風の庫

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憧れ

 本阿弥書店の総合歌誌「歌壇」2021年4月号を、ほぼ読み了える。
 到着は先の3月20日の記事、届いた3冊を紹介する(11)にアップした。


歌壇2021年4月号
本阿弥書店
2021-03-13

 特集は「連作の組み立て方」だけれども、僕には連作を発表する機会がほとんどない。短歌の賞に応募しないし、同人歌誌、支部歌誌にも属していない。アメブロ「新サスケと短歌と詩」に連作発表の場はあるが、まとめにくい。
 今は危機感の時代を過ぎて、静かな危機の時代だと思う。怒りも嘆きもなく、未来は見えない。
 柳澤美晴の20首連作「石鹸まみれの星」に好い歌があった。
鎖骨のあはひにダイヤは耀けり急所は此処と告げるかのように
 女性らしい、死を賭けた恋への憧れを、詠むようだ。字余り字足らずは多いけれども。「ほっぺたをぱぴぷぺぷうとふくらませ天使も練習するか喇叭の」も優れたオノマトペを発見した。ぱ行の多用を含めて、秀歌である。
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写真ACより、「ビジネス」のイラスト1枚。




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 石川書房「葛原繁全歌集」(1994年・刊)より、全歌集に初めて収められた(生前未刊)の歌集「鼓動以後」の、3回めの紹介をする。
 今月17日の記事、同(2)に次ぐ。
概要
 今回は、504ページ「雪の火口」(1988年)の章より、547ページ「かなふならば」(1990年)の章までを読む。
感想
 葛原繁(1919年~1993年)の短歌が、今1つ純粋に澄まなかったのは、郷里の者を含め家族を養う、「生活のため」に会社側に立った(日新運輸倉庫・取締役を務める、等)ためかも知れない。従軍体験から、美への純粋な憧れを信じられなかったためかも知れない。
 少年少女を詠んで明るい歌が多く、未来に期待する点があったようだ。
 宮柊二・没後の「コスモス」編集人となる(1987年)が、体調は衰えこの時期、腸閉塞・肝炎で2度の入院をした。

引用
 以下に7首を引く。
鼓笛隊先だて来るも師の写真樽酒載せし車を引きて(柳川頌歌)
一本の菊をささげて頭(かうべ)垂るさはやけし先生の無宗教の葬儀(山本健吉氏逝く)
雨の輪を生みつつ水は行くものか下野(しもつけ)草の咲く花の下
人影の二三あるのみ一望にしぐれて寒し人工の浜
うちつけに東欧の民衆の声ひびく戦中戦後の世を知る我には
予後の身の一喜一憂くり返し耐へたる冬も春ならむとす
やつかいな肝炎と思ふ残生に仕遂げおきたき仕事を残せば
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写真ACより、「キッチン・グッズ」のイラスト1枚。




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