風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年9月6日で以って、Kindle本「少年詩集 鳶の歌」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリで、「少年詩集 鳶の歌」と検索すれば、すぐに出て来ます。右サイドバーのバナーよりも至れます。僕のペンネームは柴田哲夫です。価格は500円ですが、Kindle Unlimited版を追加金無料で購入できます。多くの方のご購読を願っております。

意識

 砂子屋書房「葛原妙子全歌集」(2002年・刊)より、第5歌集「原牛」を読み了える。
 第4歌集「薔薇窓」の感想は、今年1月29日の記事にアップした。



 原著は、1959年、白玉書房・刊。室生犀星・序、500首、著者・あとがきを収める。
 医師を父として生まれ、医師に嫁ぎ、「ハイソサエティ、貴族的雰囲気」(岡井隆の栞の言葉)に暮らした。
 葛原妙子は、今の大学の国文科を出て、文学少女の成り上がった者だろうか。菱川善夫や塚本邦雄の、褒め上手に乗せられて。前衛を意識した詠みぶりは確かである。「たたへたる涙落ちざればらんらんとしてみひらくに似つ」の中句欠のような、冒険を重ねて。
 しかし彼女の成熟は、これ以降の歌集にあるようだ。


 以下に7首を引く。正字を新字に直した。
インク壺にインク充ちつつ 凍結のみづうみひびきてゐるも
寒き背後の床を走りたる灰色の目の猫の速度を
死神はてのひらに赤き球置きて人間と人間のあひを走れり
雉の鋭ごゑおこりくさむら戦ぎたりこころ異変に飢うるさびしき
心臓の標本一つある窓にぶだうの蔓の影ある時間
水辺の暗きに立ちをり身に負へる水の怨恨 草の怨恨
濃き蜜にわれをやしなふさんらんとわれは女蜂の翅を光らせ
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写真ACより、「ケーキ」のイラスト1枚。




 季刊同人歌誌「COCOON」Issue14を、ほぼ読み了える。
 到着は今月10日の記事、ブックカフェで1冊と、送られた1冊、に報せた。



 同・Issue13の感想は、今年10月24日の記事にアップした。


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 「COCOON」は、結社「コスモス」内の若手歌人(1965年以降生まれ)による、季刊同人歌誌である。
 Issue14は、2019年12月15日、COCOONの会・刊。87ページ。定価:500円(送料込み)。


 巻頭32首4名の初め、O・淳子さんの「湖底の声」では、夫とのすれ違いなど違和を感じながら、過去を全否定して、切り抜けようとする。
 O・達知さんの「トリガー」32首では、「新人教師に戻らなくてよい」とせめて己を慰め、「撫で撫でしてくれる娘」や妻の家庭に慰められている。
 K・絢さんの「コーヒー」12首では、育休明けの地味な仕事ぶりと、子恋しさを詠んで、ワーキング・ママの切実さがある。
 S・ちひろさんの「兎の肖像」12首には、幼い子が蟬に死を知るなど、成長する寂しさを描くようだ。
 N・まさこさんの「シャリンバイ」12首では、夜間学校に通う生徒が下校を渋るなど、問題を抱えている様を示す。
 K・なおさんの短歌評論「太る歌」では、身の太る事に拘る短歌を取り上げて、歌人の、社会の意識を一端から捉える。
 壮年現役世代は、苦しみながら諦め、戦後民主主義教育の以降の教育(道徳教育、神話授業など)を受けた世代はあっさりと世を受け止めているようだ。


 以下に4首を引く。
雨が降るかもしれないとスクショした天気アプリをツイッターに貼る(S・ユウコさん)
この町は電柱なきゆゑ曇り日の空が重くて歩きづらいよ(S・美衣さん)
鼻声のなまむみなまもめなまたまも 金木犀は雨に散りたり(S・なおさん)
幼な子を人に預けて暗がりにエックス線を照射してゐる(M・恵子さん)



 


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