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 佐佐木定綱・第1歌集「月を食う」。
 2019年10月31日、角川書店・刊。定綱は、歌人・佐佐木幸綱の次男である。
 第64回・現代歌人協会賞・受賞。
 価格:2,420円(税込み)。191ページ。


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 思潮社の現代詩文庫より、78「辻征夫詩集」。他にも同文庫の新しい詩集があったが、僕にはわからないようだった。
 2000年7月1日、6刷。4詩集と未刊詩篇を収める。
 価格:1,281円(税込み)。160ページ。

 総額:6,231円。4千円支払うと、6千円分使える振興券を2セット、妻が買い1セットを僕にくれ、書店で使える事を確認していた。ただし5百円分は、小規模店専用なので使えない。
 結局、振興券5千5百円分と、現金731円で支払った。こういう機会でないと、新刊歌集などのまとめ買いができない。
 なお本のまとめ買いは同店での、6月2日の記事、dポイントで2冊を買う、以来である。





 最近に手許に届いた2冊を紹介する。
 まず結社歌誌「覇王樹」2020年8月号、「100周年記念特大号」である。
 同・7月号の紹介は、今月6日の記事にアップした。





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 100周年記念号は、2020年8月1日付け、覇王樹社・刊。390ページと、通常の10倍のページ数である。
 目次としては、「覇王樹」へのメッセージとして結社外28氏より祝辞を、100巻のまとめ、100巻選歌集(1,075名の1首)、評論、自選10首(在籍者)、私にとっての「覇王樹」、各支部等の今昔、資料編Ⅰ・Ⅱ、歌集・歌書解題(90周年・以降)、発行までの経緯、編集後記等の他、モノクロ写真・多数を収める。
 僕の1首、自選10首、私にとっての「覇王樹」、評論「啄木『一握の砂』の道・路」の題と氏名、同人昇級時の氏名、が載る。


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 県内にお住まいの詩人、今村秀子さんより、第6詩集「つまからほどきましょ」を贈られた。
 2020年8月1日付け、思潮社・刊。川上明日夫の栞、20編、あとがきを収める。
 歳を重ねて開花した、艶やかな詩編である。


 県内の詩人、T・晃弘さんより、「現代詩年鑑2020」を借りた。
現代詩年鑑2020
 「現代詩年鑑」は思潮社の詩誌「現代詩手帖」の12月号でもある。
 Tさんも買った訳ではなく、末尾に挟まれたメモによると、編集上で協力した、返礼らしい。1度、電話の会話に出て、A・雨子さんに貸してあるが返されたら、僕に貸そう、という話だったのである。先日、郵送してもらって届いた。
 県立図書館にいつも現れるのだが、今度は見逃していた。価格:2,500円+税で、僕には買えない。

 2019年12月1日・刊。392ページの大冊である。
 展望鼎談、展望、アンケート・今年度の収獲、代表詩選、詩人住所録・詩書一覧・詩誌一覧、等を収める。僕の名前、所属詩誌も載っている。
 前衛詩のお祭だったが、一時の勢いはないようである。



 思潮社・現代詩文庫242「続続 荒川洋治詩集」より、作品論・詩人論、4編を読み了える。
 今月9日の記事、同「散文」を読むに次ぐ。



 4編は、作家・辻原登、詩人の蜂飼耳と森本考徳、詩人・映画人の福間健二による、短い評論である。アンソロジー詩集に付した論だから、批判はほとんどない。
 蜂飼耳の「見たことのない谷間のかたち」に次ぎの1節がある。「いったん見えた方法に、収まって絞り込んでいくのではなく、ときには壊し、放棄しながら、新たな方向を試していく。」状況の変化に依る外的要因もありながら、現代詩作家は「詩は、たとえ遊びと言われようと、新しさを追求しなければいけない」(ある贈賞式での発言)と進化を続ける。僕が「ソネットをライフワークとする」と粘っているのと、大きな差である。また第8回鮎川信夫賞の「受賞の言葉」で「詩ではなく、詩の形をした文学作品をつくりたい」と書いたと、引用している。彼は意外と、創作の秘密を明かす時がある。
 福間健二の「荒川洋治と社会」にも、「詩による小説をめざす。とくに詩集『針原』(一九八二)以来、荒川洋治の作品史にはその流れがある。」と書かれる。
 なお詩集「針原」を批判した人もいたが、ここで擁護したい。「針原」は、彼が高校3年間、三国町から福井市へ毎日、片道1時間かけて通った電車、三国線(今は1両or2両編成で走っている)の途中の駅名である。外国の地名などを取り込んだ彼が、故郷の親しい美しい地名の回帰へ進んだ心情が、僕にはわかった。
 これで現代詩文庫「続続 荒川洋治詩集」の了いである。

 荒川洋治氏は、高校文芸部の1年先輩であり、文学だけでなく、詩集発行や同人詩誌発行で、手間や金銭の面倒までかけた。今でも会った時には、親しく接してくれる。令名高い現代詩作家に、敬愛と反発の2重の念を持っている。
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。


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