歌集 朝涼
 今月6日の記事、「歌集と詩誌が届く」で報せた内、丹波真人・歌集「朝涼」を読み了える。
概要
 「朝涼(あさすず)」は、「コスモス」の歌人、丹波真人(たんば・まさんど、19944年~)の第4歌集である。
 2018年4月30日、ながらみ書房・刊。1ページ2首組み、319ページ。492首を収める。
 僕が結社「コスモス」、結社内・季刊同人歌誌「棧橋」で一緒だった時期があり、そのご縁で送ってくださったのだろう。
感想
 15年ぶり、60歳代から70歳にさしかかる作品を、まとめたとの事。
 感慨深い出来事の多かった時期のようだ。
 以下の引用には引かなかったけれども、孫の誕生、息子の結婚など、慶事がある。一方、義父・叔母・母・従妹・宮英子夫人らを見送り、挽歌の連作を成した。思い出のよすがとなり、慰めとなるだろう。
 独特の美意識を持った歌人で、決まれば美しい短歌となるが、やや線の細さがあると見受ける。
引用

 以下に7首を引用する。
眼の渇き覚えて夜ふけめざむなどかつて無かりき還暦迫る
那智の滝そびらにポーズとる妻の肩にかすかな虹架かりをり
想ひても見ざりきわれの歌ふたつ採り上げくれつ「折々のうた」に
もの思ひしつつ歩めば軒さきの防犯灯が不意打ちに点く
日本にて季節すぎたる藤の花ミラノの路地のそちこちに咲く(トスカーナ)
大ゆれに揺るる地震に部屋ぢゆうの本ことごとく落ちて山なす(東日本大震災)
ケータイの待ち受け画面の亡き猫と妻はまいにち情を交はせり