風の庫

読んだ本、買った本、トピックスを紹介します。純文学系読書・中心です。

 お報らせです。2020年9月6日で以って、Kindle本「少年詩集 鳶の歌」を自力発行致しました。原稿は自分で作成し、表紙はデザイナーさんにお願いしました。上梓は自力で行いました。
 Amazonの「Kindleストア」カテゴリで、「少年詩集 鳶の歌」と検索すれば、すぐに出て来ます。右サイドバーのバナーよりも至れます。僕のペンネームは柴田哲夫です。価格は500円ですが、Kindle Unlimited版を追加金無料で購入できます。多くの方のご購読を願っております。

成熟

 県内にお住まいの詩人、西畠良平さんが贈ってくださった詩集、「溶け出した言葉」を読み了える。
 受贈は、今月15日の記事、入手した3冊を紹介する(8)にアップした。概要の1部を挙げたのでご覧ください。



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 31編の詩を収める。すべて14行詩である。ソネット詩集として構想されたらしい。
 しかしリルケ、ボードレール、谷川俊太郎のソネット、4行、4行、3行、3行のイタリア式でも、シェイクスピアの4行×3連+2行でもない。構想を崩して表記したらしい。

 同人詩誌「螺旋」の仲間だった時代があるが、批評会などで会う時が少なく、印象は薄い。
 ほぼ同年代の生まれで、作品「連帯を求めて孤立を恐れず」の反骨や、「溶け出した言葉」の危機感(今の政権の言語感覚のいい加減さに因る)を、表明している。
 「鉛の兵隊」では自衛隊の実戦能力がない、国民を守る意思がない、と主張するようだ。 
 「針山のレディバード」はレトリック的に優れており、末3行は「どちらにせよ ぼくは/凍えたまま 座り込んだ位置から動けずにいる/そして 少しずつ凍り付いていくだけだ」と、凍り付いても権力の側に行かない意志を表明する。「逝く夏」では、成熟があり、表現が整っている。
 西畠良平さんのこれからの作品にも期待したい。





 砂子屋書房「葛原妙子全歌集」(2002年・刊)より、第5歌集「原牛」を読み了える。
 第4歌集「薔薇窓」の感想は、今年1月29日の記事にアップした。



 原著は、1959年、白玉書房・刊。室生犀星・序、500首、著者・あとがきを収める。
 医師を父として生まれ、医師に嫁ぎ、「ハイソサエティ、貴族的雰囲気」(岡井隆の栞の言葉)に暮らした。
 葛原妙子は、今の大学の国文科を出て、文学少女の成り上がった者だろうか。菱川善夫や塚本邦雄の、褒め上手に乗せられて。前衛を意識した詠みぶりは確かである。「たたへたる涙落ちざればらんらんとしてみひらくに似つ」の中句欠のような、冒険を重ねて。
 しかし彼女の成熟は、これ以降の歌集にあるようだ。


 以下に7首を引く。正字を新字に直した。
インク壺にインク充ちつつ 凍結のみづうみひびきてゐるも
寒き背後の床を走りたる灰色の目の猫の速度を
死神はてのひらに赤き球置きて人間と人間のあひを走れり
雉の鋭ごゑおこりくさむら戦ぎたりこころ異変に飢うるさびしき
心臓の標本一つある窓にぶだうの蔓の影ある時間
水辺の暗きに立ちをり身に負へる水の怨恨 草の怨恨
濃き蜜にわれをやしなふさんらんとわれは女蜂の翅を光らせ
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写真ACより、「ケーキ」のイラスト1枚。




 昨年9月7日の記事、同人誌1冊と文庫本3冊、で紹介した内、山田詠美の文庫本3冊から、ようやく小説「蝶々の纏足」を読み了える。


蝶々の纏足・風葬の教室
 新潮文庫、2017年・17刷。
 「蝶々の纏足」、「風葬の教室」、「こぎつねこん」の3編を収める。
 「蝶々の纏足」は、えり子という(えりの漢字は、慎重に外されている)王女タイプの女の子に振り回される、瞳美という(これも珍しい名前であり、両親からきれいな目をしていると誉められる事にもつながる)女の子が、高校生になっても主従関係にあった。瞳美は何とか二人の関係から逃れようとして、内面に憎しみを溜めこんでゆく。
 心身の成熟のアンバランスな少女たち(えり子を含む)の中で、瞳美は自分が性に関して早熟である事を知り、麦生という同級生と性関係を持つ。そして、えり子の軛から離れる。
 瞳美と麦生はやがて別れる。麦生の浮気が元だが、「私たちは、お互いの体にもう飽き始めていたし、体以外を使ってどんなふうに愛し合って行けばよいのか解らなかった。」と述べられる。そのために結婚(一夫一婦制)があるとしたら、悲しいだろうか幸だろうか。


 今月27日午後、外出のついでにローソン店へ寄り、多機能コピー機より、ネットプリント俳紙「セレネッラ 第20号・秋の章」1枚を引き出した。A4判片面、フルカラー、1枚60円。
 今年6月20日の記事、「同 第19号・夏の章」以来である。

セレネッラ 第二十号
 配信を知らせた、金子敦さんのツイートを、下に埋め込む。


 金子敦、中山奈々、中島葱男、3名が題をつけて6句ずつ発表している。
 他に、1枚の写真を挙げ、3名がそれぞれ短文と1句ずつを寄せている。
 それぞれに成熟があるようだ。1句ずつを引く。
水晶体 金子敦より
 五線紙の隅にイニシャル秋桜
ねむねむ 中山奈々より
 ふくらはぎあたりが眠き野分かな
表裏 中島葱男より
 火を我に煙を天に大文字



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