角川書店「増補 現代俳句大系」第13巻(1980年・刊)より、3番目の句集、鷹羽狩行「誕生」を読み了える。
 1月21日の記事、
千代田葛彦「旅人木」に次ぐ。
概要
 原著は、1965年、昭森社・刊。山口誓子・序、444句、秋元不死男・跋、後記を収める。
 鷹羽狩行(たかは・しゅぎょう、1930年~)は、1948年に山口誓子「天狼」に入会、1977年に俳句専業となる。1978年、俳誌「狩」創刊・主宰。2015年、日本芸術院会員。
 第1句集「誕生」は、俳人協会賞・受賞。
感想
 1958年(28歳頃)に7歳年下の妻と結婚、愛妻句を多く作り、1964年となって長女を得て愛児句を成した。
 7歳も年が違い、少女妻と吟じているように、労わってやるよりなかったのだろう。また34歳頃に子を得て、父として喜びだったろう。
 慎ましいながら幸せな家庭を吟じて明るい。
 句集刊行の1965年は、60年安保の政治の時季も過ぎ、経済成長に向かっており、句集「誕生」の受け入れられる素地はあったのだろうと、僕は推測する。
 「燈火親しむ汝はフランス刺繍」は「燈火親/しむ汝はフラ/ンス刺繍」と切れるのだろうか、大胆な句割れ・句跨りである。このような句も目立つ。
引用

 以下に5句を引く。
寒林となりて河港の舟檣(マスト)透く
火事跡のまた匂ひ出づ雪催ひ
鳥雲に妻の指切りぐせ今も
金亀子(ぶんぶん)に裾つかまれて少女妻
雪握る充実の音父となりし
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写真ACより、「ファンタジー」のイラスト1枚。